縁の側の逆噴射2019ライナーノーツ ROAD TO MEXICO
逆噴射小説大賞2019終了!!!! 参加者の皆さんはお疲れさまでした。 そうでない方は是非来年に参加を! 楽しいぞ!!
さて今回の記事はライナーノーツ。なんか参加者の皆さんが書いてらっしゃるのをみて「あ、何かかっこいい」と思ったので、こうして筆を執っている次第です。いいですよねライナーノーツ。音楽系能力者の必殺技みたいで。
ちなみに私は今年の2月頃に忍殺プラスとDHTマガジンを購読し始め、逆噴射先生の講座を読んで「俺も何か書いてみたいなあ」と思いつつ中々行動に移せずにいたうらなり坊やだったのですが、今回の大会を機にいっちょやるかと発起して銃ーGUNーを握りこのメキシコに足を踏み入れた感じですね。 ツイッターアー垢とnote垢も急造のできたてホヤ男くんですが、このパルプスリンガーたちの祭典に五発もの弾丸を放ち真の男であることを完全に証明したのでまだ作品を未読の方は是非読んでみてください。面白いぞ。
では早速振り返っていきます。
1.凶鳥、朱に交わりて
記念すべき一作目にしてnoteでの初投稿作品。なのでnoteの仕様に大分戸惑いながらアップしました。(なんで改行一回で四行開くんだよ)
内容は超能力犯罪者を狩る政府側の暗殺者もの。Psycho-passとかシルバー事件とかあんな感じですね。ただ政府側の暗殺者、今回の話では京都弁の少女がケチな悪党よりよっぽどヤバイ快楽殺人者なのがセールスポイントですかね。和服+京女+日本刀+血塗れ+マジキチスマイル……最強だな!(確信)
構成的にも"警察の手をどうにか潜り抜け大金を盗むも無慈悲に殺される能力者"と"警察に手綱を握られるも思う存分殺しを愉しむ能力者"で対になってるし、"触れたものを透明にするが自分は透明になれない"シドを"自分も透明になれる完全上位互換の透明化能力者"が狩るのがブッダの掌の上で踊るマジックモンキーを感じさせて良いのではないでしょうか。文章もいい感じに引き締まってると思うし、最後の方に鮮烈なビジュアルを提示できたりと五作品のなかではかなりの自信作。
ただ最後の最後に耽美な描写をぶち壊す文を入れてしまったのが良いのか悪いのか。メリハリって言うには余りにも無粋というか、う~ん。あと首を裂いた時に血飛沫を上げるべきかでも悩みました。その方が派手で気持ちいいけど、出さないほうが少女の血まみれ姿が強調できるし驚きもあるかなあと思い結局今の形に。でもどっちが正解かなぁ……
あと一作目だったので文字数の加減が分らず書き上げた後100文字くらいオーバーしていたのに気づき、頭を抱えながら何とか800文字に収めました。その結果冒頭の老刑事の衣服と名前が削られ、カリートはシドに改名し、その他細かい描写を削りまくり……ああ、800文字の意外と短いことか。でもかなり削ってもストーリーの流れは全く変えずに見せ場まで持っていけたので案外やれるもんですね。やはりDHTの皆さんはしっかり計算しておられる……
2.テツジン・リーグ
これはねぇ、物凄い勿体ない作品なんですよねぇ。投稿直後は「よっしゃあ最高に面白いパルプができたぜェー!」と興奮してたんですが、改めてみると「もっと面白くできるやろ……節穴くんかな?」と反省しきりです。
まず「テツジン」が何かをもう最初にバーンと説明すべき。"料理の鉄人"という料理番組を知らないと料理ものだと分らずひたすらモヤモヤする(僕も名前しか知らないっす)のがまずい。一応料理ものだと考えられる描写は出てくるものの、わざわざ読者に推理させるほどの要素でもなく読み心地を削ぐ以上の効果が無いですね。
この「テツジン」とは要するに"街中に設置された凶悪生物を倒し討伐ポイントを稼ぐ。討伐した生物はキッチンで待つ調理班へと転送し調理、出来上がった料理を市民に提供し美食ポイントを投票してもらう。さらに一チーム一品だけ特別審査員に料理を渡すことができ、特別審査員のポイントはバカ高いので逆転要素になる"という料理とバトルを組み合わせた競技なのですが、これを800文字以内で納めるならもっといい展開がありました。
それは"めっちゃ強い生物とのバトル"→"手短に世界観説明&調理班のシーンへの繋ぎ(残り時間は少ないが、キッチンはどうなっているんだァー!? とでも言わせる)"→"調理シーンでめっちゃ美味そうな料理の描写"という流れ。これならド派手なアクションで開幕からロケットスタートを決め、途中からは超火力の飯テロをブチ込むという二段構えの構成で読者を確実に殺すことができましたし唯一無二性も抜群でした。
現在の形は何だかんだ見せ場までテンポよく行けているものの競技開始前特有の緊張感もなく「そもそもテツジンって何だ?」という引っかかりのせいでイマイチ乗り切れない上に読者を「これは!?」と唸らせるほどの捻りもナシ。インパクトが弱い。う~ん、アイデアはいいんですけどねえ……
ただ「凶悪殺戮養鶏デッドブロイラー」の語感の良さがヤバイのでどこかで再利用したいです。
3.∞の王子さま! 八王子高校戦乱編
映画「HIGH & LOW THE WORST 」を見た僕は思いました。「あ、イケメンって凄え」と。
なのでイケメン同士が戦うイケメンバトル小説を書きました。それがこれ。
「エッ? イケメンが戦うって言ったって大体の作品の登場人物はイケメンだからわざわざ特筆するほどの長所でもないだろ……」とお思いのアナタ。これが違うんです。このイケメンの戦い(作中ではPVバトルと呼称)、形式的にはほぼほぼラップバトルに近く、つまりイケメン同士のバトルとは"イケメン二人が大観衆の前で順番に自作PVを流し、自分の考えた最強のイケメンシチュエーション、アングル、仕草を見せつけ合う"ようなやつを意味します。
何を言っているか分からない? ほら、あなたの推しアーティストのミュージックビデオを思い浮かべてみてください。なんか状況とかよく分かんないけど雰囲気が抜群に良く主役であるアーティストが映えていてカッコいい映像に覚えがあるでしょう? あんな感じのイメージビデオを交互に見せ合い、どっちが魅力的なイケメンかを競い合う訳です。
しかも作中ではその映像をイケメン特有の超能力「イケメン力」を用いてどこでも手軽に作り出せるのです。つまりヤンキー漫画のケンカのノリでイケメン同士が最高にイケメンな絵面で戦う様が気軽に描ける! 目と目が合ったらイケメンバトル! これは熱いですよ!
ただ逆噴射応募作としては”冒頭”にこだわった結果中々イケメンの魅力が伝わりにくかったかなあと思います。「なんか面白い雰囲気だな」とは感じて貰えても爆笑したり感動したりできるシーンは無くややインパクトに欠けるか。ここは最大の見せ場であるイケメンバトルのシーンから始めて「うおっ凄えイケメン……」と思わせる描写で読者の心をグワッと掴み(例えば今川義元が攻城塔の上より放った蹴鞠から生まれた炎のドラゴンを織田信長が空飛ぶ槍の上で迎え撃ち、ドラゴンの猛攻を華麗に躱しつつ最後は戦国ショットガンでド派手に撃破する等)ボルテージを最大に高めた上で後攻側のイケメンをチラ見せし、「先攻のアイツがあんな凄いことをやってのけた後でコイツは一体どんなイケメンを見せてくれるんだ!?」と引くのが正解だったかもしれませんね。
う~ん、アイデアはいいんですけどねぇ……
4.ロス 共犯者たち
過去視ができる主人公ロスが大企業の悪事を見抜き訴訟を起こして大量の金をせしめる、というのが粗筋。脳内に降りてきた”海辺のマダムとカフェテリアで二人きり”のイメージを膨らませ耽美的アトモスフィア重点で話を作った結果、800字の中で起承転結をつけエモい描写もあり次の展開への引きも入っている、と流れとしては纏まっていると思います。
ただ今見返すと致命的な部分があり阿鼻叫喚。これも「テツジン」同様余計な分かり辛さのせいで読み心地が悪いものになってるんですよねえ。具体的な場所はここ↓
「殺し屋ギデオンが銃を持ってリビングに入って来た時、あんたは特に驚きもせず夫の方へと向き直る。知っていたからだ」
「その根拠は?」
「本人に聞いたし、この目で見た」
マダムは苦笑する。ギデオンの口が軽い訳じゃない。奴には大きな貸しがあった。
この辺の言い回しが分かりにくいのなんの。何故分かりにくいのかといえば文字数の関係で描写を削りまくった結果でもあるんですが、一番問題なのは”ロスに過去視ができると明言していない”という点に尽きます。過去視ができることをキッチリ分かって貰えてない場合、この文だとロスが殺人現場にいたともとれるので非常に混乱させてしまう可能性があるんですね。
他は割といい感じに書けたと思っているので、直すなら問題箇所をまるっと削った上で過去視ができることを明確に描写し、とにかく一回読んだだけでスッと分かってもらえる作りにするべきでした。う~ん、アイデアは(ry
5.ラブサバイバー
最高傑作。言い回しとかもっと凝れたな~と思うところはあるもののトンデモあほあほ展開がテンポよく進みアクションも派手で独自性もある良い作品だと自画自賛できるくらいには自信作です。
意図した訳ではないんですが、上で言及した”説明不足により分かり辛さ”が一切ないので自然に物語に入り込める作りになっています。これは”この作品の敵はドスケベゾンビですよ”と序盤にスパッと明言してあるからで、やはりこういうことを最初に説明した方が上手くいくんだなと実感しました(五作品投稿し終わった後で)(手遅れ)。
あと世界観説明が全然退屈じゃないのがいいですね。周囲の状況を説明するだけでどんどんトンデモ描写が溢れて来るのでダレることなくゾンビ溢れるマイアミを描写できています。本当は車上でパンティーをぶん回すカエデとか入れたかったんですけど、文字数がね……
そしてスケベが敵でありながらエロ描写が全然なかったのもアホに振り切れてて正解だったかなと。これはどうしてそうなったかと言うと、タイトルを考えた時に最初は”感染””スケベ”要素を押し出そうとして「インモラル・ハザード」とか「デトロイト・スケベ・シティ」とかにしようとしてたんですが「いやこれを書店のレジへ持っていける奴はいねえだろ」と冷静になり、その影響で本編も比較的健全な作風を死守した結果現在のノンストップアホアホアクションに至ったわけです。やはりタイトルの大事さを説いたDHT及び逆噴射先生は偉大なんやなって。
ちなみにギャグテイストに見える本作ですが冷静に見てみると敵は”人間のフルスペックで襲い掛かって来るゾンビ”なので追われる側の恐怖と緊張が実際ヤバく、主人公に守るべき愛娘がいることでサバイバルのREALさがより切実なものになっています。こういうゾンビものは例え世界観がぶっ飛んでいても逃げてる正常な人々は必死であって欲しいので……
まとめ
こうして振り返ってみると五作中三作は出来栄えに納得できていないという惨憺たる有様。プラクティス不足が如実に表れていますね……。しかも早々に全弾撃ち尽くしておきながらその三日後くらいにはこんな後悔をしていた訳で、僕の熱に浮かされっぷりと堪え性の無さが今回の体たらくを招いたことは明白。お前何だそのはしゃぎっぷりは。メキシコでそれは死ぬだろ。
ただ実際に作品を投稿し自分で振り返ることで「次はもっとこうしよう」とか「もっと完成作品を寝かせて冷静に振り返ってみよう」とか反省点を明文化できたのは大きな収穫だと思うので、来年こそはCORONAを掻っ攫いたいです。
そして何より”人に作品を読んでもらう”ことが途轍もなく嬉しいということが骨身に沁みたので、大会に参加したことに後悔はありません。読んだ人にスキを付けて貰えたお蔭で”完成度はともかく自分のアイデアや文章を面白いと思ってくれる人がいるんだ”と実感できましたし、後はひたすら修練に臨み己がアイデアを一つの作品として昇華出来るよう精進するっきゃないっすね。Practice Everyday……スッゾコラー! ヤッチャラジャレッケラー!
あと、大賞応募作は時間がかかっても全部読み切り、大賞の発表前までには受賞作予想記事を書こうと思っています。こちらは気長にお待ちください。
それではここまでお読み頂きただきありがとうございました。◆未来へ…◆