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「Slay the Spire」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



感想

概要について

 「ドミニオン」を始祖とするボードゲームにおけるデッキ構築のメカニクスを基盤としたデジタルゲームだ。ここで言うデッキ構築というのは、「マジック:ザ・ギャザリング」を始めとしたTCGにあるような、ゲームの前にそれぞれがデッキを組む、というものではなく、ゲームをしながら、デッキを組む、つまり、自身のデッキにカードを追加する、というメカニクスだ。

 プレイヤーは自身を4種類のうちからキャラクターを選び、それに対応したデッキとレリックという強力なアイテムをもらうことができる。また、そのゲームにおいて登場するカードはそのキャラクターに依存する。つまり、そのキャラクターに基づいたゲーム体験になる。

 各プレイにおいては、大きく3ステージに分けれているところを進んでいき自分の進むルートを選んでいく。その結果として、カードを強化したり、戦闘を行ったり、イベントが発生したりする。そして、ルートの行き止まりには最終的にボスが待っており、それを倒していくのが目的となる。


 このゲームのメインとなるのは、道中の敵やボスとの戦闘だ。

 戦闘が始まると、プレイヤーは自身のデッキからカードを指定された分だけ引き、基本的にはコストを支払ってプレイしていく。レリックやカードの効果で上下するが、基本的に1ターン3コスト分だけカードを使用できる。

 この際、相手が次にどれぐらいの攻撃をしてくるか、といった情報は見えているので、それに合わせて防御を行ったり、攻撃をして、敵の体力を0にしようと努力する。

 こちらの行動が終われば、相手が上述した予定に従い、行動をし、それを受け止めていく。そして、次のターンに移る。

 この時、前のターンまでに持っていた手札は基本的に捨てられ、次のターンのために手札を再び引いていく。もし、デッキが切れていたら、捨て札を全てシャッフルし直し、それをデッキにし、残りの分を引く。

 敵を倒した際にはボーナスが得られ、基本的にはここで3枚のカードから1枚のカードが得られる。エリートという強敵もおり、その場合には、

 これを繰り返していき、最終ステージのボスを倒せばゲームクリア、途中で自身の体力がなくなった場合にはゲームオーバーとなる。



ハイスコア型とクリア型

 一人用ゲームには、そのゲームの評価として大きく、ハイスコア型とクリア型が用いられているように思える。ハイスコア型はゲーム内の行動に点数が付き、自身のスコアをなるべく高めるのに対し、クリア型はゲームをクリアするという点に重点が置かれている。

 そのゲームを複数回プレイするような遊び方をするのであれば、これは上限を見る遊びなのか、下限を見る遊びなのか、とも考えられるだろう。

 このゲームに対してもいくつか遊び方はあるのだろうが、簡単に調べたところ、人気があるのは何連戦クリアできるのか、という遊びであるように思える。スコアも一応、表示されているのだが、ハイスコアを競う遊び方の方が主流でないように感じた。(勘違いの可能性もある)

 これは、(スコアの付け方も関連してはいるが)このゲームの根幹にランダム性が深く関わっている影響であると考えている。

 ハイスコアを狙う場合、上限を見るので、ひたすらにリセットを繰り返し都合の良い出目が出るのを待たなければならないのは想像に難くない。対して、連続クリアを狙う場合、下限を見るので、ランダム性が下ぶれたとしても、ゲームをクリアできるような技術や知識が求められれることになる。

 このように、ゲームプレイごとにランダム性が強く関わる場合、上限を見るより、下限を見る方が良いと考えている。つまり、ハイスコア型よりも、クリア型の方が良い。

 逆にランダム性が薄い(ほぼない)ことの多い、リズムゲームやシューティングゲームはハイスコア型が主流だ。



デジタルゲームである意味

 デッキ構築というアナログゲームのメカニクスを用いたデジタルゲームなのだが、デジタルにした価値が遺憾なく発揮されている。

 まず、デッキ構築はその性質から、何度もカードをシャッフルしなければならないのだが、それが早く、正確に行われる。

 また、本作では使用しない可能性が高いとは思うが、極端な結果の場合は引き直す、と言った調整も可能だ。


 なんといっても、本作で最も大きいのはレリックの存在とその処理における面白さであると考えている。

 回数を数えたり、誘発するレリックが非常に多い。そして、それを1回の試行でいくつも手に入れることができるのだ。

 上級者であればそんなことはないと思うが、軽く触る程度のプレイヤーであれば、その能力を全て把握し、管理することは不可能に近い。

 結果として、サプライズをもたらす。予想だにしなかった効果で助かることもあれば、計算が狂わされ行動の再計画を余儀なくされることもある。

 10個を超えるような数のレリックを手動で管理するのは不可能ではないにしても、煩わしさが大きく、利益の方が少ないと感じるだろう。

 デジタルゲームだからこそ出来る実装と言える。



ローグライトにおける体力の価値とデッキ構築

 「Hades」のレビューでも述べたが、本作もまた、体力の価値が少しばかり高くなっているように感じる。(上級者からみれば異なるかもしれない)

 休憩によって体力を回復させられるのだが、それ以外の選択肢ではカードを強化する、といったことができるため、体力を保つことが結果として、自身の強化に繋がり、強化することによって体力を保ちやすくなる。

 結果として、体力を守りやすい戦略が強くなりやすく、コンボ戦略がゲームの要となっているように感じる。つまり、相手の攻撃を受け付けないほど防御力を頻繁に高められるようにしたり、一気に相手の体力を削り取るような行動が強いのではないか、ということだ。グッドスタッフ的なデッキがあまり強くなりにくく、デッキとのシナジーに意識が傾きやすい。

 カードコストや、デッキ構築というシステム自体も、それを促している。無駄なカードが入っていること自体が弱い行動であるため、極力自分のデッキを上手く染め上げることが重要になるように感じる。

 結果として、カードが手に入るようになったとしても、初期カードばかりの序盤はまだしも、中盤以降は提示された3枚のカード全てが必要ない、ということも発生しやすくなっており、十分にこのゲームに習熟したプレイヤーはまだしも、そうでなければある特定の形にデッキを整えていく、というゲームプレイになりやすいと感じる。



必要なゲーム時間

 個人的に、本作を頻繁にプレイしたいと思わない理由の一番がこれだ。

 デッキ構築というメカニクスが本質的に十分な手番の多さを前提として成立しているためであり、成長をし、それを感じるためにも、戦闘の回数が多くなりすぎ、1回のプレイ時間が長いと感じられる。

 ただ、プレイ時間が長くなったとしても、「デューン:インペリウム」のレビューでも述べたように、デッキ構築は終盤の大きな修正はしにくい。本作においても、終盤は十分に高い完成度のデッキをさらに強化する、という形になるだろう。この時点においてデッキ構築の面白さはあまり発揮されておらず、また、デッキが大きく変容しないことから、戦闘自体も同じことの繰り返しになりがちだ。

 結果として、有効な選択が行われている瞬間はあまり多くないのではないか、プレイ時間当たりの比が小さいのではないか、との懸念を抱く。

 もっとも、これはこのような構造のゲームにした時点で、ある意味必然的に発生する問題であり、このようなジャンルのゲームの中で(大量のフォロワーを生み出してなお)トップクラスの出来であることに疑義はない。

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