「究極の肴」 #シロクマ文芸部
雨を聞くから邪魔をするなだって? お気楽な旦那を持つと苦労する。悠長なことを言っている余裕は私にはない。生後10日の娘を抱えて明日食べる物の心配をする方が先だ。
「おい。酒とアテ」
私は冷凍庫から肉を出してフライパンで焼き、野菜を添えて夫に出した。窓にもたれて居た夫は私が出した発泡酒を見て舌打ちをした。が、焼肉を見て、
「お! 肉があったのか。うまそうだな」
「はじめて、焼いたの。味見はしていないけど」
私は娘に母乳を与えながら、食べ始めた夫を見ていた。口にあったのか、あっと言う間に平らげている。
「さっきの肉、レバー系? 」
「この子を生んだときの胎盤を焼いたのよ。味はどうだった? 」
空腹が満たされたら、また、窓際で悠長に、雨を聴いたらどうですか?
顔色が変わった、無職の新米パパさん。
#シロクマ文芸部
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?