役目を終えた役割を手放し、ありたい自分へと近づく、不安に満ちたプロセスを乗り切るためのガイド~石山・片岡・北野(2024)『キャリアブレイクー手放すことは空白(ブランク)ではない』からの学び
発売から少し時間が経ってしまいましたが、石山先生・片岡さん・北野さんが書かれた『キャリアブレイクー手放すことは空白(ブランク)ではない』、拝読しました!!
人生100年時代において、生涯でいくつもの大きなトランジションを経験するであろう私たちにとって、「キャリアブレイク」を様々な角度から扱う本書は、不安な道筋を照らしてくれる松明の様な、とっても重要な存在になると感じました。
本書のなかで、キャリアブレイクは、
と定義されています。
自らが選択して選んだ日々の仕事や家庭の役割であっても、自分自身の●●すべき!という固定的な価値観や他者からの期待役割によって、いつのまにか身動きがとっても重くなってしまうことがあります。そんな今の自分にとって、必ずしも望ましいとは言えない状態を“手放す”ことで、新しい自分の理想に向かい歩みを進めていく。
不安はあれど、たくさん背負ってしまった大事な荷物を一度”手放し”、これまでのフェーズに区切りを付けない限り、新しいフェーズへとは動いていけないのだなと感じました。
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本書には、キャリアブレイクを経験された方々8名のプロセスから、確認された15の行動や経験を整理した「共通プロセスの総括図」(p.182)が記載されています(8名お一人おひとりのエピソードもとってもすてきで、読み応えあります。共感多々です)。
そのプロセスを拝見していると、まるまんま自分のことを描かれているのではないかと、笑ってしまいます(笑)
自分自身のキャリアを改めて振り返ってみると、大きなキャリアブレイクが2回あるなと思いました
・最初が、M&Aコンサルを卒業しようかと思い始め、研究の世界(修士)に戻り、仕事としてもフリーランスになってからの期間
・2回目が、勤めていた大学を辞めようかと思い始め、再度、大学院(博士)にチャレンジしようと思ってからの期間(道半ば[ 沼沼 苦笑])
です。
自分の場合は、初期の傾向として、
社会や他者への評価への捉われ
ありたい自分と実際の自分の乖離
精神的な不調
が顕著にあり、
自己のルーツ探求や
他者との協働による自己棚卸
を経る中で、徐々に、
ありたい自分の概要認知
が進み、
多用な人々との人脈形成を通じて
より、ありたい自分に近づいていく、というプロセスを取りがちだなと感じました。
キャリアブレイクにある時々は、五里霧中というか、先が見えず、自分が進んでいるのか/ 後退しているのか、攻めているのか/ 逃げているのかもよくわからず、不安や責める気持ちでいっぱいだったのですが、「共通プロセスの総括図」を見て、自分自身が歩んできたプロセスがハラオチし、そういうことかと、まるっと受容できた気がしました。つらい中でもたくさんのアクションを起こし、学びや気づきを得てきたのだなと。
もっと早く知りたかったです!(笑)
自分自身はもちろん、絶賛キャリアブレイクを満喫中の友人や、これからキャリアブレイクを迎えるであろう方々に、読んでいただけると、これから起きるであろうプロセスに向かう上での、一つの指針として、光が差すかと思いました。自分ひとりで進むにはなかなかに苦しいプロセスですので。
石山先生が本書の中で書かれている、
という言葉も、味わい深いです。
ついつい、目先のわかりやすいゴールに達成することが人生の目的だと捉えてしまいがちですが、”修行の旅”は終わりがなく、永遠に続く。であればこそ、逆説的ですが、ありたい自分に近づくために必要だと思える、目の前のアクションを一つひとつ一所懸命に取り組んでいくこともまた大事ではないかと。キャリアブレイクというトランジション期の自分が置かれている状況をメタ的に認知できたからこそ、そう思えるのかもしれません。
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本書は、著者のみなさんの役割分担も絶妙だなと感じます。
・石山先生が、キャリアブレイクの定義とその周辺理論についての説明、日本で受け入れられにくい構造的要因について広い観点から整理され、事例とそこから見出された共通プロセスについてのまとめ、
・キャリアブレイクを研究された片岡亜希子さんが、キャリアブレイクを支える概念・中心理論(「離職期間」「転機」「自己効力感」)を、
・キャリアブレイク研究所を運営されている北野貴大さんが、現場実践の事例(キャリアブレイクという文化を日本で定着させるための様々な取り組み)
が、紹介されています。
研究知見を、現場で活用できる”活きた知恵”として活用していくために、このような共同執筆の座組みはとても面白いですし、実践的だなと感じました。自分もいつか挑戦してみたいところです!
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キャリアブレイクについての学術的・実践的な理解はもちろん、自分自身の内省や、今後の研究の届け方についても、たくさんの示唆をいただけた一冊でした。
著者のみなさま、すてきな学びの機会をありがとうございました!