S★Labo 6月21日(金)開催 「校外学習の指導の工夫」
~交流及び共同学習の事前・事後指導と配慮~
1 自己紹介(10分)
10名参加
2 話題提供(20分)
(1)中学校特別支援学級の事例
(2)小学校特別支援学級の事例
3 情報共有(30分)
(1)中学校の事例提供より「校外学習への事前学習・事後学習について」
(ア)校外学習への参加を主体的に取り組んでもらいたい!
⇒ 事前学習の工夫で、自分たちで「何が必要か」を考えられるようにする
・公共機関でのルールやマナー
・校外学習に関連する地理的な学習
・校外学習(体験活動)で触れるものの学習
(例)田植え体験→お米ができるまで
・持ち物・当日の服装 ・・・自分たちで必要なものを考え、話し合い活動
で自治的に決めていく。
【工夫】 ①昨年度の写真を見せながらさりげなくヒントにする
②昨年度参加した生徒の意見・感想を取り入れる
③発問を工夫して、生徒に気づかせる
(例)「バスに乗るんじゃなかったかな?」(何が必要?)
④話し合いが活発になるように「○・×スイッチ」を利用して、
普段から発言しやすい環境を作っておく。
※最低限必要なものが出てこない場合は、特学担任が少し誘導して
出させるようにすることもあるが、「あると便利」程度のものは
生徒たちから出てこなくても、“その場で臨機応変に工夫できる
か?”、“事後学習で反省する”などして、自立の視点にたって見守
り、卒業後の進路へとつなげたい。
(イ)事後学習を効果的にして、今後の学習や生活に広げたい!
⇒ 生徒の考えや感想の表現の仕方を選べるようにする。
●事後学習では、事前学習で目標となった狙いに即して、できたかどうか
生徒自身が振り返れるようにする。
●その際、「紙と筆記用具」「PCでタイピング入力」など各自であった
表現方法で書き記せるようにする。
●生徒がまとめたものは、生活単元学習の時間だけで終わらず、家庭に配
付するお便りにも掲載するなどして、今後の生活や生徒の成長を共有で
きるようにする。
●事後学習の後にも、さらに発展的な学習にも取り組めるように、生活単
元の時間と教科学習を計画的に行う。
(2)小学校の事例提供より 「交流及び共同学習の実際」
(ア)急な予定変更などで困らないよう対応したい!
⇒ 週案のやりとり「交流ファイル」で、交流に行く授業を確認
第1段階 : 特別支援学級の週案に、交流に行く予定の授業に特学担
任が○を付け、「交流ファイル」に挟んだものを、児童
が交流先の担任の先生に渡す。
第2段階 :交流先のクラスで作成している週案を、「交流ファイル」
に挟んでもらい、特別支援学級に戻ってきて、特学担任
と、児童で再度、交流に行く予定の授業を確認して○をつ
ける。これを、家庭用と教室掲示用にして、児童に見通し
をもたせている。
(イ)行った先の交流学級で、実りある学習をさせたい!
=児童を「お客さん」にさせない
⇒ 単元に入る前に、特別支援学級で予習できるとよい
(例)●交流先の授業「体育」で跳び箱や大繩の単元に入る前に…
事前に特別支援学級の「体育」で、跳び箱の跳び方や、縄
跳びのポイントなど予習しておく。
●交流先の授業「図工」で作品を作る前に…
事前に特別支援学級の「図工」の時間で、交流先で必要と
なる技能やポイントを予習しておく。
絵具の使い方、木の切り方etc
(ウ)交流をさらに充実させたものにさせたい!
⇒ 交流及び共同学習の授業に参加した直後に、児童は特学担任に、
「今の授業でやってきたこと」を報告する。
●特学担任に授業内容について話をすることで、児童の振り返りにな
る。
●児童の理解度や、つまづいている部分をすぐに特学担任が把握でき
る。
●うまくできたことを褒める!
●うまくいかないことについては、特学の授業で取り上げたり、計画
の見直しなどができたりする
(エ)交流のスタート時は、緊張してなかなかうまく交流できない!
⇒ 「交流希望アンケート」や「初回の挨拶」など工夫をして、円滑に交
流がスタートできるようにしている。
●(3月など)初回が始まる前に「交流希望アンケート」を本人及び
保護者にとっている。
●児童本人から聴き取りをして、不安な点がないか、確認する。
●具体的な交流及び共同学習の授業を決定する。
●クラス替え後、交流授業初回の事前に、朝学活の際、2分程度交流
学級で時間をもらい、児童の「得意なこと」「苦手なこと」「困っ
ているときの支援方法」などを含め、簡単に自己紹介しておく。
●交流授業の後に黙って教室から出てしまいがちな児童に「じゃあ
ね」「バイバイ」など、声をかけるように指導している。
(人間関係の形成を意識して指導している)
●個々に応じて、初回は特学担任が付き添ったり、付き添う時間も
徐々にフェードアウトしたりする。
(オ)宿泊学習などに主体的に参加させたい!
⇒ 事前学習から交流学級に参加し、児童に役割を与えることと、その役
割を繰り返しできるように工夫している。
●5年自然の教室、6年修学旅行の両方とも、同じ係にすることで、仕
事の内容を繰り返すことができ、できることが増えるようにしてい
る。
●交流学年の事前学習から入り、しおりの作成(挿絵など)も交流先
の友達を一緒にすすめることで、参加意識を高めている。
●交流学年の事前学習に加え、特学での事前学習を行うことで、宿泊
行事への不安を取り除き、主体的に参加できるようにしている。
(カ)児童数が多く、どのようにして児童への指導や、聴き取り、確認を
したらいいか教えて!
⇒ 授業の構造化で、教師がフリーに動ける時間を作り、対応している。
●45分授業の枠組みを3つにすることで、
①自分でできる個別の課題
②友達と協力して取り組む課題
③先生と一緒に取り組む課題
①の時間に、特学担当はフリーになった時間をうまく運用している。
A:交流クラスでの児童の様子を観察する。(5~10分程度)
B:週案や児童の実態からつまづきそうなところを逆算して個々に
指導する。
4 シェアリング・お悩み共有(10分)
◇ 交流及び共同学習をする際に、どうしても人手不足になることが悩みです。児童1人に、交流の授業時間中ずっと付き添うわけにいかず、実施が厳しいことがある。
⇒ 確かに、1人の児童だけにずっと付き添うことは難しいこともある。
学校内での支援体制など、管理職や特別支援教育コーディネーターと
も相談して、適切な時間に限り、支援できる人の配置など、学校全体
で考えられるとよい。
◇ 交流及び共同学習の事前・事後学習は、どの時間で取り扱い、どのくらいの時数を確保しながら取り組んでいる?
⇒ 主に「生活単元学習」で取り扱い、事前3~5時間、事後1~2時間
程度で取り組むことが多い。取り扱う内容にもよる。
5 まとめ(10分)
指導・助言:埼玉大学教育学部附属教育実践センター 教授 内河 水穂子
(1)中学校の事例提供から
■自分たちで考え、「持ち物」・「当日の服装」などを自律的に決めてい
く取り組みが中学生らしい取り組みで興味深い。
■自分たちで、決めていく際に、さりげなく、昨年度の写真や画像等のヒ
ントを見せながら生徒たちに気づかせる、先生の支援の手立て・工夫は
素晴らしい。
■さらに、発展的な内容として、この体験活動を「数学」等の各教科に結
び付けながら学習を広げていく計画があるのも、とてもよい。
■日ごろから、将来への自立の視点にたった授業づくりをしていることも
よい。
■感想等をまとめる際、「紙と筆記用具」「PCでタイピング入力」など
各自であった表現方法が選べることは、「個別最適な学び」につながる
可能性がある。
(2)小学校の事例提供から
■学校内にある既存の週案で「交流ファイル」を活用してのやりとりは、
交流先の担任も、特学担任も負担なく連携ができるツールである。新た
な取組をしようとすると、負担感があるが、既存のものを活用できてい
る良い事例である。
■宿泊学習などに主体的に参加させるための工夫として、5、6年で同じ
係の担当にして、係りの仕事を繰り返すことは、役割の自覚や係りの仕
事の定着面で、よい実践である。
■交流する特学の児童数が多いときに、学びの構造化(自分で学ぶ、友達
と学ぶ、先生と学ぶ)を図ることで、自分でできる個別の課題の時間を
明確にし、上手な時間の作り方をされている。また、こういった方法
は、個別最適な学びの実践へとつながる可能性がある。