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いい施工会社、いい管理会社を紹介できない理由について
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管理組合として、施工会社や管理会社を選定する機会は少なくありません。施工会社であれば大規模修繕工事に限らず設備工事や日常の小修繕工事。管理会社であれば、毎回の契約更新も管理会社選定しているとういうことです。管理組合の皆さんよりいい施工会社があったら紹介してほしいと、ご相談をいただくことがあります。施工会社などを選定する際に「前回の会社が良かったから今回も」と考えがちですが、これは必ずしも最適な選択とは言えません。実際には、担当者の変更や会社の方針の変化によって、過去の成功が次回も保証されるわけではないからです。
管理組合の立場としては、常に最良の会社と契約を結びたいものですが、そのためには 一から比較検討することが不可欠 です。今回は、なぜ毎回しっかりと比較検討を行うことが大切なのか、そしてそれが施工会社や管理会社にとってもプラスに働くのかを解説します。
1. 過去の実績が未来を保証しない理由
施工会社や管理会社の評価は、どうしても過去の経験に引っ張られがちです。「前回の修繕工事で問題がなかったから、今回も任せよう」「この管理会社はトラブルなく対応してくれたから、引き続き契約しよう」と考えるのは自然な流れです。しかし、以下のような理由で、前回の成功が次回も続くとは限りません。
① 担当者が変わると対応が変わる
施工会社や管理会社は組織で動いていますが、実際の対応を決めるのは 担当者 です。優秀な担当者がついている間はスムーズに進む案件でも、担当が変わった途端にトラブルが増えるケースは少なくありません。逆に言えば、前回の施工会社が良かったとしても、今回の担当者のスキルや姿勢が異なれば、結果も異なる可能性があります。
② 会社の方針や経営状況が変化する
企業は常に同じ状態ではありません。経営方針の変更、人材の流出、新しい事業へのシフトなど、さまざまな要因によって、サービスの質が変化することがあります。例えば、ある施工会社が業績を伸ばした結果、案件が増えすぎて品質管理が追いつかなくなることもあります。逆に、経営が厳しくなり、人件費を削減した結果、以前のような丁寧な対応ができなくなることもあるのです。
③ 過去の成功が「慢心」を生むことも
長く付き合いのある施工会社や管理会社は、管理組合との関係に安心感を持つ一方で、「選ばれて当然」という意識が生まれることがあります。その結果、提案の質が落ちたり、対応が雑になったりするリスクがあります。逆に、定期的に比較検討が行われることで、会社側も適度な緊張感を持ち、サービスの向上に努めるようになります。
2. 毎回比較検討することのメリット
では、管理組合が毎回しっかりと比較検討を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
① 施工会社・管理会社の質を保つ
企業は競争の中でこそ成長します。管理組合が定期的に他社と比較することで、現在の施工会社や管理会社にも「選ばれ続けるための努力」を促すことができます。契約が自動的に更新される環境では、どうしてもサービスの質が低下しやすくなります。逆に「次回も選んでもらうために、良い仕事をしよう」という意識を持たせることで、より良い関係を築くことができるのです。
② 新しい技術やサービスを取り入れられる
建築・管理業界は日々進化しています。新しい工法や設備、管理の手法が登場しているにもかかわらず、長年同じ会社に任せていると、こうした最新の技術やサービスに触れる機会が減ってしまいます。比較検討の過程で他の企業の提案を聞くことで、より合理的で効率的な選択肢を見つけることができます。
③ コストの適正化が図れる
長年同じ会社と契約していると、契約内容や価格が「なんとなく決まっている」状態になりがちです。しかし、市場の相場は常に変動しており、適正価格も変わります。他社の見積もりを取ることで、現在の契約が本当に適正なのかを確認でき、場合によってはコストダウンにつなげることも可能です。
3. 良い施工会社・管理会社を育てるために
優れた施工会社や管理会社と良い関係を築くには、単に長く付き合うだけではなく、「適度な競争環境」を維持することが重要です。管理組合が比較検討を怠らず、公平な評価を行うことで、企業側も常に高い品質を提供するインセンティブを持ち続けることができます。
具体的には、以下のような姿勢を持つことが望ましいでしょう。
定期的に相見積もりを取る
過去の実績に頼りすぎず、最新の情報を基に判断する
現在の会社にも、選び直すプロセスがあることを伝える
契約更新時には、他社の提案と比較した上で決定する
このような取り組みを続けることで、管理組合もより良いサービスを受けることができ、結果として「本当に良い施工会社・管理会社」との関係を築くことができるのです。
まとめ
施工会社や管理会社の選定において、「前回が良かったから今回も同じ会社に」という考え方は必ずしもベストな選択ではありません。担当者の変更や会社の状況変化、慢心などによって、サービスの質が変わる可能性があるからです。
そのため、毎回しっかりと比較検討を行い、施工会社や管理会社に適度な緊張感を持たせることが重要です。このプロセスを通じて、管理組合はより良いサービスを受けることができ、企業側も品質向上に努める環境が生まれます。
良い関係を長く続けるためには、あえて「選び直す」というステップを踏むことも、重要な戦略のひとつなのです。