【Board Game Design Advent Calendar 2022】ゲームデザインにおけるアナログとデジタルの差異
この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2022の10日目の記事として書かれたものです。
筆者の経験・技量・考察不足から、誤った情報を含んでしまっている可能性があります。誤りや不足している情報、ご意見等がありましたら、筆者のTwitterアカウントにご連絡いただければ幸いです。
以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
注意事項
(狭義の)ゲームデザインに関連する差異に関して、特筆している。
差異のすべてを洗い出すようなものではない。
どこまでをアナログ/デジタルの影響とすべきなのか、という線引きに苦慮しながら書いたため、過不足が生じている可能性が高い。
あくまで個人の考えや感想が主体。
目的
昨今、ボードゲームのデジタル化や、デジタルゲームのボードゲーム化、あるいはボードゲーム的なメカニクスを主幹に置いたデジタルゲームが人気となるなど、アナログゲームとデジタルゲームの垣根は低くなり、両者が互いに影響を与えている。
一方で、アナログゲームとデジタルゲームには根幹的な違いがあり、その差異による向き不向きが存在するように思う。
ここで一度、その差異について再確認することで、両者のゲームデザインについて理解を深めることを目的とする。
定義
この話を進めようとすると、本来ならば、ゲームとはなにか、という点に立ち戻らなければならなくなる。しかしながら、この話題はそれだけで十分な紙面を占め、喧々諤々の議論になることが目に見えている。一方、本記事における主眼でないのは明らかなので、一旦保留として話を進める。
まず、アナログゲームとは何か、という定義をしなければならない。本記事は、ボードゲームデザインに主軸にしたものなので、アナログゲームの定義について考えることで、そうではないもの、あるいは対になるものとしてデジタルゲームの定義を考えるという手法を取る。(本記事において、アナログゲームとボードゲームの関係は、ボードゲームは少なくともアナログゲームの部分集合である、とする)
筆者は二つの側面からアプローチすることができるのではないか、と考えている。つまり、
物理的な面、すなわち、媒体としてのアナログゲーム
理論的な面、すなわち、構造としてのアナログゲーム
という考え方だ。
物理的な面はわかりやすい。一般的にはこの定義が使用されることが多いように思われる。アナログゲームが物理的なものに制限される一方で、デジタルゲームは電子的なものだという考え方だ。
ただし、境界例は無数に存在する。スマートフォンのアプリケーションだったり、専用の電子機器だったりを使用するアナログゲームもいくつも存在するし、デジタルゲームにおいても物理的なものを使用することもある。
これは一つの軸になっていて、明確に区別できるものではないと考えるべきだろう。いわば、アナログ度、というような考え方だ。
理論的な面に関しては、様々な意見が考えられるが、筆者としてはその根幹として、ルール(処理)が秘匿されていない、という点を挙げたい。
アナログゲームは、その処理を物理的に人間が行う、という以上、必ず明確に処理が決まっている。アナログゲームの特徴はいくつか挙げられると思うが、その多くがこの部分に起因すると考えている。
なお、TRPGや一部のマーダーミステリーのように、裁定者(ゲームマスターなど)が指定され、そのプレイヤーが処理を決定する(あるいはそのためにルールや処理を秘匿する)といった形も存在するが、この時は理論的なアナログゲームの形になっていないか、狭義のゲームに沿う形になっていないか、のどちらかであると考える。(言うまでもないが、それが悪いというわけではなく、これらがゲームでない、と言っているわけではない)
ただ、本来はこの『理論としてのアナログゲーム』は、アナログゲームというより、もっと別の呼称(たとえば、ルール公開ゲーム?)を用いた方がよいようには思える(重なる領域が大きいだけで、本来は別の概念であるため)が、そうすると話がまた膨らんでしまうので、一旦保留とし、本記事では理論的なアナログゲーム等の呼称を使用する。
一方、極一部を除くほぼすべてのデジタルゲームが電子処理を行い、その処理の内訳を正式に公開していない以上、ルールは秘匿されている。この秘匿性がデジタルゲームの特徴の大きなものの一つではないだろうか。
差異
ここでは、上記の二つの定義を元にした、アナログゲームとデジタルゲームの差異について、検討していく。各項目に関する差異に言及するという形を取るが、各項目の内容に重複や関連がある点に留意。
ゲームデザインに関連しそうなことを挙げていき、市場や開発環境等の差異に関してはあまり言及しない。(それらがゲームデザインに関係ないというわけではないが、範囲が広がってしまうため)
表現の差異
本記事では、数理的な概念であるゲームを、人間に理解できるようにするために行うものを表現と呼ぶ。端的に言えば、アナログゲームでは多くの場合、コンポーネント(やそれによる表示)と同義であり、デジタルゲームでは、機器の入出力(映像・音楽といった演出の部分も含め)となる。
アナログの特徴
基本的には、物品を用いて、表現を行う必要がある。駒やカード、数字やマスの書かれたボードなどを使って、ゲームの各要素を表現する。
電源を使用しないのであれば、音楽や映像を加えることは基本的にできないが、「アンドールの伝説」のように推奨のBGMを別途配布したり、アプリケーションと連動したり、専用の再生機器(電子機器やベルなど)を同梱することによって、導入できる。
また、それらをプレイヤーが自主的に操作しなければならない点が最も異なる。ゆえに、何かのタイミングに合わせて表示系が変わるとか、音楽が流れる、ということはできず、細かい合わせはまず不可能に近い。
一方、物理的なものがある、という点において、触覚や嗅覚に訴える表現ができるという点は、まだデジタルに対する優位性を持っている。また、物品を取り扱うことによる心理的な作用も働く。
ゲームの処理を物品(トークン、駒など)の処理になぞらえることでルールの理解を補助するような仕組みが一般的に見られる。(ワーカープレイスメントのワーカーによる占有、トラックによる上下限値の設定など)
物理的なものを操作するため、どうしても、アクセシビリティが低くなりやすく、デジタルゲームに比べて補助もしにくい。コンポーネントの量や種類によっては、プレイできる場所が限られることがある。
デジタルの特徴
電子機器で再生されることがほとんどなため、基本的には音声や画像に対する処理を行うことができる。また、基本的には細かく合わせることが可能だが、再生機によって体験に差異が生まれる可能性がある。また、電力が必要であったり、精密機器を取り扱う可能性が高く、それによる制限がある。
表現を充実させやすいため、複合的な影響を考える必要がある。部分的に出来がよくとも、至らない点があると、それに体験が引っ張られる可能性があり、全体のクオリティを管理しなければならない。
電子的に処理をする関係から、画像や音声などに関するオプションや、コントローラを変更するなどといった工夫もしやすく、アクセシビリティを高くすることに工夫が見られるゲームも多い。(たとえば、色弱者や聴覚障碍者に対する表示のオプションや、Xbox Adaptive Controllerなど)
メタ環境の差異
ここでは、ゲームのものよりも上位な層における環境や、それによる情報などをメタ環境と呼称する。いわば、物理的な世界におけるものとでも言えるかもしれない。メタゲームのようなものは含めない。
アナログの特徴
媒体としてのアナログゲームである場合、物理的なやり取りをするという都合上、対面でゲームプレイが行われることが多い(手紙やメールによる選択のやり取りや、テレビ通話を用いたプレイなどの例外もある)。
結果として、メタ情報のやり取りが多くなりやすく、それをゲーム構造に組み込む形のゲームもデジタルに比べれば多い。
物品を使用するため、消耗などの問題もある(カードが折れる、ダイスが欠けてしまうなど)。また、物性を利用したチートが行われる可能性がある(カードをマークドにする、グラサイを使うなど)。
逆に言えば、物品のみで完結している場合、それが消失・消耗しなければ長く遊び続けることができる。
デジタル化していないもので遊ぶ場合には、上述のように対面でプレイされることが多いため、プレイヤーの組み合わせが限られる可能性が高い(生活圏や居住地が近いなど)。つまり、物理的な制限を受ける以上、異なる趣向のプレイヤーがプレイする可能性は高いと考えている。(たとえば、最寄りのゲーム会やボードゲームカフェで集まってプレイする場合、各プレイヤーの趣向はある程度近しくとも、同じゲームを好んでいるわけではない)
デジタルの特徴
ユーザーインターフェース周りや機器の仕様にもよるが、メタ環境を分断することが可能で、そちらの方が現代では一般的。逆に、インターネットの対戦ができないようにしたり、GPSを用いて物理的な位置を制限する手法が使われることもある。
ゲーム的に本来必要のない情報を与える(たとえば、「ハースストーン」などで対戦相手が何にカーソルを合わせているのか表示するなど)ことによって、メタ情報をゲームに組み込む例も存在している。
相手プレイヤーのメタ情報が確認しにくいことや、電子機器を使用する関係から、外部ツールやチートなどの問題が発生しやすい。(ただし、同時に電子的にそれを監視することも可能ではある)
電子機器に依存して存在していることが多いため、電子機器そのものやOSの更新中止などで、ゲームがプレイできなくなってしまう可能性がある。
インターネットを使用しやすいため、複数人でプレイするものであれば、これを利用してマッチングすることができる。言語や時差、サーバー等の問題はあるが、そのゲームを遊んでいる人々を瞬時に繋ぎ合わせることができるという利点が存在している。結果、連続してプレイしやすい。物理的な制限を受けず、マッチングできるため、限られた趣向を持つもの同士でプレイしやすいと考えている。(たとえば、ネット対戦で、特殊なルールを設けてマッチングしても、ゲームが成立する程度には人が集まる、ということが起こりやすいのではないか、という意味)
処理遂行の差異
ルールに沿って処理をどのように行うかの差について考える。
アナログの特徴
TRPGに代表される一部のゲームに例外はあるが、プレイヤーが処理を行わなければならない。そのため、全てのルールが公開されている必要がある。理論的な側面におけるアナログゲームの特徴であると言える。
一方、中立的な存在がいないために、客観的にゲームを判定できないという問題が発生しやすい。たとえば、謎解きなど、正解を当てるようなゲームで正否判定によって正解がわかってしまう、といった古典的な問題がある。他にも、ルールブックが処理を決めるが、それによって定まらない処理が発生した場合、合意しにくい。
逆に考えると、必ず人間が処理を行う関係上、そのゲームのプレイヤー全員が同意した場合、ルールを改変して処理することはたやすく、いわゆるハウスルールが発生しやすい土壌が存在する。
デジタルの特徴
コンピュータが処理を遂行することが多い。デジタルゲームの処理は、一般的にコンピュータ上のコードそのものによって決定づけられる。
電子的に処理する場合、ルールとして公表されたものよりも、実体(コード)の処理によってゲームが進行してしまうため、齟齬が生じる場合が発生し、これがいわゆるバグ・不具合となる。コードが正しくとも、電子機器の制限・故障などによって、正しく処理されない場合もある。不具合だとわかっていたとしても、プレイヤーがこれを修正することは難しい。
コンピュータの処理が絶対であるため、不具合でなくとも、プレイヤーに合わせてルールやデータを変更することが難しいことが多い。MODなどを使用したり、オプションを用いてカスタマイズすることになる。
また、処理の実体と表現を分離することが可能であるため、表示上の数値やルールに囚われずに処理することが可能である。たとえば、「ファイアーエムブレム」における命中確率は表示されているものと処理で使用されるものの値が異なっていたり、「マリオパーティ」で表示上、サイコロを使用しているように見えるが、サイコロ通りの確率で数字が決定されるわけではない、といったような形が散見される。
処理そのものをプレイヤーが強く意識する必要がなく、様々な裁定を瞬時に行うことができるため、シミュレータに向く。
保存性の差異
ここで言う保存性は、ゲーム内の状態の保持に関する呼称である。
アナログの特徴
物理的な表現を行う以上、状態を長く保存しておくことが難しい。また、ゲーム中であっても、物理的な状態が予期せぬ出来事で変更され、本来の値がどのようなものであったのか、わからなくなることもある。(トラック上の駒が動く、ダイスが転がってしまうなど)
ゲーム間をまたぐ場合、基本的にはなんらかの形で状態を別途保存する必要がある。カードデッキをそのままにする、状態を記入する、といった形が取られ、その処理を人間がする都合上、保存されていることが明示される。
デジタルの特徴
電子的に処理され、一般的に揮発性のある領域で処理されることが多い。古くは保存をしなければゲームの状態が失われることが一般的であった。
今では電子機器の進歩により、オートセーブが一般化され、保存されていることを意識せずにゲームプレイを連続することが可能である。逆に、意図的なセーブを行えないようにする、といった手法が取られることもある。
保存処理そのものを明示しなくともよく、何を保存しているかを隠せるため、選択と結果をかなり離れたタイミングで開示することができる。
一方、機器の故障や、処理の不具合によって破壊された状態を戻すことが難しいことがある。
厳密性の差異
主に処理がどのぐらい厳密にできるかの差について考える。
アナログの特徴
もっとも苦手としているものの一つ。
人間が行っている関係上、処理が複雑な場合、その一部が正しく処理されないことがあり得る。正しく読み取っているつもりでも、計算が異なってしまったり、ルールの解釈が異なってしまったり、という可能性がある。
特に、そもそも、処理があることを忘れる、という形で処理が行われないことは多い。誘発型や常時型の処理、例外的な制限などは、その存在が忘れ去られることが多く、それが原因でゲームを壊しかねない。
空間的な厳密性を測ることも難しく、たとえば、ある駒を弾き、それがある範囲に入っているのか、といった程度のことでも問題になることがあり、客観性のある工夫を求められる(「Safranito」など)。物体の状態(棒が倒れているなど)を参考に判断を行う場合もあるが、2値的なものでなければ予想外の状態になり、判断に困る可能性もある。
時間的な厳密性も問題になることがあり、特にリアルタイムの進行で問題になることがある。他プレイヤーを監視者にしたり、部分的に電子機器を導入したり、物体的に明確化される仕組みを加えたり、といった実装がある。
ただし、同時に曖昧さを残すことによって、厳密なルールを遂行せずに済み、ゲーム進行がスムーズに行われることもある(「マジック:ザ・ギャザリング」の優先権の移行など)が、もちろんこれが問題になることもある。
デジタルの特徴
もっとも得意としていることの一つ。
環境やコードに問題がないという前提に立てば、アナログに比べ瞬時に厳密な判定や処理を行うことができる。
誰に選択権があるのか、それがどのくらいかかっているのか、というようなことも判断できるため、いわゆるチェスクロックを導入することが容易でアナログゲームのデジタル化の際に導入されることが多い。
ただし、機器間の通信などの要素が含まれる場合、環境の部分で厳密性が崩れてしまう可能性がある。
また、数値的に厳密であっても、プレイヤーがそれに納得するかどうかという心理的な判定は異なることがあり、それを考慮すべきである。特にリアルタイムで自身のキャラクターを操作する場合、入力に対する反応は、手触りなどと呼ばれ、重要視されることが多い。結果として、わざと厳密性を崩し、許容範囲を広く取る実装も一般的である。
加えて、厳密性を正確に保つと各処理に時間がかかる(たとえば、各タイミングにおける権利をすべてのプレイヤーに確認しなければならないなど)ことがあったり、コンピュータが処理するために柔軟性に欠け(たとえば、TCGにおいて無限コンボが成立しているのかの判断など)、ゲームのスムーズな進行が難しくなることもある。
数値の差異
ゲーム内に登場する数値に関して考える。
アナログの特徴
基本的には整数値の範囲に収めることが必要とされる。除算などで小数値が発生しても、すぐに整数値に整理(主に切り上げ、切り下げ)されることがほとんどで、その数値を使い続けていくことはほぼない。
これは、人間が処理しやすい範囲から離れてしまうことや、物品を用いた表現がしにくいためだと考えられる。
また、大きい数値の計算も行いにくく、ゲーム終了時に一度だけ計算するような形になっていることが多い(ただし、実際に計算するのはゲーム終了時だとしても、それを考慮するためにゲーム中に何度も計算しなければならず、その方が有利になる可能性が高くなってしまうことに留意)。
見かけの数値が大きくとも、実際には桁数が異なるだけで、小さな整数値を扱うことも行われる。(「シェフィ」「デュエルマスターズ」など)
ただ、物性を利用すれば、かなり小さな数値の単位(=大きな数値)を取り扱うこともできる。(ちぎった粘土の重さを利用するなど)
一般的には小さな整数値で完結するゲームがほとんどであり、それゆえに小さな整数値における独特の数理的な感覚があるように思える。
デジタルの特徴
データ型や電子機器の性能によって決まる。小数点を使用しやすく、現代において、一般的には浮動小数点型が使用されている。
これは、コンピュータによる計算処理が行える他、その数値をそのまま人間に提示する必要がない、という点が大きい。
ただし、完全に自由に使えるということではなく、データ型や処理系統によって制限がある他、不具合の温床となる可能性も高い。(オーバーフローや様々な計算誤差の蓄積など)
人間に表示する数値はある程度丸めたり、ゲージのような表現をしたり、といった工夫は必要になることが多い。
ランダム性の差異
ここでは明確に確率で表すことができる不確定性をランダム性とする。
アナログの特徴
物理的に処理する必要があるため、ランタマイザに頼る必要があり、その特性にランダム性が左右される。(基本的には整数値の処理に落とし込む必要があるため、たとえば、要素ごとの可能性にわずかな差があるランダム性などは実装しにくい)
また、デジタルとの最も大きな点として、ランダム性が明白である、という点が大きいと筆者は考えている。剥き出しのランダム性だと言える。
これは感覚という意味でもそうだし、処理という意味でもそうである。
デジタルの特徴
アナログの場合よりも柔軟性があり、さまざまな仕様が実装できる。ただし、電子工学的に完全な乱数を生み出す難しさがあったり、不具合の再現性などの関係性から、疑似乱数を用いることもある。
処理を秘匿することができるため、ランダム性のように見えて、そうではない(あるいは部分的に修正する)ようにしたり、逆にプレイヤーが感知しない部分にランダム性を取り入れることができる。
まとめ
このように、アナログゲームは、物理的な意味では物体に囚われ、論理的な意味では人間が処理するということに囚われていることがわかる。
また、一部を除いて、基本的にアナログゲームで可能なことは、デジタルゲームで可能である、と言える。実際、ボードゲームアリーナや「Tabletop Simulator」など、アナログゲームのデジタル化の例は枚挙に暇がなく、逆にほとんどのデジタルゲームのアナログ化は困難であることからも明らかだ。
ならば、アナログゲームはデジタルゲームに劣っているのか、と言えば、もちろん、そうではない。本記事からもわかるように、デジタルゲームは可能なことが多岐にわたり、詳細に制御できる。そして、可能である以上、それをやらない、ということは、不完全である、というようにも感じられる。
そう、つまり、『できない』ということがアナログゲームの最大の価値であると筆者は考えている。それゆえに象徴化を余儀なくされる。
たとえば、細かい計算や頻発する処理、小数点以下の数値は『取り扱えない』。ゲームの展開に合わせた演出を『行えない』。ランダム性をゲームプレイの展開に合わせて『調整できない』。1ゲームプレイを長大にしたり、複数のゲームプレイを繋げていくことが『難しい』。
こういった制限を持つ中で、どのように面白さを生み出すのか。
その中の創意工夫に対する驚きが、抜身のゲーム性を最大限に生かして武器にしようとする鋭さが、アナログゲームの大きな魅力の一つではないだろうか。そして、その存在が様々な面白さを詰め込むことが『できてしまう』デジタルゲームにとっても、よい刺激を与えているのではないか。筆者はそう考え、両者を楽しみ、両者を愛している。
今後とも、アナログゲームも、デジタルゲームも、双方の強みを生かし、互いによい影響を与えつつ、より面白いゲームを生み出すために発展していくことを願ってやまない。
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