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「Sifu」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。


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感想

功夫×ベルトスクロールアクション×死にゲー

 死にゲーと言われる高難度ゲームがトレンドとなって久しい。○○×死にゲーという形は、近年だけで見ても、様々な作品が出ている。かなり一般的なジャンルになってきていて、たとえば、FF×死にゲーの「ストレンジャーオブパラダイス ファイナルファンタジー オリジン」、スター・ウォーズ×死にゲーの「スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー」のように人気IPを組み合わせたものも多い。

 本作は、フレーバーとしては功夫、ジャンルとしてはベルトスクロールアクションから影響を受けた死にゲーであると言える。


 主人公は功夫の(マスターという意味の)師父を実父に持つ8歳の子供であるシーンからスタートする。ここで(プレイヤーと同じように)何もわからないまま、主人公は父をその門下生と思われる5人組に殺されてしまう。復讐を誓った主人公は己を鍛え、20歳になったところから、ゲーム本編がスタートする。功夫映画にありがちな、典型的な復讐劇が基盤にあるのだ。

 ここで、重要になるのは、父が持っていた秘宝だ。これを持っていると、自身の死をなかったことにし、その分だけ歳を取るようになっている。

 これは物語にも反映されているのだが、それ以上に、とにかく死にまくるこのゲームのシステムに強く反映されている。

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ムービーシーンの演出や画面作りも素晴らしく、まるで映画のよう



即座に蘇る寿命システム

 本作は死にゲーの名に恥じぬほど、とにかくよく死ぬ。主人公は復讐のために、相手の拠点に乗り込むので、当たり前のように四方八方が敵で、あっという間に周囲を囲まれてしまう。主人公は、巨大な剣を振り回したり、魔法を詠唱したり、仲間を連れていったりすることはできない。拳と蹴り、即興の武器で何とかするしかない。そして、功夫を極められていないプレイヤーは当然何とかできないので、そのまま死んでしまう。

 しかし、上述した秘宝の効果ですぐに甦るのだ。このシステムは非常に秀逸である。死にゲーは当然ながら、何度も死に、その中で学習や技術の習熟を繰り返していくゲームだ。このトライの周期が短ければ短いほど、学習がしやすい。しかし、容易にし過ぎても学習の意味がなくなってしまう。

 システムとしての回答として、この蘇りがある。死亡しても、すぐに蘇られるが、その分だけ年齢が進み、老いる。70歳以上になった時に死亡すると、寿命が来てゲームオーバーだ。


 これがいわゆる残機とは異なる点はいくつかある。

 まずは、数値カウントというものがある。これは年齢が進む数値であり、最初に死亡した時は1歳だけ老いるのだ。そして、すぐにまた死ぬと、次に2歳老いる。このように、老いる数値が加算されていく。逆に、特定の強敵を倒した時にこの数値が下がることもある。

 これによって、生まれる構造としては、ミスに優しく、詰まっている部分には厳しい、というものだ。誤って死亡してしまっても、カウントはあまり進まず、すぐに挽回することができる。逆に明らかに壁になっている箇所があると、そこで連続して死亡するので、カウントが一気に進み、全体的な年齢が一気に進んでしまう。その様はまるで、まだ自分の腕が追い付ていないことを師父に諭されているかのようだ。

 次に、10歳ごとに自身のステータスが変動する。歳を取るほど、体力がなくなるが、その分だけ攻撃力が上がる。後述するように、それが効果的であるかと言えば、そうではないのだが、老いているほどに相手の動きを見極めなければならず、見極められないのであれば、すぐに死亡してしまう。

 このようなシステムのおかげで、リトライは容易でありながらも、習熟しがいは維持し、テンポが非常に良い。

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詰まっているところでは驚くほど年齢が一気に増えてしまう



レベルデザインの行き届いたステージ

 この繰り返しで挑むことになるのは、シンプルによく練られた5ステージだ。公式でベルトスクロールアクションとうたわれているように基本的に敵を素通りすることもできず、一本道然としたステージを進む。(探索要素も一応あることにはあるが、やり込みや背景設定に近い)

 ステージをクリアした時の年齢などは基本的には引き継がれて、そのまま次のステージへと進んでいくことになる。途中で70歳以上の状態で死亡してしまうと、ゲームオーバーになってしまう。そうなるとやり直しだ。

 しかし、引き継がれていくものもある。

 まず、各ステージのショートカットの開放状態が維持される。これによって、道中の敵を倒す必要がなくなり、万全な状態でボスに挑むことができる。場合によってはボスに直通するショートカットもあるぐらいだ。

 さらに、ステージごとで最短の寿命でクリアした部分は引き継がれてリトライできる。たとえば、ステージ2まで30歳でクリアでき、ステージ3でゲームオーバーになった場合、次はステージ3を30歳でリトライできる、ということだ。逆に言えば、再びステージ2に挑むことができ、30歳未満でクリアできれば、ステージ3にもっと若い状態で進むことができる。

 これによって、無駄に戦闘を繰り返さなければならない、ということはないし、自身が上達したと感じたり、今の年齢ではここのステージはクリアできないと感じたりすれば、前のステージに再挑戦して、記録を更新できる。


 このショートカットの具合や、ボスとの相性などもよく考えられている。ボスが比較的攻略しやすい場合は、ショートカットがそこまでできず、そこに行くまでの雑魚との集団戦も含めた習熟を求められたり、ボスの攻撃力が高いステージではボスのすぐ近くまでショートカットできたりできる。

 わざとショートカットを使わない、という縛りプレイもできるし、経験値やスコアによって自身のステータスを少し強化できるので、わざと寄り道するという遊び方も残されている。

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ステージ選択画面では収集要素の残りなども確認可能だ



多様なリスク・リターンが設定された防御系統

 各ステージでは敵を倒していくのだが、最終的にプレイヤーの障害であり、学習対象になるのは(特にボス戦であれば)相手の攻撃のパターンだ。それを受けるのは、主人公の多彩な防御系統にある。

 まず、回避がある。これは基本的にバックステップである。このゲームでは、ボスや一部の状況を除き、まず遠距離攻撃はない。敵も自分も接近することで、攻撃を当てていく。このような状態において逃げ回ることは非常に有効であり、回避はリスクが低く、ダメージを受けることもあまりない。当然ながらいいことだけではなく、状況は全く変化しない。

 次に、ガードがある。これは防御ボタンを押しっぱなしで出来、容易に出すことができる。ただし、攻撃を完全に防ぐことはできず、体力や体幹が削られてしまっていく。また、ガード不可の掴み攻撃もある。

 また、お決まりのパリィも実装されている。これは相手の攻撃に対し、タイミング良く防御ボタンを押すことで発生する。相手には隙が生まれ、体幹が削れ、自身の体幹は回復すると、いいことだらけなのだが、タイミングがシビアで、綺麗に合われるのが難しい。

 と、ここまでは良くあるシステムなのだが、このゲームに特徴的なものとして、スウェー(受け流し)がある。

 防御ボタンを押しっぱなしの状態で、敵の攻撃に合わせて移動キーを動かすことで、スウェーが発生する。タイミングはパリィほどシビアではないが攻撃を受けずに済むし、ジャストで発生させると、相手がスローモーションになり、隙が生まれる。ただ、良いことばかりではなく、敵の攻撃には格闘ゲームにありがちな上攻撃・下攻撃の区別があり、移動キーの操作を的確にしなければ、スウェーは発生しない。

 とは言っても、基本的に(特に雑魚的の)攻撃は上攻撃であり、特徴的な下攻撃だけ特別な対応をすれば良く、リスクは小さく、リターンは大きい。

 このスウェーを多用することによって、多人数との戦いにも対応することができ、功夫映画のような戦い方がプレイできる。

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スウェーで躱した瞬間、残像が出て素早く移動する



秀逸な1対多の戦闘

 このスウェーの良さが際立つのが雑魚との集団戦だ。頻繁に発生するのだが、他のアクション死にゲー(「ダークソウル」など)と比べて、理不尽な感じはほとんど受けない。捌ききれるからだ。

 乱戦でもスウェーは全方位で機能し、背後から雑魚的に攻撃されても、すぐに躱すことができる。そして、すぐに反撃に転じられる。

 このシークエンスの気持ちよさは格別だ。功夫映画の主人公のように、多人数を手玉に取ることができ、モーションも違和感が少なく、素晴らしい。

 特筆すべきは、ターゲットの仕組みだ。このゲームは他の3Dアクションゲームのようなロックオン機能がなく、自動的に近くの敵にロックオンされるようになっている。おそらくだが、反撃は最も優先度が高いため、躱した後の攻撃は、すぐにその敵に当たるようになっている。

 思ったように動作しない、と感じるタイミングもないわけではないのだがそれ以上に煩雑な操作に煩わされずに、間合いや攻撃、防御のタイミングといった重要な箇所に意識を集中できる利点が大きい。

 ただ、カメラワークは演出を重視したものとなっており、自由が効かないものであり、場合によっては極度に見にくい状態になってしまう。

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5人ぐらいに囲まれて、皆から攻撃を受けても割と何とかなる



説明不足が目立つ

 厳しい敵地で何度も敵と戦っているうちに、プレイヤーはそこでの立ち振る舞いや戦い方を覚えていき、次第に相手を捌けるようになる。チュートリアルも最小限で、自分自身で学べ、と言われているようだ。

 しかしながら、その厳しい姿勢は、説明不足とも取れる。

 上述したような防御系統は、一応の説明こそあるものの、序盤の何もわからない状態で何となく教わるだけであり、覚えることは難しい。

 ステージ1は易しく、事実上のチュートリアルのようになっているとは言えるものの、そこで戦い方を丁寧に教えられるわけでもなく、そして、(意図的なものだとは思うが)ステージ2は難しくなっている。

 結果として、何かが悪いことはわかるのだが、何が悪いのかわからない、何をすべきかがわからない、という状態になりやすい。

 主人公がゲーム中に見習うべき師父を喪失してしまうように、プレイヤーもまた、どうすべきか、何が悪かったのかの判断が付かないことがある。

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