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『一千億のif』取材のお話
『一千億のif』は、亡くなった二人の大叔父から着想を得たということを前に書きました(『一千億のif』着想のお話)。
※産経新聞のインタビューでも触れています→こちら
そういうわけで第1話については、主人公たちが祖先の軍歴を調べる部分など、ほぼ実体験に基づいています。これは、小説のための取材というよりは、自分の祖先への義務感に駆られておこなったものでした。
そこから先、第2話以降は完全なるフィクションですが、やはり多少は過去の経験をもとにしており、改めて取材した部分もあります。
第2話でキーになる、明治時代に消息を絶った帝国海軍巡洋艦『畝傍』には昔から不思議な話としての興味をもっていましたが、2作目『クメールの瞳』の取材時にたまたま慰霊碑を見つけたことがあり、これも何かの縁だしいずれはお話にしたいなと思っていたのでした。
今回あらためて訪れ、手を合わせてきた次第です。
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また第2話から登場して重要な役割を担う国立科学博物館は、特定の取材でなくともわりと頻繁に行ってます。なんとなく展示を見てるだけで、いろいろアイデアがわいてくるんですよね。まあ、形になるかどうかは別として。
(いつも行くのは地球館地下3階にある霧箱。宇宙線が通過すると、白い雲の筋ができます。ぼーっと見てるのが好きです)
第3話では大学のキャンパスで幽霊騒ぎが起きますが、ここでは高校や大学時代のことをあれこれ思い出しつつ書きました。
ほら、学校にはありがちでしょう、幽霊話。
僕の通っていた高校は、かつて帝国陸軍の駐屯地だった場所にあり、まだ残っていた兵舎が合宿などに使われていました。当然のように日本兵の幽霊が出るという噂がささやかれていたものです。
大学にも、その手の話はありましたね。
なお、ちょっと前に明治大学の生田キャンパスにある登戸研究所資料館を見学してきたのですが、その際に入らせてもらったキャンパスと、僕の記憶の中にある母校をミックスしてつくりだしたのが、作中の架空の大学、南武大学です。
キャンパスの場面は、執筆中にいろいろと昔の甘酸っぱいような苦いような(正確にいえばほぼ苦いだけなのだけど思い出補正で甘酸っぱくもなっている)記憶がよみがえってきたりして、それなりに楽しく書けました。
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かつてここに存在した第九陸軍技術研究所(秘匿名称:登戸研究所)で
研究されていた秘密戦兵器などについて展示されています。
今回の作品と直接関係はありませんが、たいへん興味深かったです。
そして第4話。じつはここでも大学時代の経験を反映させています。
僕は物理学科の電子物性研究室というところに所属していたのですが、その時にうっかりやっちまったことがあって、四半世紀後にこんな形で生きてくるとは、先生も思わなかったでしょう(その節はすみませんでした)。
ネタバレになるのでこの話はここまでにしておきますが、第4話でそんなようなこと(?)になる施設にはモデルがあって、川崎市内にある「新川崎・創造のもり」というところです。
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中には入れないので外をうろうろさせてもらいましたが(あやしい)、ここはかつての新鶴見操車場の跡地で、まだ残っている新鶴見信号場と隣接してるんですよね。貨物列車とか電気機関車とかが見られます。
作中の描写が甘いようだったら、せっかく現地を見に行ったのについ線路のほうばかり気にしてしまったせいということで。
最後に、第3話にちらりと登場する大学サッカー部の男、「川崎市内にあるJリーグのクラブ」から声をかけられている設定になっています。架空の世界ではありますが、入団後にはぜひ大活躍してクラブを優勝に導いてほしいものです。
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