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県央基幹病院が新潟県初!新たな看護への試み「診療看護師(NP)」とは?

こんにちは、済生会新潟県央基幹病院の広報担当です。

当院では、県央地域全体の医療や看護の質を向上させるために、さまざまな取り組みを行っています。

その取り組みの一つとして、新潟県で初めて診療看護師(NP)を採用したほか、特定行為研修の指定研修機関として、本年6月には特定行為研修(術中麻酔管理領域・集中治療領域)を開講しました。また、病院勤務の救急救命士による特定行為実践の取り組みも進めています。

今回のnoteでは、全国の先進事例として当院が学んだ聖マリアンナ医科大学病院から、藤谷茂樹(ふじたにしげき)副院長と小波本直也(こはもとなおや)診療看護師[1] をお招きし、シンポジウムを開催した様子をご紹介します。


診療看護師(NP)って?

今回のテーマである「診療看護師」ですが、あまり聞きなじみがない方も多いと思いますのでご説明します。

診療看護師は、医師の指示のもと、一定の診療を行うことができる看護師のことです。

診療看護師は看護師としてのスキルに加えて、初期医療の知識や技術を習得することで、医療現場でのタスクシフト(医師の業務の一部を看護師や薬剤師などに移すこと)や在宅医療での医師不在時の迅速な対応が可能になります。また、医師と他の職種との橋渡しなど、多様な役割が期待されています。

病院をはじめとする医療機関で活躍しており、タイムリーな処置が可能であるため、患者への対応が迅速に行えます。

診療看護師になるには、下記のステップが必要です。

・看護師としての経験:5年以上の経験を積むこと。

・大学院での教育:2年間の大学院修士課程で医学的知識や技能を学ぶこと。

・診療看護師資格認定試験:試験に合格することが求められます。

さらに、大学院在学中に症例数をこなすなどの要件を満たすことで厚生労働省が特定行為と認定する21区分38行為が実践することができます。

 ※詳細は以下のリンクで確認できます

21区分(厚生労働省HP)

38行為(厚生労働省HP)

 医師からの直接的指示:相対的医行為が実践できるように、大学院での教育が行われます。

聖マリアンナ医科大学病院・県央基幹コラボ企画!!「地域医療変革への病院づくりと診療看護師の活躍」シンポジウムのご紹介

ここからは今年2024年の4月18日に行われた聖マリアンナ医科大学と県央基幹病院のコラボ企画「地域医療変革への病院づくりと診療看護師の活躍」のシンポジウムのご紹介をしていきます。

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1.聖マリアンナ医科大学病院 藤谷茂樹先生

左 藤谷茂樹 先生  右 小波本直也 診療看護師

お一人目は、藤谷茂樹先生です。

聖マリアンナ医科大学の救急医学講座教授、同大学病院副院長・救命救急センター長、看護師特定行為研修センター長などを務められておられます。

藤谷茂樹先生の基調講演では、診療看護師と特定行為研修修了者の役割とその重要性が紹介されました。

診療看護師と特定行為研修修了者の違いについて、どちらも21区分38行為の特定研修を修了した者であるが、診療看護師は2年間の大学院修士課程を修了したうえで日本NP教育大学協議会が実施するNP資格認定試験に合格しなければなりません。

特定行為修了者には高度な専門知識と実践的な理解力が必要であり、看護師が手順書に沿って診療を補助することが求められます。また、患者の症状などから状態を把握するための臨床推論も求められます。これは医師の判断を待たずに、看護師が一定の診療行為を独立して行うための能力を養うことを目的としています。

2015年10月から特定行為に係る看護師の研修制度が施行されました。この制度は特定行為を行う看護師の養成とその質の確保を目指しています。

研修には、特定行為診療に必要な高度な専門知識、手順書に則った診療の補助、区分別の専門的知識と技能などが含まれます。また、指定医療機関にて教育が行われ、厚生労働省が定めた標準カリキュラムに基づいています。

2025年に向けて在宅医療等の推進を図るため(※)には、熟練した看護師のみならず、特定行為を行える看護師の養成が不可欠です。そのため、研修制度の標準化が進められており、特定行為研修修了者の育成が計画的に行われています。

※2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳)となり、医師不足や医療や介護費などの社会保障費が増加すると考えられます。これは「2025年問題」と呼ばれ、医療へ大きな影響があると考えられています。

特定行為研修修了者には、看護師としてのミッションを忘れず、自分の仕事に対する誇りと責任を持つことが求められます。また、所属施設の現状とニーズを理解し、求められる役割や期待されていることを把握することが重要です。

そして、パイオニアとしての自覚を持ち、常に医療の知識を学ぶチャンスを捉え、チャレンジする姿勢が求められます。

特定行為研修修了者の研修制度は2020年には5年目の見直しが行われ、カリキュラムの時間数の修正や内容の整理が実施されました。これにより、実習数の削減や共通科目の再編成、区分別科目の実習における必要症例数の設定と獲得が行われました。これらの変更は、特定行為研修修了者の質を向上させるためのものです。

特定行為修了者の地域での活用方法は多岐にわたり、病院のニーズに応じて横断的に関わることが期待されています。

藤谷茂樹先生の基調講演では、これらのポイントが強調され、特定行為研修修了者が地域医療で果たすべきさまざまな役割が紹介されました。

2.聖マリアンナ医科大学病院 診療看護師 小波本直也さん

お二人目は、小波本直也診療看護師です。

2017年に診療看護師資格認定試験に合格され、同年から聖マリアンナ医科大学病院・看護部・診療看護部所属で、診療看護師としてご勤務されております。

小波本診療看護師は、集中治療室での経験を通じて、ベッドサイドの看護師の能力が患者の予後の回復に大きく影響することを実感しました。適切な看護を提供することが患者の予後を大きく変えることを感じ、診療看護師を目指すことを決意しました。

聖マリアンナ医科大学病院では、診療看護師は診療看護部に所属し、各診療部へ出向しています。たとえば救急科では、指導医、フェロー医師、シニア医師、研修医と共に連携しながら、診療にあたります。

また、診療看護師は資格取得後2年間の卒後研修を通じて診療と看護の基礎力、特定行為の判断能力、職務遂行能力を養い、研修修了後には各配属先で病棟管理能力を発揮できるようになります。診療看護師の多職種の視点を持つことの重要性も強調されており、異なる職種の視点で患者を見ることで、より立体的なケア(Care)とキュア(Cure)が提供できると考えられています。
※ケアとは患者の全体的な健康と福祉をサポートすることを指し、キュアは病気や疾患を治すことを意味します。

同じ患者さんであっても職種によって異なる見え方をする場合があるとされています。診療看護師が多職種の視点で患者をより「立体的に看(診)る」ことによって、より良いケアとキュアを提供できると考えられています。

診療看護師が、診療×看護の強みを発揮することで、看護を深め、そして進化させ、それを浸透させることで、これからの看護を深化・進化・浸化させる可能性があると述べています。

3.済生会新潟県央基幹病院 病院長 遠藤直人

左 遠藤直人 病院長   右 髙野浩司 診療看護師

続いて当院の遠藤病院長より

「診療看護師受け入れに向けた院内環境整備の取組み」について説明がありました。

済生会新潟県央基幹病院は、診療看護師の受け入れに向けて積極的な取り組みを進めています。

新潟県内では初となる診療看護師の雇用を実現するため、全国の先進的な病院を訪問し、ヒアリングを行いながら研究・募集を重ねました。その結果、2名の診療看護師が県央基幹病院で勤務することが決まりました

診療看護師の活動が円滑に行われるように、またその資質が向上できるように、全国の先進事例を参考にしながら委員会を設置しました。委員会では、診療看護師の研修、業務内容の統括、労務管理、受け入れ体制の整備など、包括的なサポートを行っています。

また、診療看護師自身も、他の職種や病院全体について理解を深めることで、多職種との連携をさらに強化し、病院のニーズが最も高い場所で力を発揮できるように努めています。こうした取り組みを通じて、診療看護師のスキル向上や多職種との連携が進み、地域医療の発展に大きく貢献していくことを期待しています。

今後も診療看護師の役割を最大限に活かし、地域医療の発展に貢献するため、継続的な研修や評価を行っていく予定です。これには、最新の医療技術や知識の習得だけでなく、患者とのコミュニケーションスキルの向上や、医療チームとの協力体制の強化も含まれます。

4.済生会新潟県央基幹病院 診療看護師 髙野浩司


最後に当院で診療看護師として勤務されている髙野診療看護師より

「済生会新潟県央基幹病院での活動(勤務・研修等)内容」の説明がありました。

私は看護師として11年、診療看護師として2年目になります。診療看護師の資格を取得する前は、手術室などでの経験を積んできました。

当院の魅力は、診療看護師を初めて採用したにもかかわらず、診療看護師運営委員会を設置し、診療看護師との共同経験を持つ医師や看護部長、メンター、指導者の下で活動できる点です。規定や運用体制も整備されており、初めての診療看護師導入とは思えないほど充実した環境で活動をさせていただいています

現在、私は2年間にわたり、各診療科を2~3カ月ごとに研修するスーパーローテート研修を行っています。平日日勤での研修が基本ですが、緊急手術や緊急カテーテルの対応が必要な場合には、休日出勤もしています。

研修中も診療看護師としての資格手当をいただき、肉体的、精神的、経済的にも安心できる環境で研修を進めています。また、毎月開催される診療看護師管理運営委員会では、研修状況の確認や課題の共有、方針決定が行われ、より良い研修が提供されるよう努めています。

私自身、診療看護師としての経験が浅いことから、より良い研修内容や方法を模索しながら進めておりますが、今年度からは経験豊富な先輩診療看護師からアドバイスも受けられるようになり、課題も克服しつつあります。

今回のシンポジウムを通じて、さらに体制が充実し、今後も研修内容がブラッシュアップされることを期待しています。

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今回のシンポジウムでは、新潟県初の取り組みとして、済生会新潟県央基幹病院で診療看護師が活躍する様子をご紹介しました。

診療看護師は、看護師としての経験に加えて、医療の専門知識と技術を持ち合わせ、医療の現場で迅速に対応し、多職種との連携でも重要な役割を果たしています。

藤谷茂樹副院長と小波本直也診療看護師による講演を通じて、特定行為研修修了者の役割やその重要性、診療看護師の活躍が地域医療に与える影響について理解を深めることができました。

また、診療看護師を迎え入れるための組織の取り組みや、実際に働く診療看護師の体験談も大変参考になりました。

済生会新潟県央基幹病院では、これからも診療看護師の育成に力を入れ、多職種の連携を強化しながら、地域医療の発展に貢献していきたいと考えています。

今回のシンポジウムが、今後の医療現場における診療看護師のさらなる活躍の場の拡大と、地域医療の充実に繋がることを願っています。