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「Desperados III」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



感想

西部劇RTT

 RTTという言葉を聞いたことがあるだろうか。RTAやRTSならば聞いたことがあるかもしれない。RTAはリアルタイムアタックで、一定の条件下でゲームをクリアするまでにかかる時間を短くすることを競う遊び方だ。RTSはリアルタイムストラテジーで、アクションゲームのようにリアルタイムで進行していくユニット(多くの場合は部隊)を動かしていくゲームであり、「Age of Empires」シリーズなどが有名だ。

 では、RTTは? リアルタイムタクティクスの略称である。そして、本作「Desperados III」はその代表作として知られている。

 RTSとRTTは似通っていて、ストラテジーとタクティクス、つまり、戦略的か戦術的か、という違いがある。

 たとえば、RTSにはシミュレーションゲームとしての側面が強く、生産力や資源の概念がゲームのメインシステムになっていることが多い。つまり、ユニットを操作し、木材を確保、兵舎を建設し、兵士を生産する、と言ったような経済構造を持つ。その舞台がSFだったり、中世だったりはするのだが、このような経済構造を持つ点は変わらない。また、操作するユニットは、基本的には部隊であって、個人ではない。槍兵や弓兵といった区別はあるが、ジョンやジェニーではない(もちろん、例外はあるが)のだ。

 対して、RTTはもっと小さな規模に焦点を合わせている。プレイヤーが操作するのは、個人だ。本作でも、ユニットになっているのはナイフ使い兼ガンマンのクーパー、巨大なトラップが相棒の大男ヘクター、医師であり傭兵でありスナイパーであるドクター・マッコイ、男ユニットを誑かせる偽りの花嫁ケイト、超自然的な力を使うことのできるシャーマンのイザベルの計5人の個人である。そして、これが操作するユニットの上限でもある。

 また、経済構造をメインとしていない。一応、本作では弾丸の数と言ったリソース管理の側面はあるものの、それを投資して、生産力を上げたり、と言ったことはしないわけだ。

 つまり、RTTとは、リアルタイムで進行していく中で、比較的小規模な戦闘を少人数でやり抜いていく、という形になる。そして、それが面白いのだ。では、どのように面白いのか、ということを見ていきたい。

画面や敵ユニット(赤枠の人間)はこれぐらいの規模感で操作する



少人数・リアルタイムゆえに生まれるゲームプレイ

 RTTの特徴から生まれるステージというのは、以下のようになっている。

 ステージによるのだが、プレイヤーは2~5人のユニットを操作することになる。しかしながら、ステージには山のように敵ユニットが配置されていて、しかも、死体や、プレイヤーユニットが発見されると警報が発信され、さらに増員されてしまう。(いわゆるアラート)

 よって、何をするのかと言えば、ステルスキル(非殺傷の手段やそれによるやり込みなども用意されているが)なのだ。

 敵は皆、ビューコーンを持っている。斜線部は立っているユニットを発見できる範囲で、実部は全てのユニットを発見できる範囲だ。これらを踏まえて、プレイヤーは上手くユニットを操作し、敵を倒していく。

 たとえば、手前の敵を倒さなければ先に進めないが、それを倒してしまうと奥の敵に見つかってしまう。だから、先に奥の敵を倒して……というような一種のパズル的な面白さがある。

 一方で、普通のパズルではない部分がある。手段が山のようにあるのだ。

 プレイヤーユニットは皆、個性的なスキルを持っている。たとえば、主人公のクーパーであれば、ナイフを投げることもできるし、両手に銃を持って同時に複数の敵を倒すこともできる。途中で仲間になるシャーマンのイザベルであれば、敵のユニットを一時的に操作することもできる。このように多様な手段を用いて、網の目のような敵ユニットをどう崩していくのか、というのを考えるのが、ゲームのメインプレイだ。

 ここで、リアルタイムであることも生きてくる。敵のユニットはその見た目に反してお行儀がいいので、必ず一定のルーチンで行動してくれる。たとえば、遠くにいる敵がちょうど別の方向を向いている時に、タイミングよく目の前の敵を倒せば、見されないとか、そういう時間軸に対する要素を考える必要があるのだ。敵を倒す手段にも色々とあり、たとえば、接近で倒すのであれば、倒すために必要な時間は短くなるといったこともある。

 そういう、時間的、空間的なパズル構造になっている。

敵ユニットは複数体いるので、それぞれのビューコーンを確認し、作戦を練る


 とはいえ、ターンベースのゲームに慣れているプレイヤーであれば、いくつかの懸念があるだろう。

 たとえば、そんなに多くのユニットを同時に操作できない、という懸念である。これはいくつかの手法によって、部分的に解決されている。

 まず、対決モードの実装だ。これは、何時でも発動することができ、(難易度にもよるのだが)時間を一時停止できる、というモードだ。この状態で各ユニットに指示を出すことができる。

 たとえば、ガンマンはここの2人を銃で同時に倒して、大男は彼らを見ている敵を倒して、というような指示が出せる。そして、実行のボタンを押すことで、同時に実行することができるのだ。

 これによって、様々な戦術が取れるようになっているし、非常に気持ちの良い瞬間を生み出すことに成功している。これを多用することによって、リアルタイムの操作に慣れていなくても、さほど苦労しないだろう。

 また、そもそも、操作できるユニット数が限られていることが多い。

 次第と行動を共にする人物は増えていくのだが、物語上の理由でそのステージでは操作できない、ということが多い。そうでなくても、離れた場所で同時に別の作戦行動をしていたりして、基本的には2~3ユニットを管理し、操作することになる。

 上述したように敵のユニットの行動は厳密に決まっているため、安全な場所にユニットを置いておけば、基本的に問題なく、難易度が低ければ1ユニットをメインで操作していても、十分に突破できる箇所も多い。

 タイミングを計る必要がある、という意味でのリアルタイム性は高いが、指示を出すのに時間制限がある、という意味合いは弱いのだ。

対決モード中は基本的に時が止まっているので、落ち着いて指示が出来る



多様なパズルのバリエーションとその量

 では、基本的にステルスキルをするだけなのかと言えば、まあ、そうなのだが、実際には様々な多様性があり、なかなか飽きが来ない。

 まず、前述したユニットの多様性だ。それぞれが出来ることは微妙に異なっており、移動速度や近接攻撃の特徴も異なる。そして、多くのミッションで限られた組み合わせを使用することになるので、それによってスキルの強さが異なっていく。

 次に、絞り込まれた敵ユニットの性能だ。基本的にガンマン、ポンチョ、ロングコートの3種類しかおらず、そこに性別があるだけだ。ただ、ゲーム的な特徴がしっかりとしており、ガンマンはいわゆる雑魚キャラで割とどうとでもできるが、ポンチョは一部の操作系のスキルを受け付けないし、ロングコートは体力が多く、偽装も見破り、限られた手段でしか即時に倒す手段がない、というように絞り込まれた種類となっている。スキルによっては性別によって差が出るので、ここでもパズルに多様性が生まれている。これらの配置によって多様なパズルの問題が組み上がっている。

 他にも、地形などステージギミックが利用できることがある。基本的にはタイミング良く岩を落として敵を事故死のように見せかける、というステルスゲームにありがちなギミックだったりするが、人の会話を聞くことによって効率よくミッションをこなすことができるようになったり、ちょっとしたアクセントになっている。

 また、この手のゲームで重要なセーブ&ロードも快適だ。ちょっと試してみて、『あ、やっぱり駄目だったか、クイックロード』ということは日常茶飯事で、それをゲーム側がしっかりとサポートしている。最後にセーブしてからどれぐらい経ったかを画面に表示するオプションまであるぐらいで、他のゲームにありがちなプレイに熱中していて、セーブするのを忘れてしまった、というようなことも起きにくい。


 ただ、かなりのボリュームであることは間違いない。筆者は最も低い難易度でプレイしたのだが、1ステージにプレイ時間で1時間強ぐらいになることが多かったし、ロードによってなかったことになった時間はさらに多い。筆者の最終的なプレイ時間は、合計25時間ほどだったが、これはやり込み要素を無視した、難易度も低い上の時間であることに留意したい。終盤には流石に見飽きた、と思う構造がいくつか見受けられたのは事実だ。

 チャレンジコンテンツとして、スキルの使用や殺傷に制限があるなど、やり込み要素も充実しており、DLCまであるため、物足りないと感じることはほとんどないだろう。

各ステージにこのような実績が用意されいる



感情に訴えかける場面やシステム

 今まではメカニクス的な側面に目を向けてきたが、実体としてのゲームプレイにおける感情の動きにも注目したい。

 まず、物語面だが、シンプルで王道ながらに面白い。キャラクターはしっかりと立っているが嫌味はないし、なんだかんだでいい奴らだ。苦楽を共にすることもあり、最終的には十分な愛着が湧くだろう。これには少人数であることも功を奏している。

 また、要所要所で必要となる、対決モードを利用した同時キルは非常に気持ちがいい。事前に計画した行動が綺麗に上手くハマり、ノーアラートで難所をくぐり抜けた時、そして、それが銃の同時発射などの効果音も相まって西部劇的でもあり、プレイしていて盛り上がるところだ。

 他にも、ステージが終わるたびに簡単なリプレイモードがあり、キャラクターたちがどのように動き、敵を倒し、ミッションをクリアしたのかが確認でき、これを保存することもできる。

 このようにいたせりつくせりで、ステルスゲームというストレスが溜まりやすいゲームであるにも関わらず、あまり不快な思いをせずに済む。これはビューコーンや敵の行動ルーチンのように、出題が明確化されていて、問題が起きても、ある程度は自身の責任であると感じられる構造になっていることによる寄与も大きいだろう。

リプレイモードで自身の行動を振り返ることができる(保存も可能)


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