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【#158_研究メモ】 組織開発研究に関連する論文数/ 引用数から見た”3つのフェーズ”とは?~Lis(2020) Managing Organizaiton Development からの学び vol.02
Lis(2020)では、1970年から2018年までに出版された、組織開発に関連した2463本の論文につちえ、分析を行い、その論文数や論文引用数の年次推移を分析し、大きなトレンドとして、3つの期間を明らかにしています。
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特に、論文の引用数から見ると、時期は大きく、
Phase 1:1970年から1992年
Phase 2:1993年から2004年
Phase 3:2005年から2018年
の3つに分かれると言われています。
本論文の中では、Phaseの変化について、あまり細かな背景の分析はないのですが、振り返ってみると、
1990年代は、冷戦の終結(1991年)や、EUが誕生(1993年)、WTOが発足(1995年)するなど新たな世界秩序の形成、インターネットの普及による情報革命(インターネットの利用開始:1991年~、Windows 95の発売:1995年)、多国籍企業の成長と、グローバリゼーションの進展が特徴的な時代でした。
2000年代は、9.11のテロを契機とした安全保障環境の変化、IT革命の進展、新興国の台頭、気候変動問題への取り組みなど、ビジネスにおいて考慮しなければいけない要素が、大きく拡張した時代なのかなとも思います。特に、インターネットの普及やスマートフォンやデジタルディバイスの深化により、私たちの暮らしやビジネスの進め方も、大きく変化し、価値観の多様化が進みました。
本論文の分析は、2018年末までの論文出版データが使われているので、コロナ禍の要素が考慮されていないのですが、それも踏まえると、2020年以降は、また特徴的なトレンドが見えてくるかも知れません。
上記に鑑みると、この時代、ビジネス領域(地理的・サービス的)の拡張や、組織のあり方、私たちの働き方、社会的な位置づけなど、様々な場面で既存の”境界”に揺らぎが起きていました。その際、考慮しなければいけない要素が増え、複雑性が高まり続ける状況が続いている中で、組織の健全性・効果性・自己革新性等について、再検討が求められ、組織開発への注目が集まるのかもなと思いました。
組織開発の研究や実践に取り組む上で、目の前の現場で起きている課題に真摯に向き合うことはもちろんです。ただ、それと同時に、一歩引いて、課題の背景ある社会的な変化がどの様な遠因になっているか?についても、感度を高める必要性を、本論文を読む中で感じました。