【選手名鑑Vol.13 安藤一樹】ーSaints1熱い男が今、語ることー
今回取材に応じてくれたのは、3年MFの安藤一樹だ。Saints入部理由やコロナ禍で思うこと、自身の目標などから安藤一樹という人物を説いていく。
1 SAINTS へ入部
「もともと大学では遊ぼうと思ってた」
そう答えたのは、SAINTS きってのラクロスに熱量を注ぐ安藤。そんな彼から発せられたの は意外な言葉だった。
小さい頃からスポーツに打ち込んできた彼は、高校で野球を三年間やり切ったこともあり、 大学ではサークルに入ろうと思っていた。だがサークル勧誘の日。
「体が大きい人に無理やり体験会こさせられて、それでラクロス楽しそうだなと思って」
これが彼のラクロスとの出会いである。この出会いから現在に至るまで彼がどの様にラクロスと接してきたのか。それについて彼のありのままの言葉を元に述べていきたい。
2 どうしてアタッカーなのか
野球をしていた彼に取って、アタッカーの動きは野球と似ているという。ボールを取る能力、シュートスキル。どれも野球に通ずるものがあったと彼は話す。
「自分が得意なプレーをできるのがアタック」
そう淡々と話す安藤。今でこそ華々しい活躍をしている彼だが、初めから上手く出来た訳ではない。
「最初は全然出来なかった。だから朝練に行って、授業で池キャン(池袋キャンパス)に戻 って、また座キャン(新座キャンパス)に戻って 7 時まで練習。その後は夜の 10 時くらいまで筋トレをしてた」
本当にラクロスと筋トレしかしてなかったと彼は話す。朝から晩までラクロス漬けの毎日。 別のキャンパス間を移動するというだけでも大変さは容易に想像できる。 どうしてそこまで努力を続けたのか。彼を動かしていた根底にはこんな思いがあった。
「日本の学生で一番上手い選手になりたい」
その思いに突き動かされながら、ただ必死に練習に練習を重ねた。
そんな一心不乱に練習を続けていた二年生のある日。
彼は A チームに呼ばれた。それは今までの地道な努力が結果として現れた瞬間であった。
最初から活躍できる人なんていない。今活躍している人というのは必ずそれ相応の努力を 続けた人である。現段階で活躍している彼というのは、後輩からすると一見遠そうに見えるが、この背景を知って後に続いて欲しい。
3 アタッカーからミディに転向
「僕の持ち味は遠くからのシュート」
この質問をして一番最初に出てきた言葉だ。この転向は、ゴールからみて表にいるのは基本ミディである事、1on1を相手に仕掛けるときに広いスペースがあった方が得意である事を考慮した。しかしこれは建前だそう。
実際は上島さんからの、「安藤、これから二度とアタックやらないから」という一言が、大きなきっかけとなっていたのだ。
正直自分がなぜアタックではなくなったのか、安藤自身もわかっていない。アタックからミディへ、その時の心情の変化を問うと、
「スタートの時にミディはアナウンスされないから、それはマジで悔しかった。けど、オフェンスだけやりに行く、途中から出てくるヒーローみたいでかっこいいと思う。」
と悔しさを感じながらも、前向きな考えを持っていた。
安藤は既にミディとして抜群な存在感を放っており、これからは「ミディの安藤」として注目も集めるだろう。
4 自粛期間との闘い
そんな中、コロナウイルスが蔓延することで、なかなか思い通りに練習ができなくなってしまう。
「ラクロスをしたくても出来ないっていう状況が増えて」
活動が制限される中、頑張れない日や遊びたくなる日が出てきたのも事実。そうした中でも、彼はラクロスの動画を視聴、シュート練習、一人で壁あてなど、日々ラクロスと向き合い続けた。またラクロスというスポーツ自体の楽しさを広め、新入生を取り込む事にも力を入れたという。
「自分に言い聞かせながら目標に対してガチで向かっていった」
自分との闘いの時間が続く中で、やると決めたからには妥協しない姿勢をとる安藤。
その強さの原点はどこにあるのか。話を進めていくうちに、ある一人の名前が上がった。それは昨年引退したオフェンスリーダーの高島遊である。
「『ラクロスの熱量は信頼に繋がる』と言われて、俺も遊さんの事を信頼してたし、遊さんにも信頼して欲しかったから、めっちゃ頑張った」
そんな尊敬する高島から貰った言葉がある。
「師を見るな、師が見ているものを見よ」
目標にしているものを見ていたら目標には辿りつかない。目標にしている人の先を見ないと、目標にしているものは超えられない。
彼のこれまでの姿を写し取った様な言葉である。自分に対しストイックに。そして地道な努力を忘れない。そんな直向きな強さの原動力が、ここにある。
5 影響を受けた選手
Saintsには沢山の仲間がいて、その仲間の支えが大きな力になる。
安藤は、特に学生コーチをしてくださっていた柳井さんや枝広さん、2年時レギュラーで試合に出ていた時に伸び伸びプレーをさせてくれたゆうさんや、凛さんに感謝や恩返しをしたいという気持ちを抱いていると話す。
特に学年が一つ上の櫻井に対し、
「一年の時から目標というよりかはライバルにしていた。一生敵わないんじゃないかって思うほど上手いから、あの人は超えたいよね。」
と憧れを抱いていた。これが大きな向上心に影響を与えているとも言える。
「あいつは先輩じゃなくてライバルだ。」
身近に大尊敬でき、切磋琢磨できる仲間がいる。この環境が安藤をより強くなろうというモチベーションに繋がっているのだ。個人だけでなくチーム全体で高めあえる関係性である、これはSaintsの大きな魅力だといえ、これからも変わることはないだろう。
6 入部した時の目標に近づけているのか
「日本で一番上手い選手」という目標を入部時から掲げている安藤。この目標の裏には、「あいつ一番使えるな」と思わせたい気持ちがある。この目標にはまだまだだが、着々と近づけている自信は持っていると話す。
ここまででも分かる通り、
「一番」
というこだわりは常にブレない。一番をとることは、周りから認められるということ。
個人では、今まで生きてきた中でやってきたことは合っていたという証明になる。チームにおいては日本一を取ったら、プレイヤーやスタッフだけでなくSaintsに関わる全ての人々が周りの人から称賛され、認められ、そしてそこから幸福感を得る。
安藤はそんな景色を見たい、みんなをそこに連れて行きたいという思いで、「一番」という軸をずっと持ち続けているのだ。
7 今後の目標
彼の今後の目標は二つある。
一つ目は、「今年日本一になること。」
そして二つ目は、「四年生でワールドカップに行くこと。」
何方も簡単に成し遂げられるものではない。だが彼ならやってくれるのではないだろうか。 彼の熱量が全体に伝わり、それがチームを動かす原動力となる。これからもその強い熱量を胸に、目標を体現させていって欲しい。
8 今とこれからのSaints
中立戦初勝利を収めるなどノリに乗っている今のSaints。
「1年生には、今抱えている問題を分析し、一年生なりに成長してほしい。 今のSaintsには、自分自身の幸せのために何かを勝ち取る気持ちを大事にしてほしい。」
安藤は、調子がいい今だからこそ気を引き締め直すべきだという。来年は自身が部の最高学年となり、チームを引っ張っていく存在となる。来年もコロナ禍での活動だと考えられ、異例の状況が続く中でのチーム像について、
「コロナ禍で入ってきてくれている今の1.2年生は、自分の目標をしっかりと持って入ってきている人が多いと思うから、コロナ禍だけれどその代をしっかり活かせる組織にしたい。」
ここから先のSaintsの未来は、今よりももっと一人一人が自分自身の個を大切にしながら輝きを放つ、最強の組織となるだろう。
9 今、伝えたいこと
「俺は見ている」
小さい頑張りをしていること、努力の仕方を変えていること、出来ることが増えていること、などどんな些細なことでも全部一人一人見ている。
これが、安藤がこの選手名鑑を通じて最後に伝えたいこと。この言葉は全てのプロジェクトに入っていたり、日々の練習で周りを見ている視野の広い安藤だからこそ言える言葉だ。
今努力していることが全てこれからのチームに繋がっていく。
安藤は、「今」を大切にしながらも「目標」に向かって努力を絶やさない熱く、頼れる、そして影響力のある選手だ。これから私たちにどのような景色を見せてくれるのか、期待して共に歩みたい。
執筆者 野原菜々子 岡田純奈