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「毒姫の棺」を読んで…

「葬儀は残された人のためにあるものだ」と、作者三原ミツカズさんは、かつて僕に言ってくれたが…
この作品も大切な人に取り残され、虚になった僕らのすべきことと、どう生きるべきか?どう死ぬべきか?を指南してくれる美学の物語だ。
「毒姫の棺」というタイトルは生き残ってしまった僕ら読者のための葬式という意味があるのだろう。

物語は老いた者と若者のやり取りから始まり、その両者のそれぞれで締め括られる。
つまり、始まりと終わりで終わるべき者と始まるべき者を描き、それは何を誰のために描き、伝えたかったのかを示唆してくれている。
だからこう結論されているのだなどと改めて言うのは無粋なのでやめよう。

ただ一つ、このシリーズを特殊な美女とそれを取り巻く人たちの悲劇くらいに思ってしまっている人がいたら、
それはあまりに勿体ないので、これだけは語らせてもらいたい…
毒姫…それは満足に触れ合えぬままに死んだ、愛する者全ての象徴なのだ!

そんな物語だからこそ僕は失った者を思い、自分自身の物語の延長としてリンクさせて読まざるを得なかったし
それこそ三原ミツカズの望む作品の在り方でもあるのだと思う。

それでも、読む人ごとにきっとこの物語の読み味は違うだろう。今はまだよく分からない人もいるかもしれない。
でも…
ずっと手元において人生のやり切れない節目に読み返せば、また違う味で君を救ってくれる…
深い腹の底からの尊い思いが絵として言葉として詰め込まれている作品だと気づくかもしれない。
そんな…特別に大切にして所有するに相応しい本だ。
気に入ったなら子供や孫にプレゼントして思いを繋げるのもいい。
この本は作中の十字架と同じものなんだと思う。

この本が手で触れて読む…電子でなく、紙の本でよかった。

僕は作品から僕の役目を受け取ったよ。
勝手ながら、バトンのような思い。

僕は僕の息子の遺した物語を描こう。


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