私とピアノ

私はピアノを10年ほど習ってきた。
今はもう真剣にはしていないが、
趣味で弾く程度である。

よくストリートピアノに
ふらっと立ち寄り、
徐に椅子に座り、
過ぎゆく人を横目に、
私の世界を創り上げる。

よく弾く曲は3曲ある。
ベートーヴェンのピアノソナタ
悲愴、特に第二楽章。
FFⅩより、ザナルカンドにて。
Undertaleより、メガロバニア。

好きな順に並べている。

それぞれの曲には思い入れがある。
その中から2つ、紹介していく。

悲愴第二楽章

この曲はピアノ教室で出会ってから、
5年以上は弾き続けている。
弾くたびに雰囲気が変わるので、
飽きない。

この曲は普通に弾くと、
タイトル通り悲しい曲である。
ただし、激しい悲しみを表現している
悲愴第一楽章、
淡々とした悲しみを表現している
悲愴第三楽章と比べると、
穏やかな曲である。

言葉で言い表すならば、

悲しみの向こう側

であろう。

悲しみの渦中にありながらも、
どこか穏やかでいられる気持ちは、
人との永遠の別れや、
受験、就活の失敗というよりは、
その後、故人を偲んだり、
軽い笑い話としたりするような、
安心が隠されている。

私はこの曲を弾き始めてから3年ほどは、
悲しみを主に表現した弾き方をしていた。

だが、悲しみの向こう側を意識し、
曲の構成、調などを見つめ直した結果、
私はこの曲を2つのパターンで
弾くことにした。

1つめは、その時の気分によって、
弾き方を変えるものである。
弾くたびに雰囲気が変わるのは
このためである。

嬉しい気持ちならば踊るように、
怒っているなら荒々しく、
哀しい気持ちならば心を沈めて、
楽しい気持ちならば軽やかに。

ピアノを弾く時は大抵
楽しい時か哀しい時なので、
他は滅多に登場しない。

2つめは、喜怒哀楽、
4つ全ての感情を表現する弾き方である。
1曲の中に全ての感情を入れ込むことは
容易なことではない。

この弾き方をする時は、
演奏会など、ある程度の技量が求められ、
さらに、自分なりの解釈が必要な時である。

第二楽章は、悲しみの向こう側を
表現できる曲である。
では、悲しみの向こう側とは何か。

様々な解釈ができるだろう。
例えば、安らぎ、空虚など。
(これ以外あまり思いつかないのは内緒)

私の解釈は

悲しみは決して長くは続かない。
ネガティブなことがあったあとは、
ポジティブなことが必ず起きる。

である。

つまり、喜怒哀楽で言うところの
嬉しさ、楽しさである。

なお、怒りに関しては、
あまり表面に出さなくて良いと考える。
はっきり言ってしまうと、
第一、第三楽章は怒りの要素が多いので、
わざわざ第二楽章で表現する必要はない。

ではなぜ、この解釈に至ったのか。

ある日、演奏会のオーディションを受けるため、
1人でピアノを練習していた。

すると、友達の女の子が
聞きに来てくれたので、
第二楽章を弾いた。

弾き終わり、その子の方を見て、
私は驚いた。
その子は涙ぐんでいたのだ。

私の驚きが喜びに変わるまで
あまり時間はかからなかった。

その時、悟った。

これが私の喜びであると。
ピアノを弾き続ける価値であると。
悲しみの向こう側は、
私を幸せな気持ちにしてくれた。

その後、私はその女の子と約束をした。

今後、この曲を弾くたびに、
たとえ君が遠くにいても、
君に演奏を捧げる。

と。

私にとって、第二楽章はもはや、
悲しみの向こう側ではない。
彼女のための、曲なのだ。

この時の嬉しい気持ちを忘れない。
そう誓ったのだ。

これが、私のこの曲への
思いである。

第二楽章を弾くたびに、
もう会えない彼女の顔が目に浮かぶ。

あ、死んではないよ。
遠くて会えないだけ。

ザナルカンドにて

FFⅩを代表する曲である。
ゲーム音楽としてかなり高い評価を
得ており、人気投票などでは上位に入る。

この曲も、第二楽章同様、
とある女の子に捧げている。

その子は高校の時の後輩で、
フルート奏者である。
私は彼女に、この曲のソロをやってほしい、
と頼んだ。

私が伴奏ピアノで、
彼女がフルートソロである。

彼女は快く承諾してくれ、
それから練習が始まった。

だが、卒業と共に、
一緒に演奏することはできなくなった。

伴奏しか練習してなかったので、
メロディラインの練習に
時間がかかった。

この曲はとても悲しい曲である。
ストーリー自体もとても悲しい。
主人公とヒロインが離れ離れになる、
このストーリーは私の心と共鳴した。

今頃元気にやっているだろうか。

また、一緒に演奏したいと、
叶わぬ願いを持ち続けている。

もう疲れたので、この辺で終わる。

終わりに

私がピアノを弾いている様子は、
YouTubeで見ることができる。

駅のストリートピアノで、
ザナルカンドにてと、
メガロバニアを弾いている。

興味がある方は、
見てみてください。

だいぶ下手ですが。
ご容赦ください。

それでは。

またね。

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