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ブロック・プレーの過去・現在・未来【3/5】

ブロック・プレーの過去・現在・未来【2/5】からの続きです。

ブロック・プレーの複数志向性とその特徴

さて、ここまでブロック・プレーの本質について深堀りしてきたが、ここではブロック・プレーが同時的に複数持ち併せることとなる志向性とその特徴について考えてみたいと思う。

"hit"プレーは常にボール・コントロールの主導権を持ってプレーすることができる。そのため、プレーの志向性は明確でシンプルになる。しかし"contact"プレーであるブロック・プレーはボール・コントロールの主導権を持つことができない。そのため、同時的に複数の志向性を持って遂行されることとなるのである。

そして、その同時的に表出してくる複数の志向性は次の4つである。

  • キル・ブロック

  • ソフト・ブロック

  • エリア・ブロック

  • プレッシャー・ブロック

それでは、順番に見ていこう。

キル・ブロック(kill-block)

目的:スパイクされたボールを相手コート内に跳ね返して落とす(得点する)。
特徴:ネット上方から攻撃的に相手コート側に手を出すことによって、ブロック・プレーによる直接的な得点の可能性が高くなる。

ソフト・ブロック(soft-block)

目的:スパイクされたボールのスピードを弱めて、フロア・ディフェンスの成功率を高める。
特徴:高さのないブロッカーでも遂行しやすいプレーである。ネット上方に手が少ししか出ていない状況であっても成功の可能性が十分にある。また、ネットから少し離れたところに手を出したり、ブロックの手を少し後方にそらすようにしたりすることによって、打点の高いスパイカーに対してもこのプレーを成功させる可能性を高めることがある。

エリア・ブロック(area-block)

目的:スパイク・コースを限定して、フロア・ディフェンスの成功率を高める。
手段:トータル・ディフェンスの考え方をベースにしたプレーであり、直接的にブロックで得点することを目的としていない。ブロッカー本人がこのプレーを成功したかどうかのフィード・バックを得ることは難しいため、コーチやフロア・ディフェンスのプレーヤー、特にリベロがそのフィードバックを行うことが重要である。

プレッシャー・ブロック(pressure-block)

目的:相手スパイカーにプレッシャーをかけ、ミスを誘ったり、攻撃意欲を削いだりする。
特徴:高さのあるブロックやしつこくコースを塞いでくるブロックは相手スパイカーにとってのプレッシャーになる。また、意識的に相手スパイカーの得意なコースを防ぐことによって、より強いプレッシャーを与えることもできる。ブロッカーが直接ボールに触れないことも多いが、ゲームが進むにつれてジワジワと効果が出てくる。

さて、ここまでブロックの4つの志向性とそれぞれの特徴について述べてきたが、特に強調して伝えておきたいことが2つある。

まず1つ目だが、ブロック・プレーは上記のうち、単一の志向性を持って遂行されるものではないという点である。例えば、キル・ブロックを最も強く志向してプレーしたとしても、結果的にはそれが、プレッシャー・ブロックにも、ソフト・ブロックにも、ゾーン・ブロックにもなり得ることがある。繰り返しにはなるが、同時的に複数の志向性を持って遂行されるプレー、それがブロック・プレーなのだ。

また2つ目として、原則的にいついかなるときもトータル・ディフェンスの一貫を担う存在としてブロック・プレーを遂行することが重要であるという点だ。もう少し具体的に説明すると、相手アタッカーに対するディフェンスは3人のフロント・ディフェンスと3人のフロア・ディフェンスの密な連携によって常に行われるべきだということである。ブロック・プレーはトータル・ディフェンスにおける先鋒であると同時に、フロア・ディフェンスとの素晴らしい連携によってトータル・ディフェンスの力を一気にブーストさせることができるのである。


ブロック・プレーの過去・現在・未来【4/5】へ続きます。

※本記事は以下3名の共著となります。著者プロフィールは50音順。




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