2024.8.2パリ五輪ブラジル代表戦を振り返る
日本🇯🇵●84-102◯🇧🇷ブラジル
最後に気持ちの糸が切れて離されてしまったが、日本は本当によく戦った。点差ほどの力の差はなかったよ。
吾輩はこのチームを誇りに思うし、3連敗という結果ではあったが、東京オリンピックのときから劇的に日本代表は強くなった。世界トップレベルの国々と勝敗が分からない戦いを繰り広げられる土俵に立ったのだ。
日本が悲願の1勝をかけて戦ったブラジル戦を振り返ってみたい。
理不尽なスリーの雨
どちらか負けた方は確実にGoHomeのこの一戦で、ブラジルのスリーはあまりに理不尽だった。
外角のシュートの確率は上振れ下振れがつきものだが、40%で高確率、50%で相当な上振れと言えるスリーポイントを、あろうことかブラジルは61%(17/28)、前半に至っては85%(11/13)という悪い冗談としか思えない確率で決め続けた。
ここまでの異様な確率は置いとくとして、ブラジルのスリーを確実に決めていけたことには理由がある。
ブラジルのピックに対して、日本のディフェンスが後手に回ってしまったことだ。
フィジカルで勝るブラジルは、オフェンスでピックをイヤというほど使い倒してきたのに対し、河村や富樫などガードがアンダーサイズな日本はスイッチを避けるためファイトオーバーをしようとするんだが、これがうまくいかない。
相手がされて一番イヤなことをするというのがスポーツの鉄則だが、ブラジルはそれをよくわかっていた。
また、オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスを多く与えてしまったことでも傷を広げてしまった。
兵器カボクロ
手がつけられなかった。33得点17リバウンドとかいうモンスタースタッツで日本に立ちはだかりつづけたのが、このカボクロだ。
スリーもペイントからのフィニッシュも高確率で、日本はどうしてもこいつに対する答えを見つけられなかった。
日本を倒すためにブラジルが秘密裏に研究開発を進めてきた兵器と言われても疑わなかったと思う。
たられば言ってもしゃーないが、八村がいたらここまで好き勝手されることは絶対になかったと思うと、悔しさがこみ上げるのだ。
老獪な41歳ウエルタス
ある意味カボクロ以上に厄介極まりなかったのが、今オリンピック(バスケ)出場国中最高齢41歳のウエルタスだ。
日本が逆転できなかったのは、ワンポゼッション差に何度も迫りながら、直後の「この1本は絶対に守りたい」というところでコイツがコントロールして、ショットを沈めるか確実なアシストを供給していたからだ。
41歳が代表ロスターに名を連ねる理由を、その実力で示したのは敵ながら素晴らしい。
素晴らしい一方で暴走もチラつく河村
21得点10アシストと今日も圧倒的な存在感を示した河村。彼とホーキンソンのツーメンゲー厶なしではブラジルに終盤までの接戦を演じることができなかっただろう。
しかし、前半の途中では明らかに集中力がメーターを振り切っており、自分がスリーかドライブでフィニッシュすることしか頭に入ってない無理やりなプレイが目立ってしまった。
ここで、河村に代えて日本に冷静さを取り戻させたのが富樫だった。
落ち着いて周りを活かす富樫
前半、周りが見えなくなっていた河村に代わってコートに入ったのが富樫だ。
焦ることなく冷静にゲームコントロールに徹しており、その背中で河村に「もっと周りを使えよ」と語りかけていたような気がする。富樫の時間帯、日本はバランスのよいオフェンスで、確実に点差を縮めることができていた。
ただ、惜しむらくは前半最後のオフェンスは富樫らしくなかった。ゲームクロックを少し多く残しすぎてスリーを撃ってしまい、リバウンドからのカウンターでブザービータースリーを許してしまった。Bリーグの試合でのゲームクロックマネジメントはきっちり行う富樫にしては、珍しいミスだった。
すごく謎だったのが、うまくいってた時間帯になぜ富樫を下げてテーブスを送り込んだのかということだ。ここは明確な采配ミスだったように思える。
おそらくだが、相手が単騎突破力のあるヤゴ・サントスを出してきたので、1on1で富樫のところから崩されるのを嫌ってテーブスを出したのかなという気もする。
しかしテーブスはPGとしてのオフェンスクリエイト能力に課題のある選手なので、日本代表では河村か富樫との併用でないとゲームメイクが苦しい。
また、富樫投入が少し遅かったとも思う。ビーストモード河村が機能不全になってしまったプレイが1つ2つ見えた段階で、ホーバス監督は富樫を投入してもよかったはずだ。
ホーキンソンへ。
26得点10リバウンド。
特に河村とのツーメンゲームで、ブラジル陣の寄せが甘いと見るやスリーを沈めまくった。苦しい時間帯の日本を支え続けた、歴代最高の帰化選手だ。
ありがとう、あなたが帰化してくれていなかったら日本は間違いなくこのステージには立てていなかった。
帰化。
重い選択だ。
ともすれば吾輩たちバスケファンは、帰化選手たちを「バスケ選手として有能であるかどうか」という審美眼のみで見てしまうことがある。
まるで、バスケだけが彼らの存在意義であるかのように。
しかし、彼らにとってバスケとは人生の一部でしかない。産まれ育った国とは違う国の国民として生きることを選ぶというのは想像もつかないほど重い選択だと思うし、この日本という国でそれを選択してくれている帰化選手の皆さんには、感謝しかない。
3&Dを体現した馬場
ここまでほとんどプレイタイムのなかった馬場だったが、この試合ではブラジルにディフェンスでプレッシャーを与え続け、オフェンスではワイドオープンになると見るやスリーを確実に沈めてきた。
フィジカルの強さで押し負けない強さがある吉井と好対照で馬場はフットワークが良いので、縦横の動きによくついていける。多分、吉井と馬場が悪魔合体するとパーフェクトディフェンス超人が生まれるような気がする。
後半、もう少し思い切りよくスリーを撃ってもよかった場面が3つほどあったのが悔やまれるが、総じてこの試合での馬場の貢献度は高かったと思う。
次のオリンピックに向けて彼の課題は明白だ。縦方向への速いドライブだけでは、世界と戦うには武器が足りない。左右に相手を揺さぶるハンドリングスキルとレイアップのフィニッシュバリエーションを増やすことができれば、圧倒的に今よりも相手にとって厄怪な存在になることができるだろう。
課題がよく見えた富永
このオリンピックもまた、未来への過程の1つだ。そう考えたときに、まだ若い富永がこの3試合で出せなかったことは悲観すべきことじゃない。
むしろ、世界トップレベルの国との試合で結果を出すために自分に足りないものがなんなのか?が感じ取れたのなら、それがいちばん大事なことだ。
◯ ディフェンス
まずはこれだ。
富永はディフェンスがいい選手じゃない。というか、正直言って、ディフェンスは悪い。明らかにフットワークが遅いし、ピックへの対応も苦しい。ここを改善するだけで、チームとしてはかなり使いやすくなるはず。
◯自力でショットスペースを生み出す能力
ショットレンジの広い富永は「和製カリー」なる二つ名でも知られるが、元祖ステフィン・カリーが異質なのは、目が覚めるようなディープスリーもそうだが、それ以上に自力でショットスペースを生み出せる巧みなハンドリングスキルだ。
シュートを撃たせるチームセットがなくても、1on1から自力でディフェンスとのズレをつくれるということは、ディフェンスにとっては相当な脅威だ。そこから相手を崩していくバリエーションも増えるだろう。
この辺をどこまで伸ばしていけるかどうかが、今後の鍵になりそうだと吾輩は思っている。
パリ五輪のバスケ男子日本代表に贈りたい言葉
バスケファンの胸を熱くさせてくれた日本代表には、この言葉を贈りたい。
目標としたベスト8やオリンピック1勝という「結果」が出せたのかどうかは、最も大事なことじゃない。
最も大事なのは、そこに向かう強い意志を持ち続けられるかどうかだ。
その意志があれば、おのずと正しい過程を経て、いつかは結果にたどり着くはず。
そして、正しい過程から生まれた結果は継続的な力になって、次の目標に向かって結果を出すというゴールに向かって正しい過程を進むうえでの指針になるという循環が生まれる。
この先の日本バスケの明るい未来を期待させてくれたパリ五輪男子バスケ日本代表に改めて感謝して、この記事を締めくくりたい。
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