見出し画像

「世界樹の迷宮Ⅳ」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • シリーズ全体(あるいは一部)にかかる感想も含む。
    ただ、各作品における仕様の差があるため、一概に言い切れないものも含むが、その場合は本作(Ⅳ)の感想であることが多い。

  • 真のゲーム処理がわかるわけではないので、推論含む。



注意事項

  • シナリオに関する感想はないが、システムに関するネタバレを含むため、まっさらな状態でプレイしたい場合は読まないことを推奨する。



感想

状態異常の取り扱い

 個人的に「世界樹の迷宮」シリーズで好きな点の一つは、状態異常が強く、戦略の一つの軸として成立していることだ。

 RPGというゲームの形式は比較的構造がシンプルであり、状態異常のバリエーションを出すのは難しい。大きく分けると、

  • 変形ダメージ(スリップダメージなど)

  • 行動制限

 という形に帰着することがほとんど(各ゲーム固有の構造関連除く)だ。

 ここで問題になるのは、これらのバランスの取り方が難しいという点だ。

 これは、RPGの戦闘システムにおいて、味方側と敵側では各要素のゲーム上の役割が異なるのに、同じ状態異常を共有するという点が大きい。ダメージも行動制限も、味方と敵ではその意味が異なるため、バランスを保つのが難しいのだ。よって、多くのRPGでは(特に味方が使用する)状態異常は弱いことが多い。だが、本作シリーズでは強いことで有名で、実際にそれでバランスが崩れることもあるが、基本的には上手く成立していると考える。


 まず、変形ダメージに関しては、総ダメージ量が問題になる。総ダメージ量が高すぎると、状態異常が支配的になってしまうし、そうでなければ空気になってしまう。

 特に割合ダメージは扱いが難しい。RPGにおいて、味方と敵の経済構造は本質的に異なる関係で結びつけられる。数値の違いをみても明らかだろう。

 たとえば、同じ10%のダメージでも、それが意味するものは大きく異なる。相手にとっては大きなダメージであっても、こちらにとっては大したことがなかったりするし、その逆もしかりだ。

 本作では、毒は固定ダメージになっており、その強度(?)のようなもので与えるダメージ量が変化するようになっている。(おそらく……)

 固定ダメージにし、強度で調節できるようにしているため、彼我ともに有効に使用することができるようにしている。こちらのレベルが低い時の毒は非常に大きな脅威ではあるが、それも含めてのデザインとなっている。


 次に、行動制限も強くなりがちな能力だ。特に相手の行動を制限する特殊能力が強力であることが多い。味方にかかった場合、パーティメンバーの一部でしかなかったり、行動の選択肢が狭まる、というだけであることが多いが、敵の場合、ただでさえ少ない行動が有効に作用しにくくなる。

 そこで、本シリーズでは『封じ』という状態異常が採用されている。これは頭、腕、脚という部位ごとに設定され、各行動はこれに紐づくようになっている。たとえば、魔法は頭スキルなので、頭封じで使用できなくなる、といった形だ。これにより、相手の非常に強力な行動だけ縛ったり、あるいはこちらのパーティ構成を考える評価軸を作っている。


 また、Ⅲ以降で設定されている状態異常の耐性の実装も非常に良い。これは一度かかった状態異常には再びかかりにくくなる、というものだ。これにより、状態異常のかかりやすさを緩和しても過剰に易しくなりにくく、結果として状態異常のスキルを活かしやすくなっている。

 まあ、ここまで言っておいてなんだが、本作ではその耐性をリセットするスキルがあったりして、その状態異常がバランスブレイカーになってしまっているのだが、それは様々な仕様が噛み合った結果なので……



パーティ構成を考えるゲームのレベル制の意味合い

 RPGにも様々な形態があるが、本シリーズは戦闘に重点を置いており、パーティの構成もバランスやシナジーを意識して組むことを推奨している。また、(各作品において微妙な差があるが)スキルツリーを採用しており、各キャラクターの立ち回りをある程度制御することができる。

 このような形態の場合、気になるのはレベル制の扱いだ。

 本作は一般的なRPGと同じくレベル制が導入されており、スキル構成なども頻繁に変更できないようになっている。この場合、パーティに問われるのは、中長期的な成長の方針だ。レベル差があるため、頻繁にメンバーを入れ替えることは難しく、スキルの取得にも計画性が必要になる。

 このような作品では、様々なスキルや職業の構成を試したり、あるボス戦において、そこにだけ適したスキルや職業を使用する、ということはしにくくなる。ゲームを通して、ある程度パーティの構成を固定する、というある種の縛りプレイのような遊び方を推奨する形になるのだ。そのパーティで中長期的に戦い続けることを考えた成長をしなくてはならない。


 本作の場合、レベルを下げることでスキルの取り直しができたり、(貴重ではあるが)アイテムを消費することで一定までレベルを上げることができたりするので、ある程度はパーティの構成を更新したり、躓いた時にそのボスに合わせた構成に変更したり、ということがやりやすくなっている。とはいえ、2レベルは無視できるコストでもない(事実的にはそのレベル上げに使用する現実のプレイヤーの時間がコストになる)ので、パーティ構成を重視したレベル制のゲームとして、良いバランスになっていると感じる。



メインダンジョンとサブダンジョン

 本作(Ⅳ)の特徴的な使用として、ワールドマップがあり、メインのダンジョン以外のサブダンジョンが用意されていることが挙げられる。

 シリーズを通してみた場合、一般的にはメインダンジョンと拠点である都市を往復する、伝統的な構成が多いのだが、Ⅳでは趣が異なっている。

 ワールドマップ(ある程度概念化されたものだが)が存在し、探索できるダンジョンをある程度選べるようになっているのだ。

 とはいえ、サブダンジョンの中には、事実上、避けることができないものもあり、デザイン上としては、部分的にはメインダンジョンを分割したようなものになっている。賛否はあるが、個人的にはこの仕様が好きだ。

 なにせ、メインダンジョンしかないのは単純に飽きやすい。

 もちろん、シリーズを通して様々な工夫がされており、共通して5階ごとに様相が変わるなどの仕様はあるが、同じダンジョンに突入して、その数値(階層)が進むだけ、という方が飽きやすく感じる。

 それだったら、ダンジョンそのものを分割する方が、心理的に新鮮味を味わうことができるし、その短い区間(各サブダンジョンごと)で大胆なモンスター構成や、ギミックも取り入れやすく、バリエーションに富む。

 前述の通り、パーティ構成は大きく変えにくいので、相手側でバリエーションを確保する必要がある本シリーズのような場合、Ⅳのような仕様の方が向いていると考えている。



成長に対する閾値

 「世界樹の迷宮」シリーズは、旧Ⅰ・Ⅱを除いて(リマスターが発売したらプレイしようと思っている)プレイしてきたのだが、ダントツでⅣが一番のお気に入りの作品であり、何周もしている。

 その理由の最も大きい点が、成長に関する閾値が縦・横に用意されている点だと個人的に考えている。


 まず、縦に関する閾値だが、本作のスキルツリーはシリーズの一般的なそれとは異なっており、レベル制限があるようになっている。

 大きく、レベル1~、20~、40~という区切りがあり、いかにツリーを進めていっても、レベルが制限を超えなければ、それに対応したスキルを取得できないようになっている。

 よって、各解禁されるレベルにおいて、できることが大きく変わるのだ。

 RPGの成長における問題点の一つに、それが実感しにくく、漸進的なものになりやすい、という点が挙げられる。生物というものは、2階微分を感じ取りやすく、漸進的な変化は感じ取りにくい。

 スキルツリーはそれの対策の一つ(スキルを取得しているか、していないかという2値的な成長にしやすい)だと感じるが、結局は慣れてしまう。

 そこで、このような区切りを設けることよって、変化に対する期待を持ちやすく、実際に変化を感じられる。

 これは非常に良い実装だと感じる。

 また、前述した振り直しの仕様と相まって、これらの区切りでスキルを割り振り直すことにより、ゲーム中に構成を見直す機会が与えられている。


 横の成長の閾値は、新規職業の開放とサブクラスだ。

 おおよそ、ダンジョンをクリアするたびに、新規の職業が解放され、一定レベルまで成長できるアイテムが一定数渡される。これによって、新たな職業を試すことができるし、それによるパーティ構成の変化が起こりやすい。

 また、サブクラスという仕様があり、メインとは別のクラスを取得することができるようになる。それにより、一部の他のクラスのスキルが使えるようになるのだ。

 パーティの構成のクラスによる組み合わせがあるが、サブクラスによってその組み合わせの数はさらに増える。相性の良し悪しがあるため、実際には単純な数値通りのバリエーションとはならないが、十分な量だ。


 こういった、小さな見直しの時期がゲーム内に挟まり、中期的な構成に関する評価・再構成のサイクルが回る。それが、本シリーズの中でも、「世界樹の迷宮Ⅳ」が面白い作品であることの一因であるように思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?