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どうでもいいよ
歳はとりたくありません。それは至極当然のことです。
なぜならまず体にガタがきます。
どんなアスリートでも、いや、アスリートであればあるほど肉体の衰えは顕著にあらわれるでしょう。
ただ脳についてはどうなのか?
よく学習能力の代表として「記憶力」がピックアップされます。
「記憶力」は加齢とともに低下していくのはどうやら事実らしいです。
現に僕も人の名前をよく忘れるようになりました。
ただ、昔からすごく「どうでもいいこと」をよく覚えているような気がします。
例えば、「あのときお前こんなことしたよな」とか「こんなこと言ってたよな」とか。
友人や先輩後輩などから「そんなどうでもいいことよく覚えてたな」と言われるのですが、勝手にこの記憶の良さは創作に役立つと思っています。
「すごくどうでもいいこと」の中には人間の機微が存在しているように思います。
なので、ある物語のある場面を書いているときに起こるほんの些細な事象、それが人間を描くのにある「深み」を与えてくれるような気がするんです。
ちょっと話がそれますが、ダウンタウンの松本さんが『トカゲのおっさん』というコントの中で演じたある所作が僕は「人間臭さ」や「人間の機微」をよく描いているな、と感心したことがあります。
それは松本さん演じるトカゲのおっさんがホンコンさん演じるおっさんと喧嘩をするシーンなのですが、二人は怒声をあげ罵り合い、ついにはお互いを殴ります。
その時、「手を出す」ということで空気が一気に変わり、周りの人間は二人の間に割って入ります。
ついに感情が決壊して行動に表れたわけです。
ここで普通なら「なんやねんアイツ!」などと相手に向かって悪態をつく演技をしそうなものですが、松本さんは腕時計を見ながら、「時計壊れた…」という演技をしました。
ここが決定的に人間を描けていると思います。
人間は感情が爆発し、それが表層化した時、妙に冷静を装うものです。
それを知っている松本さんは「俺、時計とかに気がいくぐらい冷静やからな」とアピールするおっさんを見事に演じていたのです。
おそらく松本さんは幼少期からたくさんの人を観察し、それこそ「どうでもいいこと」に集約されるであろう人間の機微、もっと言うと滑稽さに気づいて、そしてそれを覚えていたのだと思います。
あのコントを見て、松本人志がいかに天才なのかということを思い知らされました。
やっぱり歳は重ねるし、膝も腰も肩も痛くなってきていますが、「どうでもいいこと」はいつまでも覚えておきたいな、と思っています。
では、また。