小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第4回:副業OK
誠人はちょっと冷静になっていた。
ここまで1時間半ほど今田から話を聞いて、フリーコンサルタントになることはとても魅力に思えた。
ただその反面、会社を辞めるということもイメージできなかった。
さっきは自分から「成功できるんですかね?」と聞いてしまったが、これ以上今田の話を聞くとずるずると巻き込まれるのではないかと少し心配になった。
こういう時は、早めに自分の意思を伝えたほうがいいだろう。
「今田さん、俺、今すぐに会社辞める気はないんですけど」
「誰が会社辞めろって言った?副業でやるんだよ」
「え、」
「会社を辞めるなんてリスクを背負う必要なんて全くない。一昨年から会社も副業OKになったろ。きちんと副業申請すれば全く問題ない」
「いや、そんな、今の仕事だけで手いっぱいなのに、もう一つの仕事なんてできるわけないじゃないですか」
今田はiPadの画面を再び手に取り、誠人に画面を見せてきた。
「ここに”稼働率”って欄があるだろ」
「はい」
そこには20%、40%、100%などの数字が並んでいた。
「ここが100%だったら、平日の9:00から18:00までフルコミットでその会社のために働かなきゃいけないということだ」
「ということは20%だと」
「そう、週に1日でいい。でその横に書いてある報酬は100%稼働時での報酬だから、報酬も20%になる」
「じゃあ、この案件だと報酬が100%で140万円だから。。。。週一で28万円ですか?!」
「そういうことだ。今の会社にいながら、今の給料をキープしながら、月にそれだけもらえたらおいしいと思わないか」
「年間にすると、300万円以上の副収入ってことですか。それはすごいですね」
「この高い報酬こそがフリーコンサルタントの最大のロマンだ」
誠人はまさにロマンを感じていた。
年に300万円あれば遊ぶには全く困らなくなるし、車だって買えるだろう。
いや、10年ためれば3000万円。大きな家に住むのだって夢じゃないかもしれない。
先月同じ部署の2年先輩の田中が結婚して新居のマンションを購入したというので、皆で遊びに行ったことを思い出した。
田中には失礼だが、中古の狭いマンションにサラリーマンの現実を見た気がして少し誠人の気も落ち込んだものだ。
それが年に300万円以上の副収入があれば、、、、
高鳴る鼓動が今田にばれないように静かに話した。
「まぁ、リスクがないんだったらまずはエージェントに登録してみます」
「登録の作業自体はすぐに終わるが、そのあとすぐにレジュメの提出を求められるから、準備してからのほうがいいぞ」
「レジュメ?」
「職務経歴書のことさ。俺も転職の経験がなかったから去年初めて作ったがな。これに棚卸しした自分のタグをしっかり書き込むのが大事だ。なので、まずはしっかり棚卸ししてみな。俺は自分の棚卸しにたっぷり1週間はかけたぜ」
誠人と今田はそのあとも1時間ばかり話をした。
時計が10時を回り、酔いも回ってきたので誠人はおいとますることにした。
「今田さん、きょうはありがとうございました。ごちそうさまでした」
「ああ、久々で楽しかったよ。また飲もうな」
今田は最後はフリーコンサルタントの話はしてこなかった。
ところが帰り途の誠人の頭の中は、フリーコンサルタントのことでいっぱいだった。
いや、実際は前々から欲しいと思っていた車のことでいっぱいだったのかもしれない。
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