初外国人監督の就任・解任劇を振り返る
読み応えのある記事です。その理由は筆者がきちんと自身の意見を述べているからです。これに対して、他の意見がでて、そこから議論がなされるようになると新しいモノが生まれるのかもしれません。 https://t.co/qUVIoyL7Af
— ONES (@ONES0518) 2018年4月20日
少し古いノートですが大変興味深く、これを読んで感じた問題意識を書いていきたいと思います。
「ロンドン五輪後4年間の軌跡」というテーマで書かれたノートで少し長いですが、本記事ではノートの冒頭部分で書かれている
初外国人監督であるゲーリー氏の就任と解任
にスポットを当ててみたいと思います。
ゲーリー監督は全日本史上、初の外国人監督であったということで当時大変注目を浴びていました。
しかし、1年で解任という衝撃的な結末を迎えたのです。
結果が出せなかったというのが解任理由ですが、この判断は正しかったのだろうか?このノートを読み、疑問に思ったのです。
私自身、ゲーリー氏に関する知識が十分でないため、貪るように彼関連の記事を読みました。
以下、参考にした記事です。
参考記事(順不同):
初の外国人監督誕生で男子バレーは変革なるか。~低迷脱却へ、サトウ氏を起用~
外国人監督誕生でバレー界は変われるか 成功のカギは理想を形にする“実行力”
新監督の初采配に見えた、全日本男子バレーの変化。~サトウ氏が求める状況判断の質~
【男子バレー】グラチャン最下位。いま全日本に何が起きているのか
史上初の外国人監督が1年で交代!男子バレー、これは可能性か混迷か。
ゲーリー監督の目指していたバレー
彼の目指したバレーボールを表す言葉がとして有名なのが、
スマートバレー
もう少し詳しく説明すると
その時々の状況に応じて、最適な判断を下しながら、プレーを目指すバレーボール
といった感じです。
例を出して言うと、3枚ブロックに完全にコースを塞がれてしまった。さて、どうするか?
▷スマートじゃないバレー:一か八かで思いっきりアタックする。
▷スマートバレー:一番ブロックが弱い選手が誰かを判断し、そこに向かってコントロールスパイクでブロックアウトを狙う。
こんな感じでしょうか。
選手自身が自分の頭で考えてプレーするということですね。
また、合理性を追求するという点でも彼の目指すバレーはスマートで、世界スタンダードとなっている技術指導や練習方法を取り入れるといったことにも積極的に取り組んできたようです。
実際に全日本で指導を受けた米山選手のインタビューを引用抜粋すると
戦術というか、スキルや練習の方法に関しては、世界のスタンダードを知っている。戸惑いながらもそれを取り入れてきて、自分自身は少しずつですが、確かにゲーリーが言うやり方の方がよくなっているんですよね。サーブレシーブについても、スパイクの打ち方についても。だから、彼の言うことは間違ってはいないと思う。
このようにゲーリー氏は長い間、全日本に召集されている選手からも支持を受けていたことが分かります。
さらに当時の最年少選手である千々木駿介のインタビューを引用すると
よく世界と同じ事をやっていては勝てないっていうけど、僕は最近、それは違うと思うんですよね。世界がやっていることを、今の日本はやれていない。まず世界のスタンダードをやれるようにならなければ。その先に日本オリジナルも見えてくると思うんです。
このように当時(2013年)の全日本選手がゲーリー氏が示す世界スタンダードを取り入れようとしており、全日本が世界スタンダードにそもそも追いついていないという認識があったことが分かります。
引用元の記事:【男子バレー】グラチャン最下位。いま全日本に何が起きているのか
この他にも、ゲーリー氏は世界の代表チームにコーチとして学んできた経験が豊富であり、世界基準のブロックシステム構築や今では日本でも随分と浸透したデータ分析を元にした戦略立案をするなど、スマートなバレーを目指していました。
ゲーリー監督の解任劇から何を学ぶべきなのか
先にも書きましたが、わずか1年という短期間でゲーリー体制に終止符が打たれたのです。
この解任劇の裏に何があったのか私は知りません。せいぜいインターネット上で集めた記事などから推測することしかできていません。しかし、その上でこの解任劇から何を学ばなければならないかを考えていきたいと思っています。
大変革には苦痛が伴い、時間もかかる
全日本選手というのは、当然ながら日本のトップ選手です。様々な技術や経験を兼ね揃えたプレーヤーの集まりです。
しかし、そうしたプレーヤーがこれまで聞いたこともないような新しい技術や戦略をすぐに身につけようとしても無理があると思うのです。例え、その新しい技術や戦略が素晴らしかったとしても。
それはなぜか。
これまで自分たちが積み重ねてきたものを否定するという作業でもあるから
数多くの実績を残し、プライドを持った選手がこれまでの自分を全て否定して、新しいものを取り入れるには、相当な苦痛やエネルギーを伴うと私は想像します。
私が読んだ記事からは、当時の全日本選手の多くは様々な葛藤をしながらもゲーリー監督についていこうとしていたのだと感じました。
しかし、こうしたゲーリー監督と全日本選手の努力は道半端で打ち切られる結果となってしまったわけです。
トップからの大改革か?それともボトムからの大改革か?
私が、ゲーリー氏の解任劇から考えたのは、
大改革を断行するとき、どこから(トップダウンか?ボトムアップか?)展開していくべきなのか?といったことです。
今回のケースでいうと、完全にトップからの大改革を目指したと言えます。しかし、1年という短期間の目に見える結果だけで評価をしてしまったため、何も変わらず、1年が無駄になってしまったように思います。
▷トップからの大改革
「もしも」の話をしてもあまり意味がないのですが、
あえて「もしも」の話をしてみると、
もしあと1,2年、辛抱してゲーリー体制で戦っていれば何か大きなうねりが生まれていたかもしれません。
世界で勝つという結果を生み、そこからトップダウンで一気にゲーリーが目指すスマートバレーがボトム(小学生世代)まで浸透し、日本のスタンダートになっていたかもしれません。
▷ボトムからの大改革
さらに、「もしも」の話になってしまいますが、
ゲーリー氏がボトム(小学生世代)の指導普及の最高責任者となって、初心者や初心者指導に携わる人材の育成に尽力するというケースを想像してみてください。
ゲーリー氏が理想とする選手育成や指導を、ボトムの指導者が初心者に対して行うことができるとすれば、素晴らしい選手がたくさん育ってくるのではないかと思ったのです。
世界のスタンダードを知っている指導者が、ボトムの指導普及を担うという考え方です。
そうすれば、全日本に召集されてから「再教育」される必要がなくなるのではないでしょうか。
私自身、これまで小学校・中学校・高校とバレー指導に携わってきましたがはっきり言って、世界のスタンダードと言われても全くもってピンきません。
もしボトムの指導に関わる指導者が世界のスタンダードを知っていれば、その指導方法は一変するのではないでしょうか。少なくとも、私が世界のスタンダードに触れるチャンスがあるのであれば、すぐにでも学びにいきます。。
世界トップレベルの指導者は、どうしてもナショナルの監督やコーチとして活動することになってしまいます。
しかし、発想を大転換して世界トップレベルの指導者が本気でボトムの指導普及に尽力すれば、誰もが想像できないような大変革ができるのではないだろうか?
と思うのです。
少し、夢見心地な感じの話になってしまいましたが、私のようなバレー好きなオッサンが、こんなふうに考えを述べてみるのもいいのではないかと思って書いてみました。
ああでもないこうでもないと書いていく中で、色々なアイディアが生まれてきたのでまた、記事にしていきたいと思います。
雑賀 雄太
バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。