「書きたくない」のに書いてしまうと・・・
「見て! こんなに大きな耳くそが出てきた!」
ある夜、そんなメッセージが画像とともに送られてきた。相手は母だ。画面に表示されたそれはけっこうな衝撃画像だった。
たとえるなら
それは耳くそではなく「カンナ」だ。ハムスターの床材として使用されているアレにしか見えないほどドでかい耳くそを見つめつづけること数秒。
いや。
これ。
耳くそちゃうやろ。
思わず、部屋でひとりつぶやいてしまった。と、コンコン。とびらをノックする音とそこに現れた母様。右手になにかを包んでいるご様子。
もしや。
耳くそ、持ってきたのではあるまいな。との猫目の勘は大当たりし、母様は無邪気な子供かなにかのように手のひらに乗った耳くそを見せてきた。
いやいや。
どういう反応したら正解なの、これ。
とりあえず猫目は口を動かします。
「あー……ずいぶん耳が聞こえやすくなったんじゃない?」
ほかになにかいい解答があっただろうか。
「持ってこないでよ、汚い」
と答えるには目の前の母様の笑顔が邪魔をする。
と、まあ。
人生ではじめて耳くそを見せつけられた瞬間にしばし戸惑った猫目です。みなさま。こんばんは。連日つづく猛暑でお身体を壊していませんか。まだ夏は始まったばかりです。めいっぱい夏を堪能するためにもいつも以上に身体を労わってあげましょう。
さてさて
それでは本題、まいります。
今日は「書きたくないものを書いてしまうと、どうなるか?」ということについてお話させていただけたらと思います。これは先週につづく創作がテーマのお話です。
小説でも
記事でも
そして、ブログでも・・・
書きたくないもの(書きたくないテーマ)はできるだけ書かずにいたいものです。それでも書かないといけないこともあるのは事実。
数年前。まだライターとして名乗りはじめたばかりの頃。猫目は「やりたくない(=書きたくない)」ライティングのお仕事であっても断ることなく受け、どんなテーマやジャンルでも書くようにしていました。
それはそれはもう必死で・・・
文字単価など気にもとめず・・・
1文字0・1円だろうがどんどん受注しておりました。
どれほど文字数が多くても、また、どれだけ納期が短くても、とにかく書いて書いて書きまくっていました。もちろんその時の経験は今に活かされています。ですので「とにかく書く」という目的のもとで執筆をおこなっていくこと自体は悪いことではないと思うのです。
「とにかく書いて」経験値をあげ、そして「実績をつくる」ことが目的そのものであったので記事の内容などはさして問題なかったわけです。
そんな感じでライティングをおこなってきて早3年半。
現在も猫目はあいかわらず全てのお仕事を受けているのか?
ー いいえ。受けていません。
すべてのお仕事をお受けしなくなった理由としては「ある程度の実績を積んだ」こともふくまれます。が、いちばんはジャンルをしぼることに意味を見出したことが大きいです。
猫目は現在、記事のお仕事をいただくにあたって「条件づけ」をしています。たとえばこんな感じです。
このように条件づけをしている理由はいたってシンプルです。
【①】
1文字1円以下の記事を執筆するということはそれなりの時間しか確保することができません。たとえば1時間に1000文字書けたとします。そうすると1文字0・5円だった場合、時給に換算すると約「500円」です。
時給500円って最低賃金以下ですよね。
(ちなみに日本の最低賃金は平均930円です)
これを続けていたらとても食べていけません。
その点、1文字1円以上のご依頼であった場合の時給は1000円。これならなんとか続けられそうです。とはいえ、記事をライティングするには執筆のほかにリサーチ作業が必要です。なので時間は多く持てるに越したことはありません。
たとえば
1文字2円の記事のご依頼があったとして・・・時給に換算すると1時間2000円。すると今度はリサーチに時間を割くことができます。さらに添削や校正にも時間を使うことができる。
結果として
高いクオリティの記事を提供することが可能です。ですので、猫目は文字単価にこだわってお仕事をお受けするか否かを判断しています。できることなら金額にかかわらずクオリティの高い記事をお渡ししたい。しかし、現実はそうもいっていられません。
仕事をするために生きているわけではありませんが、
生きていくために仕事は必要です。
そして【②】
どうぶつにかんするものなら喜んで、という条件についてです。こちらにかんしては1文字1円以上といった文字単価等の決まりは設けていません。
なぜなら
どうぶつを描くということは、猫目にとって仕事以上に大切なことだからです。どうぶつのことをひとりでも多くのひとに知ってもらい、関心を抱いてもらいたい。その気持ちが強いのでどうぶつに関わる執筆については、たとえ文字単価が0・5円だろうが、0・3円だろうがお受けすることにしています。
それは言うまでもなく、時給計算をすると最低賃金を下回ります。ですのでそうした記事に限っては猫目のプライベート時間を使っています。
仕事がない日、猫目はほとんどの時間を小説の執筆にあてています。そこへどうぶつ関連の記事執筆がはいるわけですね。
そんなことをしたら小説が書けない・・・。
そう思い焦ってしまった時期もありましたが、よくよく考えてみると、猫目が小説を書く理由の根本としてあるのが「どうぶつ」や「地球」のことを考えつづけていく、意識していく、といったものに由来しています。
こういった理由からも猫目はどうぶつにかんする記事にはとくに制限を設けていません。それは文字単価だけでなく媒体も同様です。SEO記事だろうが、ブログ記事だろうが、YouTubeの脚本だろうが、ペット用品の紹介文だろうが、ボディコピーだろうが、そこに「どうぶつ」が関与しているのならそれらはいっさい問いません。
むしろ、書かせていただきたい。
なにかを執筆するさいに大切となるポイントはここです。自分がどれだけそのジャンルやテーマにたいして愛情を、熱量を、興味を持っているかにかかっています。
書きたくないものを書いてしまうと・・・
では、反対にさして書きたくもないものを書こうとすると、どうなるか。それは想像にむずかしくないと思います。もちろん書きたくないものをなんとかして書くことは可能です。
しかし
あまり無理やり書いてしまうとクオリティに関わるのはもちろん、クライアント様ひいては読者の方々にたいして失礼になってしまいます。無理やり書いた文章というのは不思議と相手に伝わります。
とはいえ
仕事は仕事です。
とくに初心者のライターでライティングだけで生活をしていくことを考えた場合、いろいろなジャンルの記事を執筆していくことも重要となってきます。
「これ、あんまり書きたくないジャンルだな」
正直そう思ってしまう瞬間も少なくないと思います。ここで少し「書きたくない」と思ってしまうその理由を探ってみます。
あなたはどうして「あまり書きたくない」と感じてしまっているのか。
それは
そのジャンルに興味がないからではないでしょうか。人間、興味のない事柄にたいして積極的な姿勢で挑むことはむずかしいです。
「書きたくない」を「書きたい」に変えていく
あまり書きたくないと思うのは、そのジャンルやテーマに興味が持てないから。それさえわかれば解決策を考えることができます。そうです。この場合の解決策は「興味を持つ」ことにあります。
いやいや。
興味のないものを
興味のあるものに変えていくなんて
そんなの……できなくない?
それができるんです。
自分事として考ることさえ出来れば興味のないものを、興味のあるものへと変えていくことが可能です。
たとえば
自動車メーカーの比較記事を依頼されたとします。しかしあなたは車に興味がありません。車を所持していなければ自動車免許も持っていない。そもそも幼いころから駅の近くに住んでいたあなたは車とは無縁で、移動手段はもっぱら電車。
これではたしかに車への関心は薄れてしまうかもしれません。
それでもあなたは、ひとまずは、と記事のご依頼主様から届いた資料に目をとおします。そこに並ぶのはいくつもの自動車の画像と説明文。
なんだか知らない単語と数字と……そして彩りの自動車たちの写真を前に、あなたはおそらく不安になるでしょう。
「自分は車のことをなにも知らないのに」
「本当にこの記事、書けるのかな」と。
しかし
想像してみてください。もしも、あなたが7日後に車に乗るとしたらどうでしょう? もし免許を持っていて、それで7日後、あなたはあなたの大切なひとを乗せてドライブに出かけます。
大切なひとは恋人かもしれませんし、職場でお世話になっている先輩かもしれません。トミカ遊びに夢中の息子かもしれませんし、10年ぶりに再会する旧友もしくは遠方にいる母親かもしれない。
それではつぎです。
あなたが車で向かう場所はどこですか?
海?
山?
夜景がきれいな人気スポット?
水族館?
美術館?
遊園地?
温泉郷?
いかがですか。
想像しているうちに楽しくなってきませんか。
今一度、画面に表示された車のラインナップに目をとおしてみてください。どうですか。先ほどとは映りかたが変わっていませんか?
恋人を乗せてドライブに出かける。そのとき、あなたはどんな車に彼女を乗せてどこへ向かいたいですか?
洗練されたスマートなボディで有名な○○メーカーの最新車に乗って夜の高速道路を走ったら……かっこいいかもしれない。
母親といっしょに美術館へ出かけるとしたら?
おそらくあなたは乗り心地のいい車を選ぶはずです。ならば、○○メーカーから発表されたばかりの○○型の軽自動車なんてどうだろうか?
といった感じで想像をふくらませていくことで自然と自動車への興味・関心が高まっていきます。そうなれば「なんとかして記事を書かなくては」という意識から「ぜひこの記事を書いてみたい」という気持ちに変わっていくはずです。いろいろ工夫した結果、それでもなお「書きたくない」と思ってしまうのなら、それは書かないほうがいいと思います。
たしかに、文章というのはだれにでも書くことができます。長い時間と、センスが必須のデザイナーとちがってライターは今からでも名乗ることが可能です。それでも、あなたが「ライターになりたい」と思ったのには理由があるはずです。
以前、ライターを志して途中で辞めてしまった方に同じ質問をしたことがあります。
「Fくんはどうしてライターになりたかったの?」
かれの答えは、こう。
「ライターはだれにでもなることができて、簡単にお金を稼ぐことができるって聞いたから」
ライティングを仕事にするひとたちには、そのひとたちの理由があります。ですのでお金を稼ぐことが目的であってもそれは悪いことでも間違いでもありません。
しかし
そこに「文章を書きたい」という気持ちがわずかでも宿っていないと長続きはしません。書きたいから、書く。その気持ちを大切にしていくことで今よりもっとステキな文章を贈ることができる。猫目はそのように思っています。
本日もさいごまで目をとおしてくださり、
ありがとうございました。
お約束の「今週の人物描写」です。