5年は長いか短いか
ココシバのオープンは5年前の7月15日。ちょうど地元のお祭りの日で、眩しい夏の青空の下、店の前の通りを神輿が練り歩いていった。
「最低5年はやってください」。商店街振興助成金をもらって始めたので、市の担当者からはきっちり釘を刺された。おっかなびっくりではあったが、飲食+新刊書籍+イベントという、当時はまだ珍しかった形態が受けたのかもしれない、店は好調なスタートを切ることができた。
1年半ほど経った頃、新型コロナウィルス感染症が世界的に流行しはじめた。人同士が会って集ってはじめて成り立つような店だったから、それなりにいろいろ心配もしたが、意外と無風で乗り越えたような気がする。
まぁ、いまになってみると、だけれども。
一昨年の12月、店の近くにワークショップ用の場所を、クルド日本語教室さんと一緒に借りた。トルコ語のTOPLAN(集める)に掛け、「スペースとプラン」と名付けた。先日、いまさらながらにこの部門の経費と売上の計算をしたら、月約1万円のプラスだった。3年やれば礼金やら手数料やら最初に買った什器代やらの元くらいは取れる目算が立った。
ベビーカーに乗っていた子が小学校に入った。中2で通ってきていた子が大学に通っている。商店街では畳んだ店がちらほら、そして一方、新しくできた店も…。見なくなった常連、新たに定着した顔ぶれ、思い返せばこの5年はあっという間のようで、とてつもなく長かった。
ろくな計画も気概もなく、なんとなくで始め、すごくすごく遠くまで来た。店がオープンする前に、「いましかない!」と駆け込みで遊びに行ったロシアは、いまや戦争当事国である。こんなことになるとは正直ついぞ想像していなかった。楽しい旅行だったのだ。またすぐ行けると思っていた。
さて、5周年はいつもどおりビールとおつまみでにぎやかにやる予定だが、メインの催しとして、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんをお招きし、「故郷とは何か」というトークイベントを開催する。コロナ禍前 のように、大勢を強引に詰め込んでということができないのがほんとうに残念なのだが、5年間の総決算のつもりで企画した。
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同じ場所で同じ時間に開いていること、店でこだわったのはそれだけだ。そしてたぶんそれは正解だった。私たちがつくった店は、誰かの故郷の一部になれただろうか。
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