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24.10月オケ練③:練習不足。

11月に入ると、H先生による指揮練が始まる。

私は現在自分が出る発表会とオケの練習を同時進行している状態。
何らかしらの団体に所属していると、ありがたいことに他オケやアンサンブル団体から「ウチの団体にも参加しませんか?」とのお声がかかる。
今の団体とは毛色の違う団体にも所属すれば、沢山の曲と出会えて楽しそうだ。
団体を掛け持ちしている奏者は少なくない。

当然、所属団体が増えれば練習する曲数が増える。
増えればその分練習しなければならない。

私の師匠は私が楽団に所属していることを良しとしない。
師匠の出す課題に集中して練習し、技術を磨かせたいから。
そして、私の帰宅時間が遅く、なかなか練習時間を確保できないから。

しかし私は個人練習だけではモチベーションが上がらない。
そのことを知っているので、師匠は渋々許している。

ただし、
「ボクのレッスンは8割、オケは2割の気持ちでやりなさい。」
と言われている。

たった2割では、他の団体との掛け持ちなど無理である。
1団体でも所属を許してもらっているだけ、ありがたいのだった。

          ★

発表会が目の前に迫っている現在、師匠に「オケの曲個人練習禁止」にされている。
全く練習せずに練習会に参加するのは良くない。
しかし、欠席もあまり良くない(最近休みがちだし)。
できないところは弾かないつもりで参加した。


お願いしていた練習指揮者I先生は、今回も都合により来られなくなった。
代わりに指揮するのはコンマス…申し訳ないけれど、少しモチベーションが下がる。

チャイコの弦セレ3楽章のチェロのメロディ、自信を持ってfffが弾けず、怒られた。
跳躍で音を取るのが難しい上に、私はノー練だ。
怒られて当然だけど、凹む。

          ★

「来週発表会なんだろう?練習進んでる?」
帰りにそう声をかけてくれたのは、コントラバスのJさん。

休憩時間にチョコレートをあげたら、ウインクされた。
ウインクが似合うおじさんに初めて出会った…。
師匠も、それくらいの可愛げがあるといいのに。

「はい。追い込みやってます。」
「バッハ無伴奏の5番弾くんだろう?スゴいなぁ!」

スゴいもなにも、師匠には反対されたんですけどね…無謀な試みである。
それでも、Jさんのお言葉はありがたく頂戴する。

「それで、発表会が終わるまで、師匠にオケ曲の練習禁止されてます。今日、ちっとも弾けてなくてすみません。」
「Kくんはおカタイからなぁ。言い付けをちゃんと守ってる夜はエライよ。」

単に師匠がコワイから、なんだけれど。
課題を練習しないでレッスンに臨むと、弾いてすぐにバレる。

「ありがとうございます。
ところで、今日使ってるコントラバス、いつものと違いますよね?」

ニスの色が薄い。
Jさんはコントラバスをなんと7挺も持っているらしい。自宅では2部屋もコントラバスが占領しているとか。

Jさん、ちょっと驚いた様子。

「え?わかったの?そうなんだよ。この前持ってきていたのは、ネックが折れちゃった。」

コントラバスのネックが?!折れただと?!

「先週Iオケの練習に参加したときなんだけど。
車から楽器を下ろそうとして、手が滑って地面に落としちゃったの。」

ただでさえ大きいから、大事故じゃないか…。

「じゃあ、その日のIオケの練習はどうしたんですか?」

楽器ないのに。

「チェロ2挺持っている人がいてね(そんな人いるの!?)、チェロ借りて、無理矢理弦調下げて弾いたよ。」
「そんなことできるんですか?!それでも低弦足りないんじゃないですか?」
「そのとおり。だから、弾けないところも沢山あったよ。やれやれ。」

さすがに、チェロでコントラバスパートを弾くのは無理だよ…。

「折れたネック、直せないんですか?」
「直せるよ。でも、時間がなくてね。お客さんの楽器で手一杯。自分の楽器は後回し。」

Jさんはリペアマンである。

「でも、大丈夫。今回の定演は元々この楽器を使おうと思っていたからね。問題ない。」

「私の楽器も裏板剥がれちゃって、先日まで入院していたんですよ。」
「そうだったんだ。言ってくれれば僕がくっつけてあげたのに。」

いやいや、お客さんいっぱいなのに、それは申し訳ない。

「裏板剥がれるなんてよくあるから、気にしなくていいよ。逆に言うとね、裏板が剥がれるから、楽器が守られるんだよ。」

どういうこと?

「横板と裏板が強力にくっついてると、楽器本体が割れやすいんだ。割れのほうが楽器にとってダメージが大きくて修理も大変。板同士が剥がれることで、割れずに済むんだよ。剥がれをくっつけるのは、簡単。」

知らなかった。
自分の楽器なのに、知らないことがたくさんある。

「そういった楽器の話、興味深いです。」
Jさん、満面の笑み。
「そうかそうか。発表会終わったらさ、一緒にランチでもしようよ。」

そういえば、師匠のJさんへの謝礼でおごってもらう約束をしていた。

「いいですねー。楽しみにしています。」
Jさんとハイタッチして別れた。

発表会まであと少し。
ランチを楽しみに、がんばろう。





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