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【事例】組織のライフサイクル 起業家段階から共同体段階へ

売上10億未満、従業員数50名程度の製造業の企業様の事例です。
今回の再生のポイントは「組織」にありました。

組織のライフサイクル

前提ですが、組織のライフサイクルという言葉はご存知ですか?
規模の拡大に応じて、組織のシステムや文化等が変化していくことを説明したモデルです。

リチャード・L・ダフト「組織の経営学」に説明がありますので、詳細はそちらを当たっていただくのがよいかと…!
(ググっても出てきますし、中小企業診断士のテストにも出てきます!)

組織のライフサイクルでは、人数が少ない企業として最初の段階を「起業家段階」とし、人が増えつつあるその次の段階を「共同体段階」としています。
(その後、「公式化段階」「精巧化段階」と続きます)

起業家段階とは?

起業家段階では、経営者の個人能力が重視され、組織的な管理は後回しにされる形になります。
ただし、組織の拡大に伴い、経営者の個人能力には必ず限界を迎えます。

人が少ない時(従業員十数人の時)は経営者が、
営業、見積もり、生産管理、品質管理、採用、評価、資金調達など、
全部やることができます。

ただし成長を志向した場合、絶対にどこかで一人でやるには限界が訪れます。
今回支援をしていた企業様も、社長の成長意欲が非常に旺盛で、積極的な設備投資をされており、受注も拡大していたのですが、それに伴って単純に業務量が増えてしまっており、一人で対応することができていませんでした。

共同体段階とは?

組織のライフサイクルモデルによると、組織のメンバーが増えた時には、共同体段階に入り、そこでは経営者はリーダーへの権限委譲と直接トップが指揮をすることなく現場が動く管理体制を作っていくことが必要になります。

※この段階では組織内に明確にルールが決まっているというよりは、インフォーマルなコミュニケーションが中心となっています。

ただ、今回支援させていただいた会社では、社長による権限委譲が行われておらず、社長が頑張って自分だけでなんとかしようとしていました。

結果的に、社長の諸々の対応が遅れ、現場の統制が効かなくなり、納期遅れや品質問題が頻発。
お客様から信頼を失い、売上が下がり、、設備投資のために借りた借り入れを返済できない、、ということになっていました。

社長の仕事は ”従業員を信じること” なのだが。。

なぜ権限委譲をしなかったのか。。
その会社の社長に話を聞くと、

  • 従業員にはずっと能動的に管理のこともやってほしいと伝えていた。私だけの会社ではなく、みんなの会社だから、と。
    (実態は社長が100%株を持っていたのですが、、)

  • でも従業員は何もやろうとしなかった

  • そもそも今回の困窮要因は従業員にあると思っている

との主張。

これは正しいのでしょうか。
私個人としては、基本的に会社の経営のすべての責任は社長にあると思っていますし、今回のケースでは、社長が能動的に管理職を作り出すような取り組みをしなかったことが困窮要因だと思っています。

人を信じるのは大切なことなのですが、その大前提として人にきっかけを与える、つまり社長からの能動的な仕掛けがあってしかるべきだと思っています。

今回の事例でいったら
例えば、管理職というタイトルを与えてやってほしい役割を明確に伝える、などが考えられます。

社長の仕事は人を見極めて、任せること

ちょっと脱線しますが、ある程度の規模の会社になったら、社長が自分で動かせる変数は「誰に何を任せるか(≒人事権)」が中心になってくると思っています。

ただ、それをやるためには、権限委譲をしないといけません。

中小企業の社長は、往々にして自分の手から仕事が離れていくことを嫌がります。
(この傾向は中小企業の社長にとどまらないかもしれませんが。。)

結果的に、組織の人数は「共同体段階」に差し掛かっているにもかかわらず、システムや文化が「起業家段階」のままになり、事業そのものに負の影響が出てしまうのです。

この事例から学べる中小企業支援/事業再生で見るべきポイント

社長が規模拡大を志向しており、ターゲットとしている市場も悪くないにも関わらず、利益が出ないで困窮している中小企業は、組織ライフサイクルモデルに応じて、適切に権限以上がされておらず、うまく事業が回っていない可能性があります。

社員と面談すると、「組織」に対する改善要望が出てきたり、
組織図を見るといびつだったりすることがそのサインです。
(例えば、規模が一定あるのに社長+一人くらいで社員のほとんどをマネジメントする体制になっているのは、いびつだと言えます)

事業再生のためにすべきこと

※前提、事業再生フェーズの会社は、複雑骨折していることもあり、置かれている状況もケースバイケースで様々ですので、一概にこれだけ適応すればOKというわけではありません。あくまでも参考にしてください。

この組織のライフサイクルモデルに応じた変化ができていない企業については、以下の3つを実施するのがポイントだと思います。

  1. 社長の認識を整える(大きくなるためには、組織的な動きが必要)

  2. 現場を巻き込む(経営陣と現場のわだかまり解消も含め)

  3. 組織的なチャレンジの伴走支援

3.ですが、特に組織的な動きをしてこなかった、個人事業主の集まりのような会社には、度々出会うことがあります。
その場合には、必ず伴走支援が必要です。

会議体を設け、アクションを決め、フォローをする、この基本的な動きも実践できていないケースが多いです。
ここは外部の人間が入ってサポートする価値があるポイントになります。
※実際の会議に入るので、工数がとんでもなくとられますが、再生にはMUSTで必要かと。。

もっと踏み込んで具体的に何をしたのかは、、、
もし知りたい方がいらしたら、教えて下さい。

生産管理や値上げ交渉、購買など、突っ込んで伴走支援をしてきました。
もしかしたら、事例として参考にしていただけるところもあるかもしれないです。

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