ドスケベマン (2)
前回のあらすじ
タカシは祖父の形見であるFM-VとTo Heart2を手にレジスタンスのアジトへ戻ったが、親友のヨシオの裏切りによりドスケベアーミーの襲撃を受けてしまった。銃を突き付けられたタカシの運命は。
―――
「さあ、そのドスケベを渡してもらいましょうカ」
厭らしく笑うドスケベアーミー。
目だけで周りを見るが、辺り一面囲まれているようだった。
ソフマップと印字された紙袋の持ち手を握りしめる。
ここでこれを渡せば命は助かるだろう、しかし。
「……これは、爺さんの形見――ッ!」
破裂音と衝撃、そして火薬のにおい。
後ろにのけぞって思わず座り込むと、一歩遅れて肩から灼熱にも似た痛みが襲ってきた。
肩を撃たれたのだと気付いたのはそのあとだった。
「もう一度言いますヨ、そのドスケベをこちらに渡せ」
眉一つ動かさずにドスケベアーミーはタカシに告げる。
あくまで今のは警告なのだ。次は脅しではないことを言外ににじませる。
タカシの脳裏に、在りし日の祖父の姿がよぎった。
「ワシがタマ姉に出会うためにこの作品はあったと思う」
そうやって熱っぽく、どこか少年のようにタマ姉への愛を語る祖父の姿。
それは何物にも代えがたい宝物を抱きしめているかのようだった。
「……だ」
「はい?」
「いやだ」
肩を押さえながらも、こちらを睨み付けたタカシをドスケベアーミーは心底面白いものを見るかのように見た。
「アハハハハハハハハ!これはこれはご冗談を」
「これは渡せない」
「アハハハ!仕方ないですネエ!」
周りを取り囲むアーミーたちが一斉に銃を構えた。
自分に襲い掛かる鉛玉の感触を想像して、タカシはぐっと目をつぶった。
その時―――
そう、それは最初はただの風だった。
兵士の一人が突如舞い上がった砂に一瞬下を向き、また顔をあげたその瞬間。
「何?」
そう、顔をあげた瞬間、大地が隆起して眼前に迫っていた。
いや、違う。その兵士が地に倒れていたのだ。
声を出そうと息を吸った瞬間、口の中に鉄の味が広がった。
何だこれは。
なんだ、これは。
かろうじて隣にいたはずの仲間のほうを向くと、そこには。
「何ダ!!」
唐突に部下を襲った異変にドスケベアーミーが声を上げる。
周りを囲んでいたはずの部下は全て倒れ、そこに立っていたのは。
「貴様…一体…」
男は何が起きたかわからず呆然としているタカシに全裸グラビアが印刷されたタオルをそっと渡した。
「あとは、俺に任せろ」
「あなたは……?」
「俺は、ドスケベマン」
そう、ドスケベマンであった。
続く
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