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【#180_研究メモ】 スピリチャリティと宗教の混乱・混同をどう乗り越えるか?~Fry(2003) からの学び vol.02
Fry(2003)では、内的動機付け理論の系譜を組む、Spiritual Leadershipという考え方を提唱しています。
スピリチャリティと聞くと、宗教的なものとの結びつきが強く、職場でスピリチャリティ? と、違和感を持たれる方も多いかと思います。
本論文の中で、”スピリチャリティ”と”宗教”の捉え方の違いが整理されていました。
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スピリチャリティの概念の方が、宗教よりもより広い捉え方がされています。
ダライ・ラマ14世の「スピリチュアリティとは、愛や思いやり、忍耐力、寛容さ、満足感、責任感、調和の感覚など、自他ともに幸福をもたらす人間の精神の特質に関するもの=霊的資質」という言葉が、とてもシンプルでわかりやすいと思います。影響力のある宗教指導者が、こういった発言をされるというのも、とっても意義深いことだなと思います。
グローバル企業で顕著だと思いますが、職場メンバーの多様性が高まり、様々な宗教的なバックグラウンドを持った方が増えているかと思います。本論でも語られていましたが、”特定の宗教的な規範”を重視することは、それとは異なる宗教を信じるメンバーとの間で、分断が生じる可能性もあります。
”特定の宗教”ではなく、より高次のメタ的な「自他ともに幸福をもたらす人間の精神の特質」と捉えたときに、職場におけるスピリチャリティという考え方を語ることに違和感がないのではと思います。スピリチャル・リーダーシップの構成要素となっている、”コーリング[召命]:取り組む仕事の意義について考える”や”メンバーシップ:メンバーの相互理解や承認”といった非常に重要なポイントになってくるかと。
話は少し逸れますが、日本では、国や地方公共団体が設置する学校では、日本国憲法の第20条と教育基本法の第9条の規定により、特定の宗教のための宗教教育や宗教活動はできないと定められています。
”宗教教育ができない”=”スピリチャリティについて語れない”という解釈が進んだときに、上記でダライ・ラマが述べていたような、「自他ともに幸福をもたらす人間の精神の特質」について教える・学ぶ機会が限定的になっている部分もあるのかなと感じています。多様性いの高い集団の中で人々が協働しながら新たな価値を生み出していくためには、個人的にはとても大事な価値観だと思うのですが・・・