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秘密基地を作りたい願望

前回の投稿でも触れた通り、夏になると子供の頃の思い出が尽きることなく溢れてきます。しばらくそんなテーマで書いていきたいと思います。本音を言えば、近頃全く余裕がありません。じっくりと丁寧に料理をして盛り付けにも気を配って写真に納めて……といったことが出来ないでいます。来週の連休までは無理かなあ、という感じなのでしばらくは文字だけのnoteとなりそうです。

秘密基地、すてきな響きですよね。子供時代を象徴するようなパワーワードじゃないかと思います。実際に作ってみた、或いは秘密基地に見立ててみた、なんて経験がある方も多いんじゃないかと思います。たとえば空き地にガラクタを集めてみたり、公園の土管に集まってみたり。ちょっと奥まった場所に、ごく近しい仲間だけで集まって、秘密の決まり事とか合言葉を作ってみたり。それは絶対に大人には知られちゃいけないし、グループ外の人間が入ってきたら全力で排除しなきゃいけない、そんな謎の連帯感があった気がします。

私が当時住んでいた辺りには、そこかしこに空き地がありました。なかでもよく遊んでいたのが、かなり広い放置された土地。草は伸び放題で、整地などもちろんされていないから地面もでこぼこ。雨が降れば大きな水溜まりが出来てアメンボがいました。春になるとつくしが大量に出て「つくしの山」と呼んでみたり、秋には背丈より高いススキで埋め尽くされるので「ススキの原」と名前を変えてみたりしていました。私たちにとってそこは楽園のようなもの。固く鋭い葉っぱで手を切りそうになりながらススキの茂みに分け入って、土を踏み固めたりその辺に落ちている板を敷いたりして自分たちの居場所を作ります。車座になって話をするだけでそこは秘密基地なのです。誰かがこっそりお菓子を持ってきたらみんなで分け合ってまたちいさな秘密を共有したように思えたものです。

その空き地は小学校の学区の外れにありました。道路一本挟めば隣の小学校の学区。ある日、道向こうに住む兄弟が私たちの(と勝手に思い込んでいた)空き地にやってきました。ここは俺たちの遊ぶ場所だ、と。もちろん応戦です。といっても殴り合った記憶はないので口喧嘩レベルだったのか、男の子たちが前線にいたから我々は参戦しなかったのか詳しいことは覚えていません。ただ、陣地に攻め込まれたことでみんな本気で怒ってました。秘密基地を暴かれる。それは子供にとってはとんだ一大事でしたから。その後もささやかな攻防戦が幾度かあった気がしますが、秘密基地を必要としなくなるのに時間はかかりませんでした。のちに例の兄弟の兄の方と中学で同級になりました。ただ、覚えているのかいないのか、そのうえ思春期発動もあって話をすることもなかったなと思います。

時を経て、自分だけの秘密基地を作って籠ってしまいたい今日この頃。なんなら二階の仕事部屋で、お気に入りのソファーで好きなだけ読書して文章書いて。お茶を淹れてお菓子も添えて。エアコンは適温。時折外の風を入れて……。そんな恵まれた環境ありきと考えるようじゃとてもあの頃には戻れませんね。あの空き地も今では区画整理された住宅地です。




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