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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(10)-「2対2」の「3本目以内返球」ゲームで何を、どうやって学ぶか-

 前回の記事では「連係プレー」を学ぶことができる最少人数の「2対2」で「2本目以内返球」のゲームを「味方へパスできる」条件という特徴に焦点を当て、具体的な実践方法を紹介してきました。今回は「2対2」の「3本目以内返球」のゲームを「守り-組み立て-攻め」という機能が独立するという特徴に焦点を当て、戦術学習がどのように行われていくのかを説明していきたいと思います。

「3本目以内返球」の特徴

 前回の「2本目以内返球」のゲームに加えて、味方コートでさらにもう1度だけパスができる「3本目返球」の選択肢が追加されたゲームです。つまり、バレーボールの公式ルールと同じであり、3通りの返球パターンがあることを示しています。3通りとは、1本目・2本目・3本目の返球から選択できるということです。ある程度のボールコントロールが身につけば、意図的な組み立てにより3本目に返球することが多くなります。

 また、これまでの2回目返球以内とは異なり、3本目返球を意図すれば、返球するまでに2人のどちらかが2回プレーすることになります。つまり、1人は「守り」から「攻め」の連続的なプレーが求められます。これは、個人における「トランジション」として、当然の習慣にしてほしい「基本」としての位置づけにしたほう良いくらい大切なものです。
これらの観点から、今回の「2対2」の「3本目以内」で学べることについて説明していきたいと思います。

「あくまでも常に得点意識をもつ」

 もちろん、必ずしも3本目に返球する必要はなく、相手が3本目と想定しているとすれば、2本目に返球すること自体が、相手の準備(外見上のポジショニングなどの状況・構えではなく、選手の心理的な準備としての情況)が不十分な状態での返球になる点で、有効になります。具体的には、セッターのプッシュによるツーアタック、スパイクによるツーアタックに限らず、2本目をセッター以外も含めてスパイクできる状況を作ることです。また、前述のように2本目に返球が可能な状況を作り出すことができれば、3本目に返球ということ自体が相手にとっては選択的な判断を要するプレーになります。

 2対2の少人数だからこそ、前述の状況を意図的につくることに加えて、2本目から3本目へと展開(フェイク・セット)を自然と試みることができるような環境であるといえます。このような観点から、2本目でもできる限り「得点意識」を持ち続けることがプレーの選択幅を広げることになり、実際に2本目で返球しなくても、相手にとっては選択的な負荷になり、有効になります

 コートの広さなども影響しますが、3本目以内返球において2本目に得点意識を持つことができると、セッターに求められる力を養うことにつながります。得点意識を持つことで2本目をプレーする選手は、相手の状況を把握しようとします。その状況把握のタイミングは様々かもしれませんが、2本目をプレーする前のタイミングで相手のプレーヤーの位置を把握できれば、それは、セッターのペネトレーション中におけるブロッカーの配置の確認にもつながります

ともすれば、2本目以内返球の条件でも学ぶことができそうですが、プレーヤーの情況が異なることを理解しておく必要があります。2本目以内返球であれば2本目で返球することが義務であり、プレーヤーによっては必然的に2本目をプレーする前に相手の状況をみようとします。一方、3本目以内返球の条件になると3本目返球が目的になりすぎて、得点意識の欠如から味方のことばかりに気をとられ、ボールゲームで肝心な相手を把握することをしなくなります。その意味でも、常に得点意識を持ちながら、プレーをすることの必要性が挙げられます。

次の記事に続く

▶︎縄田亮太のプロフィール


バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。