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リードブロック導入のための練習-反応(プレジャンプ)について-

(2024.3.17追記あり)

2024年3月19日バレーボール学会大会@明治学院大で「ブロック」のオンコートレクチャーをやることになりました。

ブロックに関してはONESのnoteではまだ記事を書いておらず、いずれシリーズでブロックについて書くことになりますが、学会オンコートに紹介するに際し、これだけは記事にしておかなければというものを先に書いておきたいと思います。

リードブロックは、相手セッターがトスを出すのを見て、どの方向にトスが上がるかを判断して反応するブロックなので、「相手セッターに振られないで、より多くのブロック枚数を揃えることができる」というメリットがあります(リードブロックの重要性については「ブロック・プレーの過去・現在・未来【4/5】ブロック・プレーのシステム」を参照)。

「リードブロック導入」の練習法

そのメリットを最大限に有効にするには、「見て、判断して、反応」し、空中のブロック位置まで最短時間で移動できるように練習する必要があります。そこで、「リードブロックの導入」として、次の動画のような練習を行っています。

まず、練習のやり方ですが、ブロッカーに対してネットの反対側に2人が重なるように立ち、前に立った人が手で合図を出します。その合図に素早く反応して、ブロッカーが軽くジャンプします。後ろに立った人はそのジャンプを見て「上・右・左」のサインを出します。そのサインで、「そのまま上に跳ぶ・左右に移動してスイングブロックする」を選択して動きます。

「スプリットステップ(プレジャンプ)」の重要性

スプリットステップ(反応する前のプレジャンプ)の目的「動き出せる状態を作る」ことと、「セッターがトスを出すのを見て、その場でクイックに跳ぶか、左または右に移動するかを判断し、選択した動きができるようにする」ことです。素早く動くために「着地の反動」が利用できるし、左右に動くために「片足で着地して左右のバランスを崩す」ことが利用できるのです。

つまり、空中でニュートラルな(クイック・左・右のどれでも選べる)状態を作り、判断の直後に「動きを選択した状態で着地し、着地の反動を利用して動き出す」ということをするわけです。

「空中でニュートラル」→「空中で判断」→「選択した状態で着地」

ということができなければならないので、後ろで指示出す人のタイミングの取り方が重要になります。ブロッカーのジャンプ動作が見えたらできるだけ早く、どんなに遅くともブロッカーの体が浮いている間に出さないといけないというわけです。ジャンプのために沈み込む動きが見えたら直ぐにサインを出すくらいがでいいでしょう。

この「ニュートラルな状態を作り、サインを見て判断し行動を選択する」という練習は、マンツーマンで向かい合って行うこともできます。

リードブロックは、セッターのトスアップを見て上・左・右のどの動きをするか選択するわけですから、選択する以前の動き、つまりプレジャンプ(スプリットステップのジャンプ)をするところまでは、クイック・レフト・ライトのどのトスに対しても同じように行わなければなりません。ところが、次に示すように、サイドに動くときには「動き出すための予備動作(プレジャンプ)」を行うが、クイックに跳ぶときにはプレジャンプを行わないというブロックも観察されています。

ポーランド選手では、クイック攻撃、レフトサイドからの攻撃のどちらについても、およそセッタートスインパクト前にプレジャンプ動作を遂行していた。一方、日本選手では、レフトサイドからの攻撃についてはポーランド選手と同様であるが、クイック攻撃に対しては、トスインパクト前後にプレジャンプ動作の遂行が認められなかった。このことは、日本選手については、攻撃によって2 種類の別々の構え動作を遂行していたことを示唆している。ポーランド選手は、クイック攻撃であろうとレフトサイド攻撃であろうと、構えてからほぼ一定の動作、テニスのスプリットステップ様のその場でジャンプする様な動作の遂行後、次の動作に移行していた。

リードブロック技術の準備動作に関する事例研究―トップレベル選手と日本代表選手の比較―
吉田康成(2015年3 月)四天王寺大学紀要 第59 号 pp303-304

これは、プレジャンプをする前、つまり「セッターのトスインパク前」に、クイックに跳ぶか左右のアタックに対してブロックするかを決めているということになります。それは、相手セッターがトスを出すのを見て、どの方向にトスが上がるかを判断して、反応するブロック「リードブロック」ではないことを意味しています。リードブロックができるようになるには、どの攻撃に対しても「構えてから一定の動作」つまり一定のプレジャンプ(スプリットステップ)を利用して反応することが必要なのです。

プレジャンプ(スプリットステップ)は動画のように高くは跳ばなくてもよさそうで、「脚を曲げて引きつけるように動き、重心位置がほとんど変わらない」ケースもよく見られます。よって、実際のセッターのトスを見て反応する練習で「プレジャンプ(スプリットステップ)のやり方」も試行錯誤する必要があるでしょう。

その他の注意点

その他の注意点としては、次の点があります。
・台上スパイクはトスの高さをちょうどよく、ブロックがギリギリ間に合うような高さにすべきです。
・基準をストレートにするかクロスにするかを決めて練習します。
・スパイクは決められたコースに打ちますが、ブロックが目の前に出てくると思わずコースを変えてしまうことがあるので注意が必要です。想定通りのスパイクに対して想定通りのブロック面を用意できたかどうかが、評価の基準となります。

まずはスパイクなしで、「反応・動き出し」だけの練習をします。

選手は「少しでも早く」と意識するので、慌ててリズムができなかったり、ネットに正対したまま【サイドステップ】で動いたり、【余計なステップ】をしたりして、かえって時間がかかってしまうことがあるので、【ゆったり動く】ことを繰り返し言わなければならなくなることが多いですね。

もともとはカナダナショナルチームの動画を真似していました。上の動画の1分30秒辺りからの「セッターが両サイドに上げ、上がった方から台上スパイク」ですが、セットされたボールがスパイクの邪魔になることがよくあり、「手のサイン」だけにするようになりました。5,6年前、いつの間にか学生がやっていました。

実際に必要な「変動性」

最初に上げた動画の練習をルーチンとして行っていますが、注意が必要なのは、この練習は「スパイクの位置もコースもタイミングも想定通り」で、想定通りに自分の体が動き、最短時間でブロック位置に到達できることを確かめる練習だということです。

想定通りに動くということは「変動性」に乏しいということであり、これだけではかえってゲームに対応できなくなる可能性があります。実際の相手のトスや助走・スパイクフォーム等を見て判断し、ブロック面の位置取りやそれを作るタイミングを選択するという部分が重要で、それを得るために、実践に近づけた練習を工夫する必要があります。

----------- 2024.3.17 追記 -----------
「スプリットステップ」という言葉は「スプリット=両側に開く」であり、「ジャンプして足を開く」ことを意味するので、「プレジャンプ」と言った方がいいという見解もあり、確かにその通りだと思います。
「スプリット」することになるのは、左か右かを選択した結果として「開く」わけで、上(クイック)を選んだ場合は「プレジャンプした足幅のまま(開かずに)着地し、そのまま沈み込んでブロックに跳ぶ」ことになりますね。

▶︎布村忠弘のプロフィール

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。