R-1グランプリ2024での吉住のネタについて
お笑いネタの感想は通常大きく分類して「面白かった」と「面白くなかった」2つに分かれるだろう。
当然な二択のように思えるが、もう一つ「解らなかった」という感想もありえる。
「面白くなかった」でもあるが、自分が理解できてないだけで何かあるはずだという「保留」である。
そして、吉住についてはそのような難解さは無いと筆者は考える。
そもそもピン芸は「設定出オチ」になりがちだが、こと吉住のそれにおいては、冒頭で丁寧に「どうだ?このネタいい設定だろ?」で始まり、それを理解した私はその瞬間にだけ若干の面白みを感じるが、それ以後はその設定に沿った演劇芝居に付き合うことになり、氏のそれは大概「ホラー」の方向に着地しようとする。そう、氏の場合には「怖かった」という感想もありえるだろう。
ところが私は上記のどれでもない感想を持った。
「そんな奴いねえだろ」である。
もちろん、お笑いにおいては「あるあるネタ」を除けば当然のことながらほとんどのボケの役割は「そんな奴いねぇだろ」だ。それにも関わらず「面白くない」を飛び越え、そう思ったのである。
そして、そんな特異な感想を持った人が少なくなかったことが、大会終了後に氏の「デモ活動家」がSNSで炎上したことで明らかになった。
端的に言えばデモ活動家を馬鹿にしているという印象を与えたのだろうが、たしかにその点については判断しかねる。
「デモ活動家ってこうだよね」なのか「こんなデモ活動家おらんやろ」どちらのアティテュードも持ちうる寸劇に、前者ならば当事者にとっては笑い事ではないだろう。それは二本目の鑑識官も同様である。
後者だとしても、ザコシショウの誇張しすぎた真木よう子における「キンコンカンコン」のような絶妙な遠距離のエッセンスを、デモ活動家や鑑識官に見出し誇張していたのなら、SNSの炎上もほどほどに、私も「そんな奴いねぇだろ」より前に「面白くなかった」と思えたことだろう。