
どのようにすれば大規模修繕工事は成功させることができるのか その③大規模修繕工事での設計業務とは?

① 大規模修繕工事での設計業務とは?
設計業務というと図面を作成するようなイメージがありますが、大規模修繕工事は、足場を架けて、外壁補修工事、防水工事、塗装工事などが主な工事となりますので、何かを製作するような工事がない限り、図面を作ることはありません。劣化診断に基づき、工事範囲の検討、工事数量の積算、工事仕様及び設計予算の作成。それらが大規模修繕工事の設計業務としての主な仕事となります。工事数量の積算では、前回の大規模修繕工事の数量があったとしても現地で実測するなどして、再度数量を積算します。
② 大規模修繕工事での工事範囲とは?
設計業務で考える工事範囲の検討とは、足場を架けて工事をする外壁などは当然、工事範囲に含めますが、基本的には、劣化診断の結果にもとづき、工事の施工範囲とするのか除外するのかを考えます。例えば廊下の塩ビシートなどは毎回の大規模修繕工事のたびに張り替える必要はなく、ルーフバルコニーの防水工事については、防水層の上に保護コンクリートが施工されている場合は、防水層の劣化が露出防水ほど進まないので、1回目の大規模修繕工事では除外することもあります。
③ 設計予算とは
大規模修繕工事の設計業務で大規模修繕工事費の目安として設計予算を作成しますが、設計予算は大規模修繕工事の実勢金額の単価に多少のプラスアルファを加算した金額とします。設計予算が高すぎても低すぎても実際に大規模修繕工事の施工会社から提出される見積の妥当性の判断が難しくなります。
また、設計予算を検討する際には、そのマンションの長期修繕計画も合わせて検討すべきです。先々のことも考えて、大規模修繕工事の設計予算を検討する必要があります。
④ 改善も考える
大規模修繕工事の基本は現状復旧ですが、状況に合わせた改善工事の立案もすべきです。例えば照明のLED化工事を大規模修繕工事と合わせて行うことにより、管理組合の電気代が安くなり、器具の裏側の天井などを塗装しますので、先々、照明器具を交換する際に器具が小さくなってもその部分の塗装面の色の違いが小さくなります。塗装工事ということであれば、外壁の一部の塗装の色を変えることにより、アクセントにもなり見映えも良くなることもあります。
⑤ 設計の説明会を開催しましょう
理事会や修繕委員会の皆さまと協議して、まとめた大規模修繕工事の設計内容についても説明会を開催することをご提案しています。どのような工事を大規模修繕工事にて行う予定なのか、事前に管理組合の皆さんに知っていただくことは重要なことです。そういったステップを踏むことにより、大規模修繕工事の成功に近づいていきます。
大規模修繕工事の設計では、長期修繕計画を確認し先々の資金計画も考慮したうで、劣化診断の結果に基づいた設計業務を行い、合わせて改善工事についても積極的に検討すべきです。それを管理組合の皆さまにご理解いただきながら計画を進めことがたいへん重要です。