カテゴリー横断型育成システムのグランド・デザインを描こう
今年の夏は幸運にも多くのバレーボールコーチと意見交換する機会を得ることができました。小学生からプレミアリーグまで、全カテゴリーのコーチと話をする貴重な時間を持つことができました。
そして、数多くの会話から痛感したこと。
それはカテゴリー横断型思考を持ってコーチングにあたること。それと、カテゴリー横断型育成システムのグランド・デザイン(全体構想)を自分なりに描いておくことの重要性です。
普段、私は小学生にコーチングを行うことがメインであるため、その他のカテゴリーでのコーチング現場で起こっている課題や現状について聴くのはとても新鮮で興味深いものがありました。その中でも、特に次に挙げたようなことがとても印象的でしたので紹介します(あくまで一例です)。
●小学生カテゴリーコーチ
・低学年へのバレー技術指導(オーバーハンド・パス等)が困難である
・体罰やパワハラが横行している
・ポジション・プレーの固定化が当たり前になっている
●中学生・高校生カテゴリーコーチ
・オーバー・ハンド・パスができない(キャッチしてしまう)
・休みがほとんどない状況である(ブラックな職場環境※部活動指導)
・1年スパンでチームを完成させないといけない
●プレミア・リーグのコーチ
・燃え尽き症候群的なプレーヤーが存在している
・背の高いプレーヤーのレシーブスキルが低い
・1シーズンの結果を見てコーチが評価される
各カテゴリーにおける課題や現状は、他カテゴリーと相関している
ここでは、改めて先に列挙した課題や現状をカテゴリーを横断して眺めてみましょう。先に列挙された課題や現状は各カテゴリーだけで完結するものではなく、次のカテゴリー、さらに次のカテゴリーの現状や課題と相関しているということに気がつくのではないでしょうか。
例えば。
小学生カテゴリーの「低学年へのバレー技術指導(オーバー・ハンド・パス等)が困難である」という課題は、中学生カテゴリーの「オーバー・ハンド・パスができない(キャッチしてしまう)」という課題につながっていきます。
※小学生カテゴリーで適切な技術的コーチングができないまま、中学生カテゴリーへと進んでしまうという課題
また、
小学生カテゴリーの「ポジション・プレーの固定化が当たり前になっている」という現状はプレミア・リーグの「背の高いプレーヤーのレシーブスキルが低い」という現状につながっていきます。
※バレーボールをスタートした際、相対的に身長が高いと、ブロックやアタックなどの身長の優位性を生かしやすいプレーに特化して練習を繰り返す。その結果、レシーブスキルを身につけることのないまま、次のカテゴリーに進んでしまうという現状
さらに、
中学生・高校生カテゴリーの「1年スパンでチームを完成させないといけない」という現状はプレミア・リーグの「1シーズンの結果を見てコーチが評価される」という現状と非常に似通ったものであるように感じます。
※1年といった短期スパンで試合に勝つという結果だけを求めらてしまい、プレーヤーの長期的な育成や成長に力を注げないという現状
ここに挙げた課題や現状を打破していくためには、一体どうすればいいのでしょうか?対処療法的にそれぞれのコーチが孤軍奮闘するだけで十分なのでしょうか?
バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。