ドスケベマン(3)
前回のあらすじ
肩口を撃たれ満身創痍絶体絶命のタカシ。
しかしその瞳はドスケベを守ることをあきらめていなかった。
まさに死を覚悟したその瞬間、風と共に現れたのはドスケベマンであった。
――――
砂埃とともに周りの兵士たちが倒れていくのはまるで手品のようであった。
ドスケベマンは凄まじい速さで手刀を、蹴りを、突きを兵士たちに食らわせ、そのたびに糸の切れた人形のように兵士たちが倒れていく。
何が起こったのか兵士たちが理解できるころには、その場に立っているのはドスケベマンとドスケベアーミーだけであった。
「貴様…ただ者ではないデスネ…?」
ドスケベアーミーが問いかける。
ドスケベマンのマスクに覆われた顔の下の表情は見えない。
返事をせずに、ただドスケベマンはドスケベアーミーと対峙していた。
タカシはまるで、おとぎ話のようだと思った。
先に動いたのはドスケベアーミーだった。
「キエェァァーーーーッ!!」
金属音のような声をあげ、腰についた金属の武器を引き抜く。
引き抜くとともに滑るように伸びたそれは、金属製のムチであった。
鋼鉄の蛇、その頭にはまるで蛇の牙を模したような針がついている。
「危ない!」
タカシは思わず叫んだが、ドスケベマンは首をかしげるような最小限の動きで迫りくる蛇の頭を避けた。
「その程度か」
事もなげに言い放つドスケベマンにドスケベアーミーは憎しみに満ちた声をあげた。
「まだだァーーー!!!」
とびかかってきた鋼の蛇は、今度はまるで生きているかのように軌道を変え、そのままドスケベマンの腰に巻き付いた。
「……フフフ、このムチはカーボンメタルでできていマス。一度とらえた獲物は逃がさない、そう、蛇のようにネエ!!」
捉えたドスケベマンを銃で撃とうとした、その時。
みしり。
ドスケベアーミーの腕が音を上げた。
ドスケベマンは巻き付いた鋼の蛇を凄まじい腰の力で引き寄せようとしていた。
「な…な……」
「離れないならそれでいい……!」
強く腰をひねると、ドスケベアーミーの体が宙を舞った。
地面に叩きつけられたドスケベアーミーが体を起こそうとするも、そのまま今度は逆方向に投げられる。
腰の前後運動で、まるでおもちゃのようにドスケベアーミーが前後に叩きつけられていた!
何度目かに叩きつけられた瞬間、脱力した手から鞭が離れ、10メートルほどその慣性のままにドスケベアーミーは飛ぶ。
「あ…あ……」
もはや呻くことしかできないドスケベアーミーは、それでもまだ残った意識の中、近づいてくるドスケベマンを視界にとらえ、そのまま動かぬ体を引きずり逃げようとした。
タカシはまるで子供のころに見たヒーローのように現実感なくドスケベマンを眺めていた。
肩口からの出血は多く、全裸グラビアプリントされたマイクロファイバーバスタオルはなかなか血を吸わない。
イラストの上を血のしずくが球のように転がっていく。
もはや虫の息のドスケベアーミーへドスケベマンが歩いていくのを最後に、タカシの意識はブラックアウトした。
タカシが目覚めたのは、どこかの廃墟であった。
抱きしめていたFM-VとTo Heart2はそのままで、あたりに人の気配はなかった。
ただ、肩口に巻かれたあのイラストバスタオルが、ドスケベマンが確かにいたことを物語っていた。
続く