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AKIRAインタビュー最終回「猪木さんから、オマエら殴り合えと……」

野上彰として新日本プロレスでデビューしたAKIRAインタビューシリーズ最終回……(聞き手/ジャン斉藤)

☆この記事は2021年10月に掲載されたものです

・①新日本プロレス入門、野上彰だった頃
・②海外修行で感じた異様な新日本プロレス
・③“日本の陽気な奴ら”JJジャックス解散の理由
・④昭和・新日本なら小川直也vs橋本真也の事件は起きていない
・⑤プロレスと「お芝居」の違いとは?

AKIRAインタビューシリーズ


――パンクラス代表だった酒井正和さんがTAJIRIさんと始めたSMASHでも試合をされてますよね。

AKIRA SMASHはどんな流れで参加したのかな……。それもフリー参戦だったんですよね、試合ごとの。ただSMASHはアングル的なものがおもしろそうだったんで。新日はやっぱりそこまではやらないので……全然やらなかったですね、手を出さないですね。なんとなくの流れというか、軍団抗争的なものはあっても、いわゆるWWE的なものはアンタッチャブルでしたからね。SMASHはやってたんで、おもしろそうだなっていう興味はありましたね。

――当時の新日本の場合はある程度の展開は作るけど、あとはレスラー任せだったわけですね。

AKIRA そうですね。ゴールまでの大方の筋はあるでしょうけど、その都度調達できる材料で作る感じはあったとは思います。だから予定どおりにはいかなかったと思うし、なんかポッと出のおいしい材料が入ったら、それをうまく料理してみたいな。

――臨機応変にやっていくわけですね。『ハッスル』なんかは団体主導の作りでしたけど、それ以外の団体ではなかったということですか?

AKIRA たぶん、ないんじゃないですかね。あったのかなぁ。やっぱり日本のプロレスって筋書きどおりをメインにした展開はやっちゃいけないことになっていたし、どこまでも格闘技としてのあり方を守らねばならなかったところはあるんですよね。

――あ、そういえばDDTも『ハッスル』寄りですよね。

AKIRA ああ、DDTはそうでしたね。『マッスル』に出させてもらったことはあったんですね。あれはなんだろう……下北沢でやって、その翌日に新木場で同じことを繰り返した回があったんですよね。

――お芝居だと、あたりまえの再演ですね。『マッスル』って事前の稽古はあったんですか?

AKIRA もちろんです。何回か……いや、1回だけだったな。そこはまあ『マッスル』は演劇っていう触れ込みでやってましたからね。お客さんもそれなりに演劇だと思って見に来てましたから。そこは許容範囲だったんじゃないですかね。そのわりにやるたびに超満員だったりしてましたしね。

――『マッスル』は毎回ネタを絞り出すのは大変だったみたいですね。SMASHでは、JJジャックスの元パートナーだった飯塚(高史)さんと対戦されました。

AKIRA あっ、久しぶりに飯塚くんとやりましたね。

――それは誰のアイデアだったんですか?

AKIRA もちろんTAJIRIだと思います。だいたいTAJIRIと映像プロデューサーの太田(空)さんで意見を出し合ってるんですよね。太田さんのセンスがまたバッチリすごくて。だからTAJIRIがW-1に行ったときも太田さんのことを熱望してましたからね。制作に入ってほしいみたいな。いま太田さんはどうしてんのかな……。

――それで長年の時を経て、飯塚さんとのシングルマッチが実現して。

AKIRA いい試合でしたね。飯塚くんとまともに試合をすると、そんなに外れることはなくて。シングルの機会自体がじつはそんなになかったんですけど。海外遠征に行く前の若手時代に『夢☆勝ちます』でやったことがあって、とってもいい試合だったんですよ。そのあとJJジャックスで仲違いしまして。まぁ、あの仲違いもいま考えると、もしかしたら新日の制作サイドとしては自然発生的にケンカ別れさせたかったのかもしれませんね。それをストーリーの仕組みの中でやっちゃうと、ヘタな芝居するなよって感じになるので、わざと周りが焚き付けてた……っていう部分もあるのかなと。

――昔の新日本はきっかけがあるにせよ、自然発生的な動きを待ってるところはあるわけですね。

AKIRA そこはそうだと思いますね。

――久しぶりに飯塚さんと試合をしてどうでした?

AKIRA まぁ、あいかわらずですけど。なんていうのかな、エンタメ的にやったら盛り上がるんだけど、どうしても飯塚くんとしては譲れないところがあって……そのへんの違いはありましたね。「あぁ、やっぱり、こいつは飯塚だわ」と。そこは「まあ、いいや」になりましたけどね(笑)。

――それはSMASHやAKIRAさんが望むことに飯塚さんが応えてくれなかった?

AKIRA というか小さなニュアンスですね、試合の中の。ただ、大方はやっぱりよくやってくれたなみたいな感じでしたよ。

――それは戦った者にしかわからない領域なんですね。

AKIRA そうですね。「ここをもっとこうしたほうがお客さん的にも気持ちよかったのにな」ってところがあっても、プロレスは格闘技であるという路線を踏襲すると「それをやっちゃダメだぞ」っていうところも出てくるんですよ。

――いくら盛り上がるとはいえ。

AKIRA 「プロレスを貫かなきゃいけないんだ」っていう彼の思想ですね。JJジャックスのとき、いつまでも交わらなかったのは、そこなんですけど。

――あんまりスイングしちゃうとよくないってことなんですか?

AKIRA うーんと、お客さん重視のノリになるといけないのかな。だからそっちに行っちゃうと……という考え方があったりしますね。まぁでもあれだよね、思うとそんなに仲悪いわけではなっかったんだけどね(苦笑)。

――べつに大ケンカしてるわけではないんですね。

AKIRA えぇ。そこはプロレスの持って行き方の違いですからね。ポリシーの違い。だからやればおもしろい試合はできたと思うんですよね。新日時代は会社が作ろうとした筋書きのあるドラマ、そこで役割や配役を決められちゃうとうまくいかないと感じたんでしょう。それであくまで自然発生的なケンカ別れをしてほしかったんでしょうね。だから焚き付けられたんだと思います。

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