鳥展(at home)〜鳥たちの栖〜
カハクに行ったのをきっかけに、三日連続「俺の鳥展」です。
鳥を収集し始めてから、その「気配」がうつるものも気になるようになりました。
昔話『見るなの座敷』をご存知でしょうか。
話の終盤で、開けてはならないと言われた襖を覗いた木こり。刹那、彼は見慣れた山道で呆然としている自分に気が付きます。豪華なお屋敷と美しい女主人は、跡形もなく消え去り、頭上を一羽の鳥が飛び去ります。
この物語の幕引きをする動物が、他でもない「鳥」であるというのは、ストーリー展開の非日常さを、妙にリアリティのあるものにしている様に思え、幼い頃からずっと印象に残っていた昔話です。夢と現の合間に響く羽音。山道を1人でぼんやりと歩いている時、木の間から鳥が羽ばたく。その小さく鮮烈な音で、意識のスイッチが入れ替わる。
「栖」は、2018年に、和紙にペンで描いた私の作品です。時間や空間を超え、夢と現を往来する鳥たちの憩う場所。様々な鳥を描き込みました。
私の地元である埼玉県にも、かつて鷺藪と呼ばれ、多くの鷺が訪れる場所がありました。そこは古いお屋敷を中心に、その周囲が大きな森のごとき佇まいでした。江戸時代の参勤交代の図にも登場する程ですから、地域では有名だったことでしょう。今は見る影もなく、時折数羽の鷺を見かけるだけのだだっ広い田園が広がっているだけです。
スタジオジブリの『君たちはどう生きるか』では、時空を超えた古い屋敷を通り抜けた主人公が、記憶と心、そして歴史の深淵の冒険へと巻き込まれます。そこへ誘うのは他でもない鷺でした。鷺は人語を操り、あちらとこちらの橋渡しをします。そして、迷い込んだ世界には鳥たちが人間の様に棲んでいて・・・。この展開は、我が意を得たりという心地でした。
「鷺藪」は2023年制作の、小さなガラス絵です。タイトルそのまま鷺藪があった当時の地図の鳥瞰図のドローイングと、現在の跡地の公園でスケッチした、鷺の剥製を重ねて描きました。