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【#104_イベントメモ】 研究者と実務家の間にある”溝”は、どうして生まれるのか?~Funleash主催 出版記念セミナー「人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップ」 からの学び

Funleash主催 出版記念セミナー「人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップ」—研究と実務の架橋を探る に参加させていただきました!


江夏幾多郎先生、田中秀樹先生、余合淳先生による新著『人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップ—日本における関心の分化と架橋』(有斐閣)は、

日本における人事管理の研究や実務そのものの歴史ではなく,研究者と実務家の関心の歴史を記したものである。とりわけ両者のずれ(リサーチ・プラクティス・ギャップ)に関する考察を通じ,研究者と実務家の望ましい関係性について,将来展望を行う

をテーマに、編まれた書籍です。

1970年代から現代に至るまでの、文献を丁寧に整理され、人事管理の研究・実務において、どのような問題意識が重視されていたのか?をまとめられた労作です。時代の変遷とともに移り替わる、研究テーマのトレンドや、 キーワード、被引用文献を見ているだけでも、大変勉強になります。

本書の知見についても、たくさんご紹介したいものがあるのですが、まずはイベントの振り返りを(笑)

▽▽▽

昨日のイベントは、「書籍の鍵となるメッセージを改めて紹介し、研究と実務の建設的で創造的な関係をどう築いていくかを、単なる議論だけでなく、実際にその関係を編み出す場を皆さんと一緒に考察したい」というテーマ設定でした。

著者のみなさんのプレゼンテーションに加えて、対談や、クロストーク、イベント参加者間での議論と充実した内容になっていました。

【【プログラム概要(敬称略)】】
<第一部>書籍の紹介
登壇者:江夏幾多郎、田中秀樹、余合淳
<第二部>対談
登壇者:江夏幾多郎、中島豊
<第三部>クロストークおよび会場との議論
登壇者:江夏幾多郎、中島豊、田口光
ファシリテーター:志水静香
参加者:グループで議論

自分が知る限り、研究者と実務家がお互いの関係性について、”良好ではない”ということは、陰ではよく話題に上っていましたが(笑)、表立って、それがテーマとして、語られる機会は決して多くはなかったのかなと思います。

個人的には10年弱、企業で働いてから、改めて研究活動をしたのもあり、研究と実務の関係性については、関心が高いテーマです。

本テーマを扱う機会を創ってくださった、本書を執筆くださったみなさま、Funleashのみなさま、ディスカッションをご一緒してくださったみなさま、貴重な機会を創ってくださり、ありがとうございました!

研究と実務の関係性についての理解だけでなく、研究者のあり方につていも、たくさんの学びをいただけました。

みなさんお忙しいのは重々承知なのですが、お互いのニーズや貢献の仕方、行動原理についての対話をする、こんな時間を増やしていくことが重要だなと思いました。現状は、お互いのことを知っているようで知らない、なんとなくの想像で話してしまっているので・・・ まずはお友達から見たいな(笑)自分も、研究者と実務家が一緒に学べる場(論文やHandbookの読書会等)をつくることで、少しでも貢献できたらなと思います。

個人的には、研究者の方々が一つの知見を生み出すために、どれだけ大きな苦労をされているかも知っているので(笑)、生み出された知見が、少しでも現場で役立てていただけたら嬉しいなという想いがありますし、実務家の方が、社内でご自身の想い(施策)を形にするために、いい意味で研究者をしたたかに活用してくださるといいのに、とも感じます。

ずっと精神的に引きこもっていたので、Funleashさんのイベントは久しぶりに参加させていただいたのですが、実践知だけでなく、学術的な知見の活用についても志向されているFunleashさんは、実務家と研究者を結ぶ、大事なプラットフォームになっていますね!!
伺えてよかったです^^

▽▽▽

家庭の事情で、残念ながら第1部が出られなかったので、第2部からになりますが、個人的に印象に残っているみなさんのご発言は、下記の通りです。
※録音していなかったので、もし記述に間違いがあればご指摘ください・・・・

[中島さん]

「人事領域に関わりだしたとき、背景にサイエンスがなかった。担当者は、思い込みと今までやってきたことを繰り返していた。そんな人たちは、科学的な知見が広がることで、”変わってもらったら困る”という想いもあった」

「経営学から、行動経済学の方に目が向いている。そうすると、研究者のみんなが、パンのための学問になっているのでは?」
※パンのための学問:生活の糧を得るために学ばれる学問

「経営とは、たくさんの選択肢から一つを選ぶ必要がある。選択肢が増えることで、よりいい意思決定ができる。研究者と実務家が同じことを考えているとしたら、選択肢が増えない。”考えていることが違う”というのも、それはそれで大事なこと」

[江夏先生]

「普遍的な知恵って本当にあるのか?とも思う。会社の中で普遍的な実践に取り組もうと思うとズレる。
何らかの形で、さまざまな経験をカスタマイズして、現場に合わせていく必要がある。 ・・・科学的知識は、みなさんの文脈からしたら一般的だけど、普遍的ではない」

「いい数理モデルをつくるためには、いい現場感覚がないとダメ」

「現場に入り、分析したことを、異なる言葉で表現して、違う職場・世代でもわかる言葉で伝える。アカデミックってそういうこと」

「現場について考えると、現場で考えるは違う。現場で考えることが大事。それが、ささやかな希望」

「いい研究は、問いが8割。想定した答えがでなくても、手順が良ければ、確かにそうだよねとなる。
実務側は、答えを求める。・・・ただ、本質に肉薄しようとしたら、問いが大事になる。なぜそうなっているかを問うていく」

[田口さん]

「ベンチャーで、新規事業に従事し、何から何まで自分でやった。そんな中で、再現性を高めるための、手がかりが欲しかった。理論に出会うことで、説明が付くようになる」

「アカデミックな議論や知識は、実務を考える上でも大きな支えになる。研究と実務の接合はあると思う。それを追い求めることは、ロマンがあっていい」

[志水さん]

現場担当者がマネジメントを巻き込み、学術的な知見に基づいて施策を展開していく上で、「経営者に誰が言うかは大事。経営者が耳を傾けてくれるためには、担当者のあり方が重要になる。どれだけ経営者のビジョンを理解した上で、データを共有しないと、勘に触ることになる」

[田中先生]

「研究は、過度に抽象化しがちなところがある。 型がないと、型を破れない。ただ、型を作ろうとすることを、研究者は考えすぎていたのかもしれない」

[余合先生]

「社会に出て仕事をする際、問いがわからないと、答えはでない。・・・良い問いを立てて、実証することはセット。研究者にならくても、研究的な志向を持っておくことは大切」

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いや~ 面白い場でした。イベント中は、「プロレスの場外乱闘」との言葉も出ていましたが、”独特の緊張感”みたいなものも感じました。何か、新しいものが生まれ出てくるときの、いい意味での”不穏な感じ”です(笑)

実務と研究の繋がりを太くしていく上で、両者の歩みよりというか、個人的に大事だなと感じたこともあるので、また別の機会にまとめられたらとも思います。

貴重な学びの機会、ありがとうございました!

#Funleash

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