第26話 データ喪失と復旧 | Saito Daichi
使用していたノートPCが古すぎて、執筆や動画データが全て吹き飛びました。
バックアップを取ろうと思っていた矢先でした。
当時はWordではなく、マイナーなフリー文書作成ソフトを使っていたので、内部バックアップなどの機能はありませんでした。
復旧方法を調べ、色々試し、フリーの復旧ソフトも試しましたが駄目でした。
データ復旧会社を調べ、大手なら問題ないと思い、WEB広告で一番上に来る会社に駆け込みました。
データの取り出しが難しいUSBメモリに文書を保管していたので復旧が難しく、他の会社では無理でした。
「いくらまでなら出せますか?」
足元を見られていたが、他では断られていたので依頼しました。
データは戻らず、依頼料の24万円も戻りませんでした。
データ復旧協会というものがあるらしく、電話して相談したら「ある意味で」有名な会社でした。
今では良い勉強になったと解釈しています。
半年近く書いた物が全て消えた後、再開しようと何とか気持ちを奮い立たせることにしました。
バイクであてもなく走ったり、気晴らしに運動したり、音楽を聴いたりしましたが、善人のふりをして何十万持っていかれた事実に、悔しくてしばらく寝付けませんでした。
今思えば、自衛官時代に人並みに苦労をしながら貯めたお金を、悪質業者にいとも簡単に取られ、納得できなかったのだと思います。
そんな時、何となくハリウッド映画を観ました。
人間、色々とやり尽くすと原点に立ち返るんだな、と思いました。
私は『ロッキー』を何度か見返すことにしました。
『七人の侍』も借りました。
『ロッキー』や『ランボー』を演じたシルベスター・スタローンは当時、売れない俳優として貧乏な生活を送っていました。
自分で『ロッキー』の脚本を書き、それが大ヒットして最初にやったことは、貧困から売った愛犬を取り戻したことらしいです。
インタビューで「吊るした牛肉を殴り過ぎて拳が平らになってしまった」と聞いて、思わず笑ってしまいました。
当時のアメリカではベトナム戦争での厭戦気分から、「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる悲しい映画が続いていました。
ジェームズ・キャメロン監督と同じく、好きな監督であるオリバー・ストーン監督が自身の実体験をベースに創った『プラトーン』などを代表とするベトナム戦争の映画です。
それらの雰囲気を打ち壊し、アメリカ人に再びアメリカンドリームを呼び戻して元気を与えたのが『ロッキー』でした。(91年の湾岸戦争の勝利で「強いアメリカ」の自信を取り戻し、同時多発テロからのイラク・アフガン戦争でまたアメリカ国民は気落ちしていくことになるのですが)
思えば『トゥルーライズ』も94年で、テロが題材ですが明るい雰囲気の映画でした。
本当の詐欺とは、あからさまに分かる詐欺ではないと学びました。
法律の間を縫うような犯罪だから、どうすることもできないのです。
私はこの一件を教訓に、民事と刑事に関して勉強を始めました。
自分の身は自分で守るしかありません。
調べてみると案外、裁判も単純でした。
今後は直接出向く必要もなく、リモートで民事裁判が行われていくそうで、判決もその際に出るようです。
恐らく、1日で裁判が終わる60万円以下の少額訴訟のリモート裁判が、今後は増加していくことでしょう。
自分事になるまで、ここまで法律を調べたことはありませんでした。
そこで動画データだけではなく、「note」というブログにも進捗を書き残しておこう考え、これを立ち上げました。
データ保存だけでなく、Instagramも開設し、発信物を残そうと思いました。
もちろんSSDとHDDの予備ストレージをどちらも購入し、定期的にバックアップを残すようにしました。
結局、人は自分の尻に火が点かないと動きません。
私はこの時、かねてから考えていた作品に公安の要素を入れて、もっと身近なものにしようとしていました。
なぜ日本にはスパイ防止法がないのかを調べていました。
そして民事から刑事に食指を伸ばし、逮捕された後のリアルな様子を調べている内に、日本の戦後から続く「人質司法」のシステムを知りました。
私はそれまで「日本は比較的安全で医療が発達し、治安が良い国」として住んでいましたが、一気に恐ろしくなりました。
悪いことをしなければ捕まらない。
ですが、それが冤罪だった場合は?
友人や大切な人達をこの制度から守るには、どうすれば良いか。
最悪なことに、これらを総括した教科書は存在しません。
誰かが作るしかありません。
同時にこれからの就活生や学生、社会に出る子供達がこれからの日本経済で生きるのに耐えうる作品を創ろうと考えました。
自分を救ってくれたように、誰かのための『ロッキー』が必要です。
そのまま書ければ楽ですが、書くべき専門用語とあえて書かない方が良い部分を分ける必要があります。
何とか中学生レベルにまで落とし込むのは、書く側にかなりの負担が掛かるとは知っていましたが、それでもやる意味があると考えました。
賢い子ほど、今のこの国で悩んでいる気がしました。
情報過多で、取捨選択能力も求められる時代で、若い子に手に取ってもらえる元気と勇気が出る作品がベストです。
自分と同じ、ルサンチマンにさせるような思いから拾い上げなければ、いつか社会に牙を向き、自身と周囲を破壊し尽くしてしまうでしょう。
データを失い落ち込みましたが「今まで以上に面白い展開で、絶対にそれ以上稼いでやろう」と考え直し、一から書き直しました。
話の内容も色々と変わったので、それで良い部分もあると考えるようにしました。
年もまたぎ、時代は2021年の中頃。
確定申告などを終えて勉強と運動に明け暮れていました。
執筆が知識不足で上手くいかない時は、自分を図書館やカフェに閉じ込めました。
執筆は思い悩むこともありましたが、三幕構成の二幕くらいには入り込んでいました。
来年くらいには何とか出版しないと、貯金も消えそうでした。
バイクは売りました。
嫌な夢も見て、運動を怠ると負の感情に引きずり込まれそうでした。
そんな時、作中のとある場面で困りました。