右側交通

ローカルルールというものがある。エスカレーターが、東京では右側通行であるが、大阪では左側通行といった状況だ。ルールというと単純化した状況は現実社会に数多く存在するもの。国という単位でみれば、道路の右側通行・左側通行とやらもローカルルールだ。

日本だと自動車は左側交通だが、海外ではその逆の右側交通も多い。ローカルルールからの逸脱行動が他の人間や社会集団に与える影響は大きい。たまたま調べ物をしていると、面白い記事を見つけた。1967年9月3日スウェーデンのストックホルムで「Dagen H(右側通行の日)」と呼ばれる日がある。「Dagen(ダゲン)」とはスウェーデン語で「~の日」を意味し、「H」とは右側通行を意味する Högertrafik の頭文字である。それ以前のスウェーデンの自動車交通は左側通行だったが、周辺国のノルウェー、フィンランド、デンマークは右側交通であり、自動車の往来が活発で、左側から右側交通に変更した方がメリットがあるとのことで、国を挙げて右側交通にチェンジした日のようです。周辺国と交通方式を合わせることは、特にトラック輸送の面でメリットがあったそうだ。
https://rarehistoricalphotos.com/dagen-h-sweden-1967/

 自動車が登場してから1967年9月2日まで、スウェーデンは左側通行で、これは主に習慣によるものだったとされている。18~19世紀にかけて、馬車好通が主流だったスウェーデンは狭い道路で左側通行していたため、自動車の時代になっても、ほとんどが左ハンドルであったにもかかわらず、この習慣が継続していたそうだ。
 しかし、周辺国はどこも右側通行であったため、国境付近の輸送効率を上げるために当時の政府が世論の大反対を押し切って道路交通法の改正に踏み切ったという出来事であり、1963年に法改正が行われ、1967年9月3日に施行されたそうだ。慣れない右側交通にしばらくは大渋滞も頻発したらしい。

 ローカルルールの境目が曖昧な地域だと危険極まりないが、道路交通という国民生活にとって重要なシステムにおいては、強制力を持つ国家の関与が求められる余地があるということなのだろう。国家はルールを定め、違反者には罰則を科すことができる。「Dagen H」、右側交通の日は、昨日まで皆が使用していた左側交通はルール変更で道路交通法違反となるわけだ。改正法施行直後は事故やトラブルが頻発したようですが、国家が皆右側を走らせることに強制力を働かせ、もう一つには罰則を用いてルール違反者に脅しをかけている。昨日までの守るべきルールが翌日には違反の対象になる。
 国民に右側交通シフトに向けたインセンティブを働かせるため、キャンペーンソングなんてのもあったそうだ。また、当時のスウェーデンがテレビ・ラジオともにチャンネルが1つしかなく、他にメディアと呼べるものは新聞や雑誌ぐらいだったため、現代とは比べものにならないぐらい容易に多くの人にリーチする事が出来た点も功を奏したようだ。思ったより右側交通変更に伴う交通事故、死亡者が出なかった60年代末のこの作戦ですが、現在の複雑な交通システム、そもそも自動車台数の増加、そして情報の氾濫した状況では逆に難しいのではないかと心配になります。

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