
【#179_研究メモ】Spiritual Leadershipとは何か?~Fry(2003)からの学び
少し前に、組織開発領域について計量書誌学(Bibliomatrics)的な観点で整理した、Lis(2020) Managing Organizaiton Development: Identifying Research Patterns and Mapping the Research Field という論文をnoteで取り上げました。
その中に、直接「組織開発」という単語は入ってないのですが、組織開発領域で引用数が多い論文として、Fry(2003) Toward a theory of sipiritual leadership という論文が挙げられていました!
組織開発・リーダーシップ・スピリチャル・・・・ 私の大好物なものが揃った論文です(笑)
日本の文脈でスピリチャルというと、現世利益的な、なんか怪しげ感じを受けられる方もいるかもしれませんが、世界最大の経営学会である、Academy of Managementでも、分科会として、Management, Spirituality & Religion(MSR)が存在するなど、経営におけるSpiritualityは、大事な研究テーマとして取り上げられています。
2023年のAOM@Bostonに行ったとき、MSRのセッションにも参加してみたのですが、学会っぽくない、対話が中心のワークショップ的な雰囲気で、驚いたのを覚えています。資本主義的な価値観をベースにした経営が、多くの問題を生み出す中で、カウンター/ 移行期として、どの様な価値観を重視して、経営や組織運営を行っていく必要があるかについて、それぞれの想いを共有する場になりました。
個人的にも、経営の領域におけるスピリチャリティの要素はとても大切ではないかと感じています。経済合理性が追及される中で、よくわからない曖昧模糊としてものは切り捨てられていきますが、現在の資本主義的な価値観のパラダイムではなかなか持続的な運営を行うのが難しくなっているのも事実です。自然や地球、より大きな存在との繋がりや、人とひととの関係性など、経営の中でないことにされているスピリチャリティという要素を、再統合することが、これからますます重要になるのでは?とも感じています。現状、最も“ないこと”にされている、周縁化されている存在に光を当てることは、研究に取り組む上でもとっても重要ではないかと。
そんなこともあり、Fry(2003)は、とっても読みたかった論文の一つです。
▽▽▽
Fry(2003)は、スピリチャル・リーダーシップという概念を提唱し、「内発的動機づけ」の枠組みの中で、ビジョン、希望/信念、利他的愛を統合し、職場のスピリチュアリティや精神的な生存(Spiritual Survival)を支えることの重要性を強調しています。


ただ、”稼げればいい”というわけではなく、仕事に何らかの社会的意味や価値を感じる「召命(Calling)」や、組織の中で、理解され、認められる「帰属(Membership)」の感覚は、、仕事に取り組む上で、とっても重要なものだと感じます。
最近の、組織や個人のPurpose(存在意義)を、探求し、明文化する流れも繋がってくるところがありますね!2024年度は、ある会社さんの経営理念づくりを伴走型でずっとお手伝いしていたのですが、人間が働く上で、自らの頑張りや、提供する製品やサービスがどの様な意味を持つのか? について考えることは、仕事や自己成長に向かっていく上での大きなモチベーションになるよなと、経営理念を策定する対話のプロセスをファシリテーションしていて、強く感じました。
スピリチャル・リーダーシップの観点から見たとき、リーダーは、自分やチームが取り組んでいることと、社会的な意義とを接続し、ストーリーとして魅力的に語れることが重要なスキルの一つとして求められるのだと思います。
スピリチャル・リーダーシップは、これからの経営において、特に経営陣や上位の役職者にとっては、非常に重要な観点を提供してくれる考え方かなと思います。noteでも、何回かに分けて、整理していきたいと思います!