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東京オリンピックにおける戦術トレンドを起点に日本未来戦術について考察する

世界的にコロナの感染が拡がる中、開催された東京オリンピック。

一年延期、全試合無観客といった状況下での開催となり、これまでのオリンピックの歴史を振り返ってみても『極めて異例』な大会であったと言える。

そんな東京オリンピックであったが、前回大会から5年の時を経て世界のバレーボール戦術にはどのような変化があったのかを探っていきたいと思っている。そして、さらに今大会に見られた戦術トレンドの考察を通して今後生まれてくるであろう(筆者の独断と偏見によるもの。さらには筆者の願望みたいなものも入っているか…。)未来の戦術についても考えていきたいと思っている。

尚、本記事の執筆に至るまでには本当に多くのバレーボール戦術に関する識者(猛者?)たちからご指導や知識提供をいただいた。こうした一連のプロセスなくして今回の記事を書くには至らなかったことは間違いなく、私自身のバレーボール戦術に対する興味・関心、そして理解も低い状態のままであったに違いないと断言できる。バレーボールを愛する彼らには心から感謝しているし、ぜひとも今後ともバレーボールを熱く語り合いたいと思っている。本章に入る前に先に感謝の気持ちを伝えておきたい。

本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。


世界の戦術トレンドの変遷

さて、それでは本章に入っていくこととする。

本大会での戦術トレンドをより深く理解していくためには、これまでの戦術の歴史的変遷を振り返ることが必須である。この点が抜け落ちてしまうと、戦術トレンドに対する理解度が格段に落ちてしまうので要注意である。

戦術には大きく分けてチーム戦術と個人戦術があるが、チーム戦術を中心に歴史を遡って見ていきたい。チーム戦術の歴史的変遷を眺めていく際にどこに焦点を当てるべきか。それはアタック戦術とブロック戦術である。

前衛プレーヤー(最大3名)のみが攻撃参加するのが一般的であった時代には、マンツーマンのコミットブロックによるブロックが有効であった。しかし、このブロック戦術に対抗して複数アタッカーが組織的にテンポ差を活用したいわゆる時間差攻撃を繰り出すようになる。これによって、個の力で対抗するコミットブロックでは立ち行かなくなる。そこで、生まれてきたのが組織化されたバンチ・シフトをベースとしたリードブロック(see & response)戦術である。セットされたボールを見てから反応してブロックを形成するこの戦術により、時間差攻撃は無効化されてしまう。そして、さらにこのブロック戦術に対抗しようと考え出されたアタック戦術が同時多発位置差攻撃である。この戦術はセッターとリベロを除く最大4名のアタッカーがファーストテンポでそれぞれ違うスロットから攻撃を繰り出すものである。この戦術の登場によって、ブロック3名に対して4名のアタッカーという数的優位を生み出すことに成功した。

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