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『たべある記』ひとりしずかになれた夜@平和台
少し歩いてから、しずかな場所で呑みたい。
と、思った。
長めの残業で、夕飯は家で食べないことにしたからだ。この時間に帰っても家族は寝ているだろう。仕事に没入してやっと終わった達成感もありつつ、疲労感もありつつ。仕事を終えた高揚感もあったので、今日は家にすっと帰りたくないなあと思う。
酒を飲んで帰りたい、静かなところで。ビールではない、しみじみ日本酒を呑みたい。つまみは刺身がいい。帰宅前におちついた気分になりたい。そんな気分で適当な駅で降りる。それからてくてく歩く。
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行きたいのは駅前の店ではない。なので離れて住宅街へ。気の向くままに歩く。段々と暗くなってゆく。店は見つからない。さむかぜの中、早足で歩く。次第にあったまってゆく。やはり店は見つからない。
店はないのかもしれない。家しかないのかもしれない。そう思った矢先に店がぽつんとあった。
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狭い道路沿いに、少し奥まって。小さな看板で、主張しない照明で。店があった。
店内をのぞき見る。客は誰もいない。店主もいない。留守なのだろうか。寝ているのかもしれない。家に帰ると家族は寝ているだろう。誰もいないところで呑みたい。一日を終えたい。
店に入る。ゆっくりと店主が出てくる。コートと上着を脱いで、適当にカウンターに座る。今日は日本酒なので、そのように店主に告げる。今日の日本酒ということで、5本ほど出てくる。なにを呑みたいのか、しばらく悩む。店主はしずかに佇んでいる。
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日本酒をえらぶ。刺身もたのむ。ほどなくしてサーブがされる。だらだら呑んでいると、お通しが出てくる。
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ちびちびとつまみながら呑む。まずは、おでん。寒天下だったので沁みる。ふきとこんにゃくも食感が楽しめる組み合わせ。日本酒がすすむ。箸休めとしてのポテトサラダ。大皿いっぱいでなくていい日本酒に合う味付けで、これもうれしい。日本酒がすすむ。
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そうこうしているうちに、刺身3種盛。店主に「あん肝は大丈夫ですか」訊かれたが、むしろうれしい。到着した刺身たちをみると、鮭、マグロもひと仕事してある。このひと手間がおいしいし、うれしい。この組み合わせだと、ガリの量もありがたい。日本酒はすすむ。
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さきほどとは違う日本酒をチョイス。ひとりで呑んでいる時になぜか友人のことを思い出したりすることがある。長野に住む友人を思い出したので、川中島にする。
ひとしきり日本酒を呑み終えて、もう少し呑みたい気分だった。焼酎にする。であればつまみも頼もう。
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いつもなら口開けなのだが、ここにきての煮込み。日本酒と刺身でしっぽりと考えていたが、やはりお肉も食べたい。
くさみもなく、食べやすい濃度の、やさしい味噌味。まさに王道である。あっというまに焼酎ともどもおなかに入ってしまう。大満足。
今日はしずかに呑めた。大満足だ。店の雰囲気もよかった。店主が過剰に話しかけてこない。いや、たくさん話しかけてきてくれて嬉しいことも多々あるのだが、今日はしっぽり呑みたかった。それに初訪問の美容院で話しかけ過ぎられると困ってしまうタイプなのだ、自分は。その点、ここの店主は声はかけ過ぎず、そのかわり料理には手間をかけてくれる人だった。酒とつまみがおいしければ、言葉はいらない夜もある
心も体もあったまった。五千円を出し、おつりをもらい、店をあとにする。酔い覚ましに住宅街の中を駅に向かって歩く。外はやはり寒い。家に着くころには、ほどよくさめているだろう。
おしまい。
↓今日のお店↓
ちなみに地下鉄赤塚からだと、結構近いです。歩きたいなら平和台からが丁度いいです。ただ行くにしても、2つの楽しみ方ができます。