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キックぼんやり層に贈る「RIZINジモキック問題」とは何か■現地観戦の鬼サーバル

RIZINでキックボクシングの試合が多数マッチメイクされていることについて、キックボクシング観戦の鬼・サーバルさん@serval87に話を伺いました!キックぼんやり層、必読(聞き手/ジャン斉藤)
※Dropkickニコ生で配信されたものを再構成した記事です


――RIZINファンのあいだで物議を醸している「ジモキック」。大会が開催される地元のキック選手が組まれることを指しています。議論の火付け役ではないですが、キック側から「ジモキック」に関してツイートされているサーバルさんをお呼びしまして、お話を伺います。サーバルさん、今日はよろしくお願いします。

サーバル よろしくお願いします。本当に単なるイチ格闘技ファンなので、こういうものに出ていいのかなっていうのが本音のところなんですけど。

――サーバルさんは格闘技興行を相当数、現地観戦されてますよね。ボクが知るかぎりナンバーワン。だいたい年間どれくらい観戦されているんですか?

サーバル 多いときで年間170程度ですね。

――170! 2日にいっぺんは現地観戦されてるということですね……。

サーバル 最近は150ぐらいはキープしてる感じです。

――MMAはそんなに見てないんですよね。

サーバル ほぼ見てないですね。ボクシングとキック半々ですけど、ややキックのほうが多いです。

――ということは、年間150興行だとして、80~90興行はキックを観戦されてると。いろいろと出向かれてるんですか?

サーバル 時々遠征もしますけど、おおむね都内ですね。ディファ有明がなくなって以降は後楽園ホールが基本で、たまに新宿フェイスもある感じですかね。

――後楽園ホールの会場使用料ってそこそこの値段はするし、埋めるのも大変ですけど、年間それだけキックの興行がある。その時点で驚いてるMMAファンは多いと思います(笑)。ちなみにいつ頃から現地観戦されてるんですか。

サーバル 1988年にマイク・タイソンvsトニー・タッブスのボクシング世界戦を東京ドームで観戦してからですね。

――当時生まれてなかった方もこの配信を聞いているかもしれません(笑)。ということは、キックの厳しい時代もいい時代も……。

サーバル 全日本キックが再建してロブ・カーマンを呼んでる時代からなので。それこそドン・中矢・ニールセンやカーマンの人気で活気づいていたというか。立嶋篤史含めて盛り上がりつつあった……いまの盛り上がりとはまた違いますけども、そういう時代のキックを見ながら、現在まで歩んできた感じですね。

――じつはサーバルさんもキックボクサーだったそうですね。

サーバル はい。たいした戦績じゃないですけど、当時はマイナーなキック団体で試合をしてました。

――観戦者としての経験値もすごいし、プレイヤーとして業界の裏側という言い方は生々しいですけど、実態も把握してるということですよね。

サーバル それプラス、私は92年前後の2年半ほど、後楽園ホールでアルバイトをしていたので。その時期のキックボクシングはバイトをしながら全部見てます。

――プロレスやMMAの場合は古くからの観戦者はそれなりに残ってるんですけど、現在に至るまでのキックの歴史を追っている方は少ないように見えるんですね。

サーバル 私レベルの人はそれなりにいたとは思うんですよね。ただまあ、徐々に疎遠になったりして、日本で10人いるかどうかくらいかもしれないんですけど、キックの場合はどこかでひと段落ついて見なくなる人が多いかな。たとえば旧K-1がなくなったりとか。そういった節目があるのかなって気はするんですけども。私も後楽園から足が遠のくというか、完全には遠のかないんですけど、月に2〜3回しか後楽園に行かない時期もあったんですね。年間でいえば30回くらい。

――ボクはこの10年で30回も会場観戦してないから、それでも充分マニアです(笑)。

サーバル 2000年頃に年間100回を超えたことが記憶にあります。ツイッターもやり始めて、私が行かず誰も発信しない大会が出てくると、「興行自体がなかったみたいだ」という人も出てきたもので。後楽園でやる以上は行くと決めてから年間150回を超えたっていう感じです。身銭を切ってツイッターで報告することが仕事化しちゃったってのが(笑)、ここ5~6年ですね。

――今回サーバルさんに話を聞こうと思ったのは、サーバルさんのジモキック問題に関するツイートが非常に誤解されてるというか。どうしてもSNSって「敵か、味方か」に分けがちで。サーバルさんがジモキックを擁護してるような扱いをされていたので。こういった機会を作らせていただいたんですけども。まずサーバルさんはRIZINキックをどのような目線でご覧になってきたんですか?

サーバル 各団体ほぼすべて観戦している私からすれば、RIZINキックは既存のキック団体の流れと別で、どちらかというとボーナスステージが続いてるようなイメージですね。ちょっと驚くようなカードもポロポロとは入ってますけども、「そこから次に何かが……」っていう興味の惹かせ方ができてないのがちょっと残念かなということで。

――それはつまりストーリーを見せられてないってことですね。

サーバル そこはちょっと感じますね。私なんかはRIZINはMMAの会社だと思ってますんで。その中で那須川天心という大物がいたことで、キックの試合がだんだんと広がってきたのかなと考えてるんですけど。ただ、多くのファンはやっぱり総合の試合を見ようと思ってるところに、私自身もそこまで知らないような無名な選手たちのキックが何試合も組まれるのは、たしかにお金を払う側は納得いかないでしょうね。私はどちらかというと「それでもキックを真剣に見ろ」と言いたいわけではなくて、「そこには同情します」っていう感じですかね。

――「RIZINキックは紛い物」という声に憤りのツイートをされたときは、どういった心境だったんですか?

サーバル 「紛い物」発言に関しては、もしかすると誤解があるかもしれないので言っておきますと、ネットだとUFCやONEなんかと横並びにされる中で、レベルの高い試合を引き合いに出して、上から比較することに関してですよね。デビューしたてで、まだレベルの低い選手であろうと、チャンピオンクラスの試合であろうとも、それこそ命を懸けて真剣にやっていることに差はないんじゃないの?ってことを言いたかっただけです。どういうレベルかはさておき、レベルが低いから紛い物だっていうのは、それはちょっとリスペクトが足りなすぎるなと。でも、それは昔とは時代が違うことも影響があるんでしょうね。いまの格闘技ファンはネットで見るのが中心だし、ネットでコーナー・マクレガーから格闘技を見始めた人たちは、ガラガラの後楽園ホールで4回戦のボクシングの試合を見るという段階を踏んできてないわけですから。

――なるほど。ネットだと、極上のものだけを選別して見ることが可能ですね。

サーバル 私の時代は、試合からだいぶ経ってから発売された『ゴング格闘技』や『格闘技通信』の白黒写真のレポートでようやく結果や内容がわかりました。当時はたまにしか興行がないので、1興行あたりにすごくたくさん試合が詰められてたので、中には街の喧嘩みたいな試合もありましたけど「こういうものなんだ」って納得してたんですけど。いまの人たちは先にレベルの高いものから見てるわけなので、下に見る気持ちはもちろんわかるんですけど、「ちょっと失礼じゃないですか?」っていう感じですかね。

――RIZINの静岡大会で何試合かキックが組まれたのは、プレイガイド売りがそこまで期待できない場所ですし、地元選手を起用することでの販促効果なんでしょうけど。RIZIN静岡がそこまで客入りがよくなかったことで、地元の選手起用を否定する意見もあって。まあキックを組むだけで何千人も入るんだったら、独立したキック興行を打っているわけですけど。

サーバル そうなんですよね。私は主催者側の事情を知って何かを話しているわけではないので、あくまで推測でしかないと断っておきますけども、チケットをさばくためにキックの試合が組まれていることは、場合によってはあるのかなとは思います。やっぱりキックの場合、ファイトマネーの代わりとしてチケットを売るっていう面が強いので。総合格闘技はプロレスからの流れがあるので、ファイトマネーは基本的に現金が出ると聞いてます。

――すべての国内MMAが全額ファイトマネーかというと、団体によって違ってくるでしょうし、それなりの報酬なのかはわかりません。キックの場合は昔からの慣習もあることで、MMAより手売りが強いところがあるんですね。

サーバル キックはボクシング興行をお手本にしてるので、ファイトマネーをチケットで払うという文化がそれなりに浸透している。もちろんすべてじゃないにしても、チケットを売るために頑張る選手が多いことはたしかです。じゃあ静岡のキックの選手ひとりひとりが何百枚も埋めるかっていうと、そういうレベルではないと思います。なので、目に見えてお客が入ってるという絵にはならなかったと私は思ったんですけど。

――たとえばキックが5試合あって、出場する10名が各自20~30枚売ったとすれば、それなりの利益にはなるってことでしょうね。あとMMA人気は高まってるとはいえ、地方によってはキックジムのほうが多いという現状はある。

サーバル キックのジムはあるけど、MMAのジムはありませんっていう場所はいくらでもあると思いますし、RIZINが興行を分散化してる中で、全試合MMAで埋まるほど選手が余ってるようには見えないので。興行を作るうえでどうしても前座はキックのほうが組みやすいことで、キックが徐々に増えてる現状なのかなと。そういう大会にファンの人たちがPPVでお金を落とすときにちょっと抵抗があるっていう意見は私的にはよくわかります。

――先ほどサラッとおっしゃってましたけども、キックのファイトマネーはチケットだと。それは団体や選手によって違うでしょうし、ブラックボックスなので団体としても公にはできないんですけども。だからこそ旧KNOCK OUTの「選手に手売りをさせない宣言」は衝撃的だったわけですよね。

サーバル そうですね。私の現役時代の話でいえば、チケットがファイトマネーの代わりでした。現金ではなくすべてオールチケットです。後楽園での試合もそうでした。

――後楽園ホールという男の舞台に立ってるんですね。

サーバル 逆にいうと、昔のキックは地方興行が下火になったあとは、後楽園でしか試合はできなかったんですよ。水戸興行とかはありましたけどね。私はファイトマネーが現金で出るということを売りにしてる団体に移籍したことがあったんです。でも、その団体の中でも、それなりの選手には現金が出るけど、現金半分チケット半分とか、いろんなパターンがあって。私はその時は現金ではなく、額面として2倍のチケットでよろしく頼むってことで出ました。

――ファイトマネーの2倍のチケットを渡すと。

サーバル ファイトマネーをチケット払いするときは、額面の2倍が相場ですね。いまの時代もキックでプロになった選手は、最初から現金が入ってくると思って試合をする人はあまりいないんじゃないのかなと思います。それなりに実績がある選手は、最終的には後援会がサポートするかたちで、チケットを販売するイメージはあります。私の現役時代はSNSはなかったですけど、いまはツイッターなどで選手自身が営業できますよね。キャラクターが強い選手は、デビューしたてでも売れるんだろうなって思います。昔よりはそういう選手は出やすくなってるイメージはありますね。誤解ないように言っておくと、団体によっては手売りの文化が残ってることは間違いないと思うんですけど、K-1グループさんやRISEさんもプロとしてのビジネスがしっかりできあがってきてる面もあるので。それなりの選手にはちゃんと現金でファイトマネーは出てると思います。「ファイトマネー=チケット」というシステムは改善されてると思うんですが、ファイトマネーが現金だとしても、それ以外に「自分は200枚売りますよ」ということになれば、マージンとして収入になりますから。

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