「Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー」の感想
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また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。
感想
「SEKIRO」フォロワーのスター・ウォーズ作品
優れたマスターはパダワンを弟子に取り、教えを伝えていく。パダワンは成長し、ナイト、マスターとなり、次代のパダワンを導く。そうして、社会全体を発展させていく。これはジェダイの社会でもそうであり、現実、ゲームの世界でも同じことが言える。
「DARK SOULS」というマスターが多くのパダワンを生み出し、ソウルライクというジャンルを確立したように、「Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー」は「SEKIRO」をマスターと仰ぐゲーム作品の一つだ。
タイトルにあるように、スター・ウォーズという巨大なIPに属する作品であり、近年のスター・ウォーズのユニバース化に含まれている作品だ。以前スター・ウォーズ関連作に見られたようなイフストーリーや、本編のゲーム化という形ではなく、しっかりとユニバースに含まれている外伝作品という位置づけであるように思える。
時系列としては、エピソード3と4の間の話となっており、オーダー66(全ジェダイの抹殺命令)を逃れたジェダイであるカル・ケスティスがジェダイを刈る尋問官と対峙する物語となっている。
そんな舞台を反映してか、全体として重く、暗い雰囲気で統一されておりフォトリアルなクオリティの高い映像と相まって、映画やドラマシリーズのような演出が楽しめる。
フレーバーとの合致度と不合致度
「SEKIRO」が導入した弾きとそれを中心としたシステムは、SEKIROライクと言っても良いスタイルを確立し、その影響と開発時期の関係からか近年はそのフォロワーとなるゲームが多く発表されている。
しかし、その実、システムから来るフレーバー面への制約が強い。
まず、防御が主体であるため、互いに防御し合うスタイルがおかしく見えないようにしなければならない。また、お互いに攻撃を食らうことが前提にある以上、基本的には間合いが他のアクションゲームに比べて意味を持ちにくい。ゆえに、近接が主体の表現へとなる。
たとえば、最近発売されたSEKIROライクのゲーム「Sifu」における功夫はこの条件を満たしていることがわかるだろう。
翻って、本作のテーマであるジェダイはそれにピッタリだ。これはもちろん、元ネタが時代劇であり、「SEKIRO」と同じ剣戟主体であるからだ。
加えて、遠距離攻撃に合わせる弾き、という表現も追加できるという点に強みもある。
たとえば、火縄銃を使ってくる敵がいたとして、それを刀で弾くのは少しオーバーな表現になるが、本作でトルーパーやドローンが発するレーザーをライトセーバーで弾き返すのは自然であり、原作の再現でもある。
この点において、スター・ウォーズのジェダイというフレーバーに弾きのシステムは非常に相性が良いと言えるだろう。シミュレーション的や原作再現としての楽しさを十全に味わうことができる。
一方、フォースのライトサイドとダークサイドのように、フレーバーに適している面があれば、適していない面もあるのは当然のことだ。後者の面についても考えていきたい。
まず、舞台設定上、ジェダイやそれに類するライトセーバーを使用する敵の数にある程度制限がある。オーダー66を逃げ延びたジェダイやその関係者が次第に増えているスター・ウォーズ・ユニバースでも、まだまだ限りがあるし、主要な人物を自由度のある媒体であるゲームで描くことは難しい。
結果として、本作でも原生生物との戦闘も多く描かれるのだが、ライトセーバー同士の剣戟と比べて、フレーバー・システム共に劣る戦闘になっているという感想は否めない。
また、あまりゲームをプレイしない人も接する可能性の高いIPで死にゲーを実装している、という問題もある。
死にゲーはその実、シューティングゲームなどと比べても比較的クリアしやすい構造に結果としてなるのだが、その過程に拒否感を抱くプレイヤーも多いだろう。なにせ、何度も死ぬのだ。ストーリーだけを知りたい、あるいはスター・ウォーズ世界のシミュレータとしてプレイしたいプレイヤーにとって、死にゲーであることは障害になり得る。
結果として、本作ではストーリーモードという非常に簡単なモードを実装している。この難易度の場合、敵に近づいて攻撃をしているだけで次に進めるような調整がされている。
ただ、こうなってしまうと死にゲーとしてのゲームシステムが息をしていない。死にゲーにおける難易度は、高い・低いの問題ではなく、本質的にそのゲームプレイを実装するために必要な要素の一つなのであって、それを直接的に上下してしまうことは、ゲームプレイの損失に繋がってしまう。
そのIPの知名度から、死にゲーの面白さを伝導する役割を持てたはずだが、この難易度設定により、その立場から追われてしまっていると言える。
道中のパルクールとマップの構造の問題
「SEKIRO」のシステムがいわゆる道中に適していない、というのはそのレビューでも提示したが、本作では道中に別軸の遊びを導入することでその解決を見ようとしている。
道中がちょっとしたパルクール的なプラットフォームアクションのようになっており、上手く道を進んでいくという遊びになっているのだ。
フォースを使ったパルクール自体には一定の楽しさがあり、やり直しも容易に設定されているので、大きなストレスが溜まることは少ない。
ただ、これは死にゲーの面白さとは別軸に感じるため、その両者が楽しめなければノイズに感じる可能性も高い。
また、本作における全体的なマップの問題とも関連してしまっている。
ゲーム的なビジュアルが異なる惑星を作り上げる(すでに別作で設定がある惑星もあるが)のはコストがかかる作業であることは想像に難くない。そのためか、本作では限られた惑星を行ったり来たりする構造になっている。
Aという惑星に行く。ある程度進むとボスがいて、鍵のかかった扉(ゲームシステム的な意味で)がある。別の惑星に行く。そこのボスを倒すと鍵を手に入れられる(実際には特定のフォース能力を思い出す、という演出が取られることが多い)。そして、Aの惑星に戻り、扉を開ける、というような繰り返しの構造が基盤にある。
結果として、フォース能力を使わないといけない場所が散りばめられており、地形的な繋がりがマップで直感的にわかりにくい。繰り返し同じ惑星に行くので、終盤の既視感の強いプレイ感にも繋がってしまっている。
正統ボスとギミックボス
RPGでもアクションゲームでも、ボスのデザインは正統派とギミック派に大別できるのではないだろうか。
正統派はそのゲームシステムに焦点を当てたデザインになっており、その作品のシステムの習熟度を測るような設計になり、悪く言えば、変わり映えがしない。幅を表現しにくい(もちろんゲームによるが)。
ギミック派はそのボス特有のギミックが用意され、ゲームシステムの本流とは別軸の面白さを提供する。悪く言えば、固有の学習が改めて必要で、ゲームから浮いてしまっている、関連が薄いと感じやすい。
ゲームの最後を飾るラスボスをどちらに設計するのかは悩ましいところで趣味が別れるだろう。
作品の総決算なのだから、正統派としたい気持ちもある。一方で、フィナーレを飾るのだから、特別感のあるギミック派としたい気持ちもある。
結果として、両者を取り入れたような形がむしろ一般的なのではないか。ただ、それが常に高評価につながるわけではない。
本作のマスターである「SEKIRO」は、ラスボスが正統派も正統派の最難、隠しボスがギミック派に近い設計がされており、好評であった。一方で、「ELDEN RING」におけるラスボスには不満が多かったのが記憶に新しい。正統派とギミック派の連戦になるのだが、後者のバランス調整、あるいは戦闘の設計があまり上手くいっていると感じられたプレイヤーが少なかったようで、不満が多く、パッチによる修正もされている。
ネタバレになるので、詳細の言及は避けるが、本作では上手いこと設計されていると感じられた。
他のスター・ウォーズ作品との繋がり
近年、スター・ウォーズの世界は他作品との繋がりが密接になっており、一種のユニバースとなっている(それに賛否こそあれ)。本作における他作品との関連も気になるところだろう。ネタバレのない範囲で確認しよう。
まず、時系列的にも近く、強い影響を受けているのは「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」(TVシリーズの方)と、「スター・ウォーズ 反乱者たち」だ。特に一部地域が重複していたり、登場人物の背景が知れることもあり、前者を見ていた方が楽しめるのは間違いない。とは言っても、そのためにオススメできるほど気軽に観れるものではないのが残念だが。
「スター・ウォーズ:バッド・バッチ」は本作の後に制作されているということもあり、一部同じ惑星が登場する。
また、公開中のドラマシリーズである「オビ=ワン・ケノービ」との共通点にも事欠かない。
本作で初登場したパージ・トルーパーが初実写化されているし、尋問官とそれに追われるジェダイという基本的な構造が同じだ。一部シーンでは展開にかなりの類似点がある。セカンド・シスターとサード・シスターの対比などでも楽しめることは間違いない。
時系列としては離れているが、本作で重要な役割を果たしたドロイド(のおそらく同型機)が「ボバ・フェット」にも登場している。
このようにスター・ウォーズシリーズのファンであるのなら、是非、一度はプレイしたい作品となっている。本作をプレイしている間にもその繋がりは感じられるだろうし、プレイし終わった後も同ユニバースの作品を一層楽しむことができるだろう。
また、本作は続編の製作がすでに発表されている。その点にも注目だ。
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