![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/154210352/rectangle_large_type_2_eb521264709e8b75e393a4cbbf2467d2.png?width=1200)
ウォーハンマーAoSのスピアヘッドを遊んでみての感想
以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。
前提
スピアヘッド戦を数戦遊んでみての感想となる。
1陣営(セラフォン)しか使用したことがないため、その影響が感想に表れている可能性がある。
感想
ウォーハンマーAoSの構築済みっぽいゲーム
「ウォーハンマー エイジ・オヴ・シグマー」(以下AoS)の4版の中にはいくつかの遊び方があるが、その中でも注目度が高かったのが、スピアヘッドという遊び方だ。
この『スピアヘッド』という名前は、同時に各陣営で発売されているボックスセットの名前(一部、『ヴァンガード』という名前になっているが同じものだ)でもある。それもそのはずで、この遊び方は、そのボックスセット(ユニットの種類ごとに単品売りされているものがまとめてセットになっている箱で総額としてお得になるセット)の中身を組んで(塗って)、それをそのままゲームに持ち込む、という遊び方の提案になっているのだ。
つまり、一般的なウォーハンマーにあるような、軍団の規模を調節して、その枠に入るようにユニットを組んでいくのではなく、ボックスを買って、それをそのまま使っていく、という形になる。
これは、一般的なTCGがデッキを組むところから始めるのに対し、スターターセットなどの構築済みをそのまま使用するのに似ているため、俗に構築済みの遊び方である、と呼ばれている。
この記事では、この遊び方について考察していきたい。
データが分離されていることの強み
まず、第一に感じるのは、ミニチュアとデータが分離できる、ミニチュアゲームの強みを生かしている、ということだ。
ミニチュアそのものに対して、当然ながらデータ(能力)が設定されているのだが、スピアヘッド戦に関しては、それ専用のデータを使用する形になっており、これがよい実装だと感じる。
先ほど言ったように、スピアヘッド戦で使用するスピアヘッドというセット箱は、お得にミニチュアを集めるための箱でもあり、値段的にある程度等価になるように、各陣営のミニチュアが入っている。
しかしながら、各陣営には、少数だが個々が強力なエリートであったり、個々は弱いがそれが軍団として強かったり、というような特徴があり、それらは値段に紐づいていないため、セット箱自体のユニットの強さみたいなものは均等ではない。
つまり、同じシリーズのセット箱の内容だとしても、本ゲームのデータを使用すれば、当然ながらにアンバランスになってしまうのだ。
そこで、スピアヘッド戦では、それ専用のデータを使用し、専用の策略なども使用できるようになっている。また、ルールも専用に整備されていて、本ゲームで複雑になる要素(魔法など)は、スピアヘッド戦用に実装が変更されている(それぞれの特殊能力のような形で実装されている)。
これによって、各セット箱のバランスを取りながら、後に、それをそのまま本ゲームに持ち込む、という形が可能になっている。
これはトレーディングカードゲームではやりにくいことの一つだ。
カードというのは、(本質的には異なっていても)事実的にはカードにデータが記載されており、それを変更することはほぼできない。構築済みデッキ専用のカードを用意することはできるし、「マジック:ザ・ギャザリング」などではそのようなこともやっていたのだが、それが本流のゲームに影響がないように、極度に弱く設計されているなど、問題があった。
たとえば、TCGでよくある形が、構築済みデッキのカードでは効果が単純すぎて、実際のゲームに近い楽しみ方ができないとか、逆に複雑過ぎて遊びにくいとか、バランスが悪いとか、いうものだ。これらは、役割が異なるはずの構築済みゲームなどのエントリーゲームと、競技シーンなどのメインゲームとのデータが共通化されているために発生している側面もある。
専用のデータを本流のデータと別に用意することで、このような問題がある程度解決できるようになっており、スピアヘッド戦で十分に楽しんだ後、そのユニットをそのまま本流のゲームに持ち込む、という流れが問題なく形成されており、体験にはいいけれど、実際のゲームでは使えないレベルのデータである、というような問題が起こらないようになっている。
遊び始めることに対する気楽さ
ミニチュアゲームにおけるロスター、TCGにおけるデッキなど、ゲームに対して事前の構築を強いるようなゲーム構造はさほど珍しくない。
しかし、このような形式は、初心者に対して、強い負荷をかける。
そもそも、これらかゲームを始めようと言うのに、まず、ゲームのデータを見て、どのように構築を行うのかを考えなければならない。どのようなゲームであるかすら、ハッキリとわからないのに、だ。
もちろん、実際には、組んで・試して・調整する、という繰り返しにはなるのだが、その一歩目、そして、そこからしばらくの負荷は大きすぎる。
そんな時、スピアヘッド戦のような事前構築の必要性のない形式は最適であると言える。
まずは、このような構築済みゲームからスタートし、その知見を元にして、事前構築を行うことができる。ハードルは明らかに下がる。
特に、本作のようなミニチュアゲームにおいては、その恩恵はトレーディングカードゲームよりも大きいと考えている。
何にせよ、事前構築が大変なのだ。なぜならば、ユニットを購入した後、組立・塗装という段階を踏む必要があるからだ。
つまり、カードゲームのように、デッキに対するカードの出し入れが比較的簡単ではなく、ユニットを1組だけロスターに入れるとしても、そのためにかかるコストが大きい。
やはり、違うのを入れよう、となった時の手間は比べ物にならない。
また、ゲームそのものが大変だというのも大きい。
数時間かかるのは一般的で、ゲーム規模にもよるが、1日使っても、2ゲーム程度というのが多いだろう。
要は、構築して・ゲームをして・調整して、というサイクルが重く、1周するのに時間がかかる。
初めてのゲームのために、かなりのコストをかけてプレイし、そして、そこで多くの課題が見つかった場合、負荷が大きくなりすぎる可能性もある。
構築済みのゲームが用意されているメリットはかなり大きいと考える。
AoSの特性による影響
以下の記事でも論じたことではあるが、40kに比べたAoSの特性からAoSの方が構築済み形式のゲームに向いているように感じた。
まず、小規模でもゲームの体験が大きく変化しない、という風に感じる。
40kでは、射撃が基本であるため、戦場の広さやテレインの配置による射線の妨害の度合いなどを大きく感じることがある。しかし、AoSのような白兵が主体なゲームであれば、(もちろん、違いは存在するが)基本的には両者が接近し、攻撃し合う形になるので、戦場の大きさやテレインの量が問題になる可能性が比較的低くなっていると感じる。
また、ウーンズロールが固定であることから、ユニット同士の相性などを大きく気にする必要はない(たとえば、40kにおいて、戦車にモブが群がっても1ダメージも与えられない、というような極端なことが起こりにくい)ように感じ、少数でもプレイ感が大きく変化しない。
加えて、上述したような戦場に対する影響が小さいため、思い切った配置のルールなどを実装でき、ルールを単純化できている。
このような小規模化、単純化に対し、AoSのルールの方が耐性があり、いくつかの変更にも関わらず、問題なく面白いゲームを担保できているように感じられた。
指揮アビリティと勝利点の組み合わせの実装
個人的に気に入ったのは、指揮アビリティと勝利点の組み合わせだ。
スピアヘッド戦では、専用のカードを使用するのだが、各ラウンドでそれを複数枚手札にする。そして、そこには勝利点を得る条件と、指揮アビリティとして使用した場合にどのような効果を発揮するのかが書かれている。
つまり、このカードは、条件を満たして勝利点に変換するのか、(比較的強力な効果にデザインされている)指揮アビリティとして使用するのか、ということが問われるような実装になっているのだ。
これはシンプルな実装ながら、指揮アビリティと戦術目標という複雑なルールを上手く複合しているし、その複雑さに対し、カードというコンポーネントにまとめられているため、認識の負荷が軽くなっている。
各ラウンドには、規定枚数になるまでカード引く、となっているので、つまり、手札にあるカードを上手く使用していく方が効率が良い、ということになり、カードが上手く使用できる状況になるように、積極的に動いていくことになる。
つまり、どのタイミングで、どのようなカードを引くかによって、選択が変わるように設計されており、構築済み同士の戦い、という幅の中で、試合の展開に影響を及ぼすように上手く設計されていると感じた。
とはいえ、十分なカード枚数や幅があるわけではない(使い切るように使用すれば、デッキはほとんど引ききることができる)し、それらを覚えてしまうと、アーミーの運用もある程度は固定化されるようにも感じられた。特にユニット数や種類が少ない陣営は、できることが限られるので、その傾向がより強くなるだろう。
構築済みということもあり、こちらもあちらも同じ陣営同士で何度も戦闘を行う、というよりは、経験が浅いプレイヤーとか、始めたばかりのアーミーとかを使用して、何度か遊ぶ、という方が飽きが来ない設計になっていると感じる。良いゲームだが、あくまでエントリーゲームではある、というのが個人的な印象だ。
(オマケ)実際に遊ぶためには
オマケではあるが、実際に「ウォーハンマー エイジ・オヴ・シグマー」(AoS)に興味を持ち、スピアヘッド戦を遊びたい、と考えた場合に、必要になってくるものを簡単に紹介する。
端的に言えば、2人プレイヤー分のスピアヘッドセットと、遊ぶための専用のセット(カードや戦場のボード、テレイン)が必要になる。
まず、専用セットに関してだが、これは現在、(中古市場などを考えなければ)3つの購入方法がある。
スピアヘッド:炎と翡翠ゲーミングパック
究極のスターターセット
スケイヴンタイド(限定ボックスセット)
この3つであり、基本的には下に行くほど、内容が豪華になり、単品で買うよりも割引率も高くなるが、金額も高くなると考えてもらってよい。
スピアヘッド:炎と翡翠ゲーミングパックは、シンプルにスピアヘッド戦の専用セットだけが入っている製品だ。価格としては最も安い。
ただ、ウォーハンマー製品全般の話として、セット内容が豪華になればなるほど、総額が高くなるが、割引率も高くなる、という傾向がある。
なので、総額は最も安い選択肢だが、専用セットのための費用としては最も高くなる、というようなイメージになる。
究極のスターターセットは、上のゲーミングパックを含んだ上で、『ストームキャスト・エターナル』という陣営と、『スケイヴン』という陣営のスピアヘッドセットを含んだものになっている。
つまり、専用セットと、2つのスピアヘッドセットが含まれているので、これだけでスピアヘッドゲームが可能である(陣営がその両者で固定になるが)。加えて、『炎と翡翠』という冊子が付いており、これには各陣営のスピアヘッド戦におけるデータ書かれている。データ自体はネットで無料ダウンロード可能なのだが、印刷などの手間をかける必要がないし、おそらく、基本のコアルールも書かれている。
個人的には、一般的な初心者には、まず、この箱を薦めたい。特に、両者のうち、片方の陣営だけにでも興味があればなおさらだ。
スケイヴンタイドは、その究極のスターターセットに、さらに追加のユニットなどが入っているような箱だ。これは個数限定商品であり、執筆現在では在庫が見受けられるものの、そのうち購入ができなくなる選択肢だ。
厳密に言うと完全な上位互換ではなく、上述した『炎と翡翠』の本がハードカバーになっていたり(豪華ではあるが持ち運びの面では不利な側面もある)、スターターセット専用の冊子などが付いていない。
しかしながら、『ストームキャスト・エターナル』と『スケイヴン』という両陣営のユニットが、スピアヘッドよりも多くなって、さらに追加されているし、コアルールブックなども追加されている。(コアルールは公式で無料ダウンロード可能だが、ストーリーや一部特殊なルールに関して、ルールブックにのみ記載されている情報がある)
こちらは、AoSのメインのゲームも、『ストームキャスト・エターナル』と『スケイヴン』のどちらか(あるいは両方)でプレイするつもりがあるのであれば、間違いなく購入して良い製品だ。
つまり、端的にまとめると、
スピアヘッド:炎と翡翠ゲーミングパック
スピアヘッド戦に必要な共通のセットだけ。
→スターターセットの陣営に興味がなく、コストを抑えたい人向け。究極のスターターセット
『ストームキャスト・エターナル』と『スケイヴン』のスピアヘッドセットと、スピアヘッド戦に必要な共通のセット。
→どちらかの陣営に興味があったり、スピアヘッド戦をすぐにプレイしたい人向け。スケイヴンタイド(限定ボックスセット)
『ストームキャスト・エターナル』と『スケイヴン』のスピアヘッドセットと、スピアヘッド戦に必要な共通のセットに加え、両陣営における追加のユニットと、コアルールなどの本ゲームで有効に使えるもの。
→スピアヘッド戦も遊びたいが、どちらかの陣営でメインのゲームを遊ぶつもりがある人向け。
という形になっている。
ただ、共通セットは、2プレイヤーに付き1セットあればよいので、インターネットなどを活用して、すでにそれを持っているプレイヤーを対戦相手として募集し、持ってきてもらう、というような形も可能ではある。
次に、使いたい陣営のスピアヘッドセットだ。
これは簡単で、使用したい陣営を決めたら、その陣営のスピアヘッドというセット箱を購入すればよい。
この時、注意すべき点が2つある。
まず、その陣営が『ストームキャスト・エターナル』と『スケイヴン』であるかどうかだ。どちらかであった場合、上述のように『究極のスターターセット』を購入する方が、基本的には良いと思う。
実は、これらの陣営には、スピアヘッドの組み合わせが2つ用意されていて、スターターセットでない方も存在し、それは別のスピアヘッド箱として売られている。
これらを購入しても問題はないのだが、色々と理解出来てから、自分に必要なものかどうかを考えて購入した方が好ましいとは感じる。
次に、使いたい陣営のスピアヘッド箱がない場合だ。
実はこのセット箱、半年ぐらい前までは『ヴァンガード』という名称だった。『スピアヘッド』が見当たらない場合でも、『ヴァンガード』は見つけられると思う。そして、それはスピアヘッド戦で使用できる。
つまり、事実的には『スピアヘッド』=『ヴァンガード』なのだ。箱の名称が異なるだけで、変更前のものが存在する、という感じだ。
これらを揃えれば、ゲーム自体は開始できる。
とはいえ、イメージが付かなかったり、ルールがわからなかったり、ということも多いだろう。その場合は、執筆現在、各所でスピアヘッド戦を行うゲーム会などが行われているようなので、都合が合えば、そこに参加したり、ウォーハンマーストアなどに行って、店員さんにお聞きしたり、というのも検討すべきだろう。