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物語のタネ その壱『お留守番ヒーロー #11』

俺の名前は、滝沢さとし。
表の顔は、高齢者向け介護士だけど、もう一つの顔は

「お留守番ヒーロー」

ヒーローの留守を預かり、出現した怪獣、怪人をもてなすのが俺の役目。
前回は、仮面ライダーストロンガーさんのライバル「百目タイタン」さんがいらっしゃいましたが、なかなか緊張しました。
怪人怪獣さんも色んな方がいらっしゃいます。
そして、今回は、これまた人気者さんとの思い出です。

レッドキングさん

ウルトラシリーズではバルタン星人さんに次ぐ登場回数という、レジェンド中のレジェンド。
この前は、ちょうどウルトラ一族が年に一度の家族、いや一族旅行中で、タイミングが悪いというかそんな時でした。

「オーレは、レッドキング〜♪オイラが歩けば足跡残る〜♪ウルトラ、あれ?誰もいないの?」
「すみませーん。皆さん、今一族慰安旅行中でして」
「えー、聞いていないよ」
「ウルトラマンさんからは『この期間いないけど、とレッドキングさんにLINEしておいた』とお聞きしているのですが」
「知らないよー。俺ガラケーだし」
「いや、ガラケーでもLINEは出来ますが、、、」
「俺そういうのわかんないよ。確かに前にウルトラと戦った後、あいつ何か俺のケータイをいじっていて『これからはこれで連絡するから』とか言っていたけど、俺苦手なんだよハイテクとか」
「ちょっとお電話お借りしても良いですか」
「いいよ、はいよ」
「あー、やっぱり来ていますね、ウルトラさんからLINE」
「だから、来ているとか来ていないとかじゃないのよ。俺苦手なんだよハイテクとか」
「今、あの、ハイテクっていう言葉も、、、」
「いいよ、もう。で、あんた誰?」
「すみません、申し遅れました。私、ヒーローの留守を預かる『お留守番ヒーロー』と申します。本日は、私がお相手をさせて頂きます」
「そうなの、まあいいけどさ。じゃあ、何して遊ぶ?」
「えっと、そうですね」
「じゃあじゃあ、広場で岩石キャッチボールやろうよ」
「いや、あの、確かにレッドキングさんと言えば岩石投げ。やりたいのはやまやまなんですけど、私、おもてなしする以外にこれと言って能力が無く、レッドキングさんみたいに岩石を投げられるような腕力はちょっと、、、」
「なんだよ、つまんねえな」
「すみません。。。でも、ホントに怪力ですよね」
「おうよ。ちっちゃな頃から岩石がおもちゃだったからな。ほら、あれよ、ブラジルの子供が道端でタオル丸めたボールでサッカーやってたら、いつの間にか一流プロ選手になってたみたいな。あれと一緒よ。ペレ、ペレ、そうペレみたいなもんよ。俺の場合ハンドになっちゃうけどな。ガハハハハハハ。どっちかっちゅうと、ジョーダン、マイケルの方の。ガハハハハハハハ」
「キャッチボールと言ってたのに、バスケなんですね。。。あと、マイケルじゃないジョーダンって言いますと誰かいましたっけ?」
「いるだろ、きっと。俺は知らねえけど」
「は、はい、いらっしゃるのはいらっしゃると思います」
「細けえこと言うなよ」
「すみません。あの怪力と言えば、岩石投げの他に、チョップと30文キックも特技ですよね。なんでもチョップはダイナマイト1万トン分の破壊力とか。すごいですよね」
「おうよ、そのくらいよ。とにかくバチっとな、受けてみるか?」
「いや、ほんとに死んじゃうんで」
「ガハハハハハハハハハ。だな」
「あの、チョップと30文キック。やっぱりこれって、ジャイアント馬場さんに影響ですか?」
「そりゃそうよ、馬場さんよ。俺はね、猪木より断然馬場派なのよ。ホントはな、『ジャイアントネックブリーカー』も得意技にしたかったんだけどさ。一応怪力キャラだろ、やめておいたのよ」
「そんな計算というか配慮もなさるんですね」
「おい、馬鹿にすんなよ。おいら、頭は良くないけどな、それなりには考えてんだぞ。ただ、考えたこと三歩歩くと忘れちゃうけどな。ガハハハハハハハハハハハハハ」
「笑い声伸びてますよね。そう言えば、ウルトラマンさんと一番最初に戦った怪獣が、レッドキングさんなんですよね」
「おうよ、よく知ってるな。そう、おいら前夜祭で戦っているからな。1966年7月9日の杉並公会堂。懐かしいねー」
「それから55年ですかー。ずっと第一線で、頭が下がります。その秘訣は何なんですか?」
「ま、家族かな」
「あ、そう言えば、ご結婚なさっているんですよね」
レ「おうよ」
「ご家族は何人でしたっけ?」
レ「家族、まあ一族だな、一族で暮らしているよ。おいらたち30頭ぐらいしかもういないから」
「確か、絶滅危惧種指定を受けられていらっしゃるとか」
「そうよ、貴重なのよ、おいら達。大切にしないとー。ガハハハハハハハハハハハハハ」
「あの、絶対に絶滅しない気がしますけど」
「秘訣と言えば、まあ、あまり深く考えないで自分がやれること。求められていることを愚直にやり続けるってことだな」
「なるほど」
「おいらなんか、頭良くないけどさ。だからこそ、色々余分なこと考えずにさ、やって来れたってのはあるよ」
「じゃあ、岩石を毎回足の上に落として痛がるのも、もしかして」
「そりゃそうよ。そんなに毎回落とさないよ、普通。みんなが、落とすだろ落とすだろって期待しているでしょ。だから落とすの。あれだって見せ方とか落とし方とか、コツがあんのよ。一朝一夕であんな上手く落とせるようにならないよー」
「吉本新喜劇の坂田師匠みたいですね」
「そうそう」
「ところで、ずっと疑問に思っていたことがありまして、思い切って聞いていいですか?」
「おう、なによ?」
「30文キックってジャイアント馬場さんの16文キックからとったんですよね」
「おうよ、勿論」
「でも、30文って72cm何ですけど、小さすぎませんか?身長45mなのに!」
「え⁈それは、な。えーと。ん、あのな、細いこと気にしてると大物になんねぞ。ガハハハハハハハハハハハハハ」


いやー、ウルトラ怪獣界のジャイアンでした。
そして、ずっと愛されている理由もわかりました。
しかし、お客さんが求めるものを愚直にやりつづける。
レッドキングさんもプロです。
見習いたいと思います。
とにかく、ピグモンさんみたいに岩石投げつけられなくて良かったです笑


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