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【こじらせU系】関根“シュレック”秀樹「Uインターが新日本に負けるとは思わなかった」

UWFの熱を浴びて人生を変えられた方々にあの運動体を振り返ってもらう「こじらせU系・第5弾」。今回は関根“シュレック”秀樹!(聞き手/ジャン斉藤)


――昨年の大晦日RIZINでいえば、“大晦日格闘技”の重みを一番知っているのがシュレックさんだったなという印象でした。

関根 ありがとうございます。でも、いろんなスタンスの選手がいていいと思うんですよね。全員が全員、俺みたいだったら、それはまたおかしいし(笑)。

――ハハハハハハハ! 暑苦しい感じになっちゃいますね(笑)。

関根 やっぱり、天心選手とか、昔の大晦日を知らない若い世代がいてこそ、こうやって格闘技がどんどん発展していくわけですから。

――天心選手の場合も大晦日に試合をして、RIZINを卒業したいというこだわりが強かったですし、選手によって、大晦日の思い入れは違ってくるんでしょうね。シュレックさんの場合はそれこそ『猪木祭り』の頃からですよね。

関根 そうですよ。そして、その前からの流れから見てますからね。新生UWFの崩壊、そして3派に分かれて、PRIDEが誕生して……という。そこからの話になっちゃいますから。

――だからこそ記者会見での涙だったわけですけど、RIZINからはどんな大晦日のオファーだったんですか?

関根 はっきりとは言われてないんですけど、次はスダリオ剛選手の相手というプランはRIZINにあったと思います。12月にDEEPのほうで試合を組んでもらおうとしても、「関根さんは大晦日がたぶんあるでしょ」って。

――DEEPが気を使ってくれたわけですか(笑)。

関根 実際10月のRIZINでスダリオ選手との試合をオファーされたんですけど、その前に大日本プロレスの関本大介さんとの試合があったんで、先のオファーを優先して断って。で、スダリオ選手がケガをしたと聞いた瞬間、シビサイ選手とやるかもなと。

――そして実際にシビサイ戦のオファーがあったんですね。

関根 「もうないのかな……」って思い始めたときに電話がかかってきて。こっちからすれば「どんな相手でもやります!大晦日に出られるんだったら」と。夢見心地ですよねぇ。「この話は本当なのかな……」という(しみじみと)。一方で「相手はシビサイか、厳しいな」。スダリオ選手は戦力グラフでいうと、いびつじゃないですか。作戦がすごく立てやすいんですよ。シビサイ選手だと、寝技やグラップリングに関しては俺のほうが上だけど、身長、体重、若さ、リーチ、打撃力とかすべてが劣ってる。厳しい相手だなって。

――大晦日の舞台に立てることはうれしいけれど、試合に対する不安は大きかったんですね。記者会見で涙を流すことになるとは思ってましたか?

関根 涙は出てくるんだろうな……と思ってたんだけど、泣かないように違うことばっか考えてて。前日から大晦日のことを思うと涙が出そうになる。だってあの会見のあと、帰りの新幹線でずっと涙を流しながら、弁当を食ってたんですよ。

――怖いですよ(笑)。

関根 涙が止まらなくて。ツイッターでエゴサーチすると、やっぱり40代ファンがみんな感動したと。そういう言葉でまた涙が止まらなくて。50年分ぐらいの涙を流しましたよ(笑)。

――それはもう大晦日格闘技に出ることはないだろうな……っていう諦めもあったからなんですか?

関根 そもそもファンのときは「大晦日に出たい」なんていう感じじゃなくて、「もし俺がああいう場に出たら」という妄想みたいな感じですね。夢や目標でもないです。格闘技を始めてからも2回オファーもらってるんですけど。警察官のときに『Dynamite!! 』ですね。でも、そのときは上の許可が出なくて、もう縁がないんだなっていう。

――公務員だといろいろと制約が……。

関根 警察官をやめたけど、MMAの成績も低迷してたし、選ばれるわけはない。去年クレベル(・コイケ)が出たんですけど、クレベルっていうのは自分にとって道場の中でのライバルなんですよ。お互いにガンガン練習でやりあうし、そのライバルが大晦日に出るってことで練習も手伝って。彼の活躍を横目で見るわけじゃないですか。いいなあ……と思って。

――ファン時代からの思い入れと、格闘家としての目標もないまぜになったことで涙だったんですね。

関根 若いときにUインターに入りたかったけど、団体が活動停止して。代わりに警察に入って、つらい思いをしたろ。いろんな思い出が走馬灯のように……。

――それが令和に実現するんだから人生って面白いですね。

関根 こんな歳を食ってから。出られたのはヘビー級であるということ、仲間が活躍してるボンサイ柔術、あと「元・警察官」という肩書きもあるし、年齢もひとつのキャラクターというか魅力のひとつかなと。

――逆に昨年はクレベルが出られなかったんだから人生いろいろですね。

関根 そこもまた、いろいろ言われてますけど、誰も悪くないんですよ。自分が全部、聞いたところ、あいだに入った人はクレベルのために動いていたし、RIZINはRIZINという舞台を世間に届けるために一生懸命やっている。クレベルはクレベルで、選手としてRIZINに出たい。

――本来だったらどこかで折り合わなきゃなんないけど、折り合えなかったケースってありますよね。

関根 またクレベルはRIZINに戻れると思います(この取材はクレベルのRIZIN静岡大会出場発表前に収録)

――シュレックさんの入場曲は大晦日だけ「UWFのメインテーマ」でしたね。

関根 やっぱりRIZINの源流はUWFなんで。一番使いたい入場曲だったんですけど、自分はUWFの人間ではなく、ただのファンですから。だけど、本当に一番いい舞台で、1回だけ使いたいなと思ってて。

――気軽に使うのは恐れ多い曲ってことですね。

関根 そうですね。UWF解散後は山崎(一夫)さんが使ってましたけど、それ以外で使われたのは、あれぐらいじゃないですか。リングスKOKの田村潔司vsヘンゾ・グレイシー。

――グレイシーとの対決に臨む田村潔司がUのテーマで登場して日本武道館が大爆発!

関根 あの光景を見たら使えないですよ。会場中の盛り上がり、観客の手拍子。そうそう使えない。 自分が命を懸けられるこういう舞台だからこそ使えるし、使ったからには「負けるときは死ぬ」覚悟はありました。船木誠勝さんがヒクソン戦で白目むいたけど、あれは本当に死ぬつもりでやってたから、ああいうかたちになったわけですよね。すべての生命エネルギーがなくなるまで動いて、戦い続けるつもりでした。

――あのジャーマンは気持ちで投げたところはあったんですね。

関根 絶対ジャーマンで投げたいって思ったんですよ。ジャーマンで投げれたら、百歩譲って負けてもいいかなって。

――ヘビー級の試合でジャーマンで投げるってそれくらい大きなハードルですね。

関根 自分は本当にゲーリー・オブライトが大好きで。メッチャかっこよかったですもん。みんなボッコボコ投げられて、田村潔司ですらボッコボコに殴られて。

――「オブライト」という名前がジャーマンに付いちゃうのは、いまだにインパクトあるっていうことですもんね。

関根 仙女の橋本千紘さんですよね。「オブライトを知らなかった」みたいで、オブライトの現役時代を知らない子に受け継がれたってすごいですよね。

――シュレックさんは記者会見で泣いて、「UWFのテーマ」で出てきて、ジャーマンで投げ飛ばして、すべてやり切ったうえに勝っちゃうんだから、すごいですよ。

関根 自分としては絶対に勝つつもりで。だからもう勝ったあとのマイクまで考えてあって。

――だからスラスラと「勝って言いたかったことは3つある。1つはUWF、プロレス最強! 2つ目はお正月でも働いてる警察官最強! あとね、40代、50代、30代、60代もまだまだ平成生まれに負けないね。昭和生まれ最強! もっと言いたいのは俺みたいなアラフィフのオヤジでも日本最強に諦めなきゃ、根性があれば勝てるんだよ。病気があって、困難があっても諦めずに生きてればいいことあるから、悩みがあったらオレに言ってきてや!」と。そういう気迫にシビサイ選手もやられちゃった感じですね。

関根 考えてみると、そうなのかなって。お互いに疲れてるのもわかるし、ダメージもあるのに「なんでこのオジサンはインターバル中に頑張れって笑いながら言ってくるか」と。

――シビサイ選手からすれば怖いです(笑)。

関根 怖いですよね(笑)。「もっともっといい試合しようぜ!」ってことで励ましてたら、セコンドのマルキーニョスに「早く帰ってこい」って連れてかれて。ボクシングでもあるじゃないですか。最終ラウンドが始まる前に健闘を讃えてハグしてから始まるとか。そういう文化が柔術にもあるんでね。

――最後は根性勝ちですよね。

関根 それとヘビー級は、大砂嵐、ボブ・サップを見ても、筋肉量があると要求される酸素の量が多いんですよ。もちろん乳酸もたまるんですけど、酸素がないと苦しくて手足が動かない。これはとにかくトレーニングするしかないですよね。ボンサイはサトシやクレベルの彼らは普段は普段80キロ近くあったりするし、その人たちに合わせてずっと動いてるんで。俺もヘビー級といえど一緒の練習をやるので、動けるスタミナはあったんですよね。ヘビー級の人たちだけで練習してると、どうしてもそこに踏み込めないのかなと。本当にドロドロになるまで練習しますから。

――シュレックさん、ずっと呻いてましたね。怪獣じゃないかっていうぐらい(笑)。

関根 プロレスの呼吸ですよね。関本さんなんかずっと声、出してるじゃないですか。

――プロレスの呼吸だったんですか!

関根 そうです(笑)。これ、マネする人いないから言ってもいいと思うんですけど、意外とスタミナが持つんですよ。ボクらヘビー級ってすぐバテがちだから、呼吸が浅くなっちゃうんですよ。酸素を取り入れるためには、まず息を吐かないとダメなんです。肺の空気をいったんしっかり出してから、すっと酸素を取る。これが浅い呼吸だと、少ししか酸素が入らない。しっかり呼吸することが重要で。

――藤波さんや蝶野さんも理にかなってた!(笑)。

関根 まさに藤波さんです。去年、一昨年ですかね。プロレスファンのオジサンが道場に入ってきて、藤波さんの呼吸をやってたんですよ。それを茶化してマネしてやってたら、けっこう動けるなっていう(笑)。

――デメリットってあるんですか?

関根 デメリットは、若い子から見ると笑える(笑)。

――ハハハハハハハハ! 大晦日格闘技は昔から現場でご覧になってきたんですか。

関根 そうですね。よっぽど抜けれない警察の仕事が入ったりとかしないかぎり。大晦日が非番、当直明けになるように調整するんですよ。

――最も印象に残っている大晦日ってなんですか?

関根 やっぱり『やれんのか!大晦日!2007』ですかね。

――ああ、ボクも『やれんのか!』ですね。オールタイムベスト興行です。

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