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テツジン・リーグ

 西暦2934年。快晴の下、超満員の新ナゴヤ国立競技場はテツジン達への期待に沸き、競技の開始を今か今かと待ち侘びている。
 場内の選手は対称的に静かだ。しかしその様子は一様ではない。深呼吸する者。ストレッチを行う者。銃を抱え、震えて縮こまる者。得物の感触を確かめ、笑う者。
「アイツら凄ぇ迫力だなあ! な!」
 屈強な白人が隣の短パン学ランの少年に話しかける。彼らの先には出入り口手前に並ぶ五つのケージ。中身は2m超の強靭な肉体を持つ凶悪殺戮養鶏、デッドブロイラーだ。その強さに対し肉質、可食量共に平凡。討伐ポイントも低い。典型的な賑やかし用員だ。
 選手達は早くから選択を迫られる。リスクを避けて他のエリアに急ぐか、最速で食材を調理班へと転送し、制限時間を無駄なく使うか。
 もしくは超速のタックルを受け、無様な人肉と化すか。
「ハン。うちのワン公の方が強え」
「マジか! 俺、マッシュ。お前は?」
「テツオ。宮本鉄雄。アンタ、武器は?」
「拳一つ! ま、寝技の方が得意だが」
 BEEP! 開始一分前のアラートが響く。二人は正面に向き直り、鉄柵を啄む魔鶏と対峙した。その視線がテツオと合う。魔鶏はニヤリと目を細め、獰猛な笑いに体を震わせた。
 気に入られたらしい。上等だぜ。二刀剣士テツオは脇差を握り、腰を落とす。
『アーユー、テツジン!? レディ……』
「頑張ろうな」
 マッシュの言葉の後、「ゴー!」の声が盛大に轟いた。
 ブオン! テツオはサイバネ脚をブーストさせ爆進。競技者の群れから抜きん出る。
 ケージが開き中央のブロイラーも猛発進。開始三秒、二者は舞台の中央に躍り出た!
「グェアァー!」
 殺人タックルの真横をすり抜け、脇差一閃。左翼の付け根が裂け、血染めの羽根が宙を舞う。
「グォ!?」
 魔鶏は怯み、たたらを踏む。直ぐに振り向くがテツオは既にその上空、太陽を背に二刀を交差させ、首を落としにかかる。
「鶏刺し一丁だ」

【続く】

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エンガワ
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