クレバー・ハンスからコーチが学ぶべきこと
クレバー・ハンス(賢いハンス)について知っている人はいるだろうか。
心理学を学んでいる方であれば、知っている方もいるかもしれない。
彼は馬である。
実は、ある能力を持っていることで世界中で知られるようになった超有名馬なのだ。
彼について分かりやすく紹介している文章があったので引用してご紹介したい。以下、京都光華女子大学のホームページに掲載されていたブログ記事を引用させていただいた。
「考えた」のではなく「感じた」ハンス
このストーリーを読んで何を思うだろう。
僕の場合、真っ先にオステンさんの気持ちを想像してしまった。
彼の愛馬であるハンスの「考える力」を育みたいという純粋な想いがあったのではないかと推測する。そして、愛馬のハンスを自分で「考える」ことができるように育てるため、大変な努力を積み重ねたのだろう。他の文献を読んでみても、彼のハンスに対する愛情は確かなものだと感じる。
しかし、専門家チームの調査によって分かったことは、ハンスは「考える」ことによってではなく周囲の期待を「感じる」ことによって、人間から見るとあたかも自らの頭で考えているかのようにして、質問に答えていたのである。
つまり、ハンスは自分で「考えた」のではなく「感じた」のだ。
「無意識的」誘導尋問の危険性
さて、この話から私たちコーチは一体何を学ぶことができるのだろうか。
結論から言うと、このストーリーはコーチたちに「無意識的」誘導尋問に対する警笛を鳴らしているということだ。
オステンさんがコーチで、ハンスがプレーヤーだと仮定して考えてみると分かりやすい。
オステンさんは質問する際、あらかじめ決まった正解があることを知っており、「それ」を答えることをハンスに期待していたのだ。
そして、ハンスはオステンさんの「期待」を「感じ」、あたかも周りからは自分で思考して正解を出しているかのように「見えた」のである。
では、これをコーチング活動の中でも最も重要なモノの一つでもある「問いかけ」に当て嵌めて考えてみたい。
読者であるコーチには、次のように自分に問うてみてほしい。
あらかじめ決まった一つの絶対的な正解があることを前提に、プレーヤーに「問いかけ」をしているようなことはないだろうか?
そして、その「問いかけ」に対しプレーヤーがコーチの期待を敏感に「感じて」、コーチが事前に用意していた絶対的正解(そんなものはあるはずがないのだが)を答えているといったことが起こってはいないだろうか。
これはまさにコーチの「無識的」誘導尋問である。
正直に言うと、私自身も日々のコーチング活動を振り返ると思い当たる節がある。
先の結論を書いた通り、こうした誘導尋問的な問いかけは「無意識」に起こりがちである。だからこそコーチは自分の無意識に意識的でなければならない。
ただ、自分の無意識を意識すること(気がつくこと)は相当困難である。
だからこそ、常に自身のコーチングを客観的に振り返り、悩み、学び、改善し、成長し続けていかなければならない。
これは正直、口で言うほどに簡単ではなくタフである。
そして、自分がコーチであり続けるためにこのプロセスを絶やしてはいけない。
僕は、つい2日前にクレバー・ハンスに出会った(本で)。彼と出会わなければ、今こうした自分の「無意識」を意識することはなかったのである。
クレバー・ハンスに感謝の気持ちを込めて本記事を締め括りたい。
クレバー・ハンス!ありがとう!!