宮野の「十一面観音」。
宇目の愛しい夏の風景。
「田野」と「宮野」に、夏の景色が広がる。
経年劣化に対し、「経年優化」という言葉がある。
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田舎の風景に暮らしの息遣いと癒し、そしてノスタルジーを感じるのは、「木々の成長」や「石の苔の深さ」にあるのかもしれない。
田園風景には、無意識で何かを目で追ってしまう。
あそび場を探して。
気が付けば、子どもに返る夏の空。
そんな風景が広がる宮野に、「三尊石仏」を見つけた。
調べれば、佐伯市の有形文化財。
材質は凝灰岩で、総高265センチメートル。
中央に観音菩薩。
そして、両脇侍には、不動明王(右)と多聞天(左)。
総じて「宮野観音」という。
この観音菩薩、「十一面観音」とのこと。
わかりますか?
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それでは、頭上にご注目!
前方に三面、右側に三面、左側に三面、後方に一面。
そして、本体を合わせて、十一面となっている。
よく見ると、かわいい顔っ。
造立は、1811年。
およそ200年前のこと。何があったのか。
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それは「飢饉」。稲作の不作で、農民は困窮。岡藩にあった宇目だが、竹田城には年貢の免除を要求する一揆まで起きたという。
そこで苦難の時期に救いを求めて石仏を造立し、
観音菩薩に三毒を退け、七難を免れると信じたとのこと。
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そうか。今見てきた「この風景」は、長い時間のなかで形成されたもの。
自分はその時間の大河の途中にいるのか。
宮野観音は、あれから今日もそっと見守っている。
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時間とともに優化できたなら。